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第90話 美しく悲しい

「うちの父が原因ですか?」


そう質問した少女は、本当に令二さんに似ていた。


「うん、君のお父さんへの復讐半分かな?あとの半分は……」


殆どは、令二さんへの復讐だ。

あの人は、僕を使うだけ使って、最後には捨てちゃった。


それだけならいい、それだけならば、寧ろ光栄だ。

流石は令二さんだと、喜んだだ。嬉しがった。


捨てる理由が、飽きたとか、使えなくなったとか……そんな理由だったならば。


本当に許せなかったのは……


「うちの母ですか?」


見透かしたように、彼女がいった。

本当になんなんだよ、この女の子は、どうして分かってしまうのだろうか……


「うん、君のお母さんが一番憎かったよ。なんでだよ……なんで……


令二さんを人間にしちゃったんだよ」


気がつけば、涙が頬をつたっていった。


だって、あまりにも、あんまりじゃないか。

さんざん、人を利用して、破滅に追い込んで、人を不幸にすることを生き甲斐として、夢は人類滅亡とか本気でいってた、あの頭の可笑しい……だからこその令二さんが、あんな女と結ばれるなんて、あんまりだ。


けれど、隼人くんのお父さんに拾われて、この地位に上り詰めることが出来て、やっと忘れられそうで、殆どもう忘られそうだったのに、何の因果か、隼人くんに恋人が出来て、しかもその娘が令二さんの子で……


だから、復讐してやろうと思った。


もう殆ど、衝動的だった。


「うちの父は、人間ですよ。昔はどんなだったか、わかりませんけど、娘の私も『コイツ、マジで死ねばいいのに』とか、ちょっぴり思うときもありますけど……


冷酷で、優しくて、自己中で、愛妻家で、無愛想で、泣き虫で、格好よくて格好悪い……そんな、自慢の父です。そして、私はただの娘の茜です」


令二じゃないと、目で語っていた。

令二さんじゃない、まっすぐな目で僕を見据えた。


「それと……ごめんなさい」


彼女は頭を下げた。

土下座にちかい形でいきなり頭をさげ、隼人くんやミカちゃんまでもが驚いた顔をした。


「うちの親が、本当に申し訳ございませんでした。どう償えばいいのか分かりません。取り合えず、家に帰ったら、ぶん殴ります。


そして、ありがとうございます。父を、ここまで思ってくれて、ありがとうございます」


大人顔負けの言葉を、たどたどしくいう彼女に苦笑しながらも、心はあったかい。


「きみは、令二さんなんかより、素直な子だな」


そういって、笑った。笑えた。

彼女を、ちゃんと認めることができたから……








幸彦さんは、あの後、警察の手に渡った。

しかし、私は訴状を出さないつもりなので、刑事事件にならないかぎりは、すぐに出られるだろう。


ミカさんは、少し精神的な苦痛があったらしくて、今は病院に


「っていうか、鷹平さんに驚きましたよ。けっこうな事件があったのに、パティーを続行させるなんて……」


「親父は自分を殺しに来た殺し屋に『一緒に友達になろう!』とかいって、自分の部下にする男だからな」


「それ、マジっすか?」


と、笑えば赤城さんも笑った。


「お前こそ、訴えを起こさなくていいのか?」


「別に、怪我をした訳じゃないですし、父親関係での迷惑はよくあることですから」


だから、もういい。


きっと絶望し、羨望し、嫉妬したのだろう。

その気持ちは痛いほどよく分かる。分かってしまう。


父の冷酷さは知っている。そのせいで誰かが不幸になり、陥れられた末路を見たことがある。

父の優しさも知っている。母への極限の愛情を見ていたら分かる。


娘の私でさえ、ズルイと思ってしまうのだ。

父に全てを委ねていた幸彦さんなら尚更だ。


「そういえば、茜」


「なんですか?」


夜風にまぎれて、赤城さんが私の髪にそっと触れた。

真剣な目と、優しい手つきから、キスでもしようとするんじゃないかと思う。


「キスしないで下さいね」


「やんねーよ」


してーけど。という言葉は無視した。


「茜ってさ、まだ…小学生だよな?」


「うん、小学生だよ」


何を今更聞いているのだろうか。

そんな意味を込めて首をかしげれば、切なそうな顔を一瞬だけ見せて、手を離した。


「そっかーそうだよな」


「どうしたんですか?」


何だかんだ、嫌な予感がした。

とてつもなく、嫌な予感がして、けれど、その予感がしたときには、既に渡しの口は滑っていた。


「あ……ま……!」


待ってくれと、停止の言葉を吐こうとする前に、彼は綺麗な星の元、とてもとても美しく悲しい笑顔を見せたのだ。


「俺さ……留学しようと思っているんだ」


幻覚だろうか?美しい真珠のような粒が夜風にのってキラキラと流れた気がした。

本当にすみません。

本当に、色々とあったんです、超忙しいことがあってしまったんです。

更新停止してすみませんでした。


もうこのまま停止させようかとも思いましたが、感想欄みて、気力が湧いたので書きました。

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