09/02 [白鳥 陽菜]石鳩教会 16:37- 1
石鳩教会は、あまり教会らしくない教会だった。
外観からステンドグラスなどは確認できず、外壁にも彫刻などの装飾が見当たらない。
低く縦に長い四角い建物に、十字架が一つ取り付けてあるだけの質素な教会。
なんだか、想像していたものと随分違うなあ。
寮長さんの指示で、列を成して教会へ入って行く。
中には木製の長椅子が設置されていて、部屋の最奥には十字架が照明の光を反射して鈍い光を放っていたのが見える。
その十字架もキリスト像などが磔にされているデザインなどではなく、ただ十字型に金属を切り出しただけのように見える。
お金なかったのかな……。
「目的地へ到着。
これより人数の確認を行う」
寮長さんが長めの前髪をかきあげて宣言する。
肩を叩いて点呼され、ようやくつないでいた手を離した。
本当は教会にたどり着く前に列を抜けて学校へ引き返すつもりだったのに、それは適わなかった。
けれども、寮長さんのほうが一枚上手だった。
あたしは寮長さんと副寮長さんと、手を繋いでここまで連行されたのだった。
教会まで、危険人物としてずっとマークされていた。
出発直前にあんな会話をしたのだから当然と言えば当然なのかもしれない。
三人で手を繋いでいるだけなら、見た目にも穏やかだし。
点呼が終わり、寮長さんが次の指示を出しはじめる。
「白鳥、お前はあそこだ」
寮長さんに指定された、教会の一番奥の位置へビニールシートを敷きに行く。
シートの上に膝を抱えて座り、膝へ顔を埋めた。
涙が出てきた。
「佳世ちゃん……佳世ちゃん……」
隣に佳世ちゃんがいないだけで、とても心細い。
ううん、いないだけじゃないんだ。
佳世ちゃんは今、爆弾を仕掛けられた学校にいて、そこでどうなっているかわからない。
怪我をしているのかしていないのか、生きているのか……死んでいるのか。
つい一時間ほど前まで、いつも隣にいた佳世ちゃんのことが今はわからない。
不安でたまらない。
そして佳世ちゃんはきっと、あたしの倍以上の不安さを感じているんだ。
そんな佳世ちゃんの気持ちを想像すると、自分の心細さと重なって次から次へと涙が出てくる。
「佳世ちゃん……佳世ちゃん……!」
考えれば考えるほど、嗚咽と涙が止まらなかった。