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第87話 気づく

一人、取り残されたミカは、パーティー会場内で視線の的となっていた。その視線は決していいものとはいえない。


ザワザワ……ザワザワ


「彼女が突き飛ばしたらしいぞ……」「相手は子供なのにな」「女の嫉妬とは恐ろしいものだ」


影であることないこといわれ、ヒソヒソと話される。直接いいにいくものがいないのは、朝生財閥の後ろ楯があるからだろう。


「(ちがう……私は如月茜を突き飛ばしてなんかいないわ……!私は……)」


権力者本人、もしくは身内等の関係者が悪い噂を立てられることは多々あり、どんな些細なことでも悪く言われるのはよくあることである。


小さい時から父親の大きすぎる権力や自身のカリスマ性をもっている隼人だったならば、堂々と胸を張り、冷静に対処したであろう。


敵を作りすぎる卑屈な父をもち、面倒くさい子供の自覚をもつ茜ならば、少し眉を潜めながらも勝手にしろと開き直っていただろう。


しかし、小さい頃から守られていたミカはその不躾な視線や嘲笑の的になることが少なかった為にその時の対処が分からずただただ怯えるようにうつ向き、それが更に悪い噂をまねく。


「(どうしよう……本当に私がやったのかも?)」


頭が混乱しすぎて、ミカは自分が本当にやったのではと思うようになってしまっていた。


「(いえ……アレは茜の自作自演かもしれない……)」


ごく自然に、ミカはそんな考えをもった。


しかし、仮にそうであったとしてもそれを証明することは出来ない。

誰も見ていなかったし、見ていたとしても名乗りをあげるものはいないだろう。


そうこうしている間にも噂をする人々の視線は強くなり、朝生の名をもってしても、大義名分を掲げてミカに対して攻撃を行いそうである。


「最低だな……」


「朝生の名も落ちぶれたな……」


軽いが、ミカにとっては槍のように鋭い言葉を吐き出す人たち。悪いのは相手だと、大義名分を掲げ、さも自分達は当然の権利だとばかりに当たり前のように陰口をたたく。


「(助けて……)」


ミカがそう願ったとき……


「ミカ……!」


一人の男がかけつけた。

それはまるで王子様のような登場であり、あまりにも格好よかった。


「隼人……!」


ミカは溢れそうな涙をこらえ、隼人のもとへとかけよる。


「如月茜は回復し、ミカに突き飛ばされていない。変な噂や中傷などはやめていただいたほうがよろしいですよ。


ご来場の皆さま方、どうかその家の名に恥じぬよう行動をしてください」


目線と畏怖をだし、己のカリスマ性をフルにつかって場をおさめ、早急にミカを会場の外へと出した。


「ありがと……隼人……」


外に出て、解放されたミカは泣き崩れる一歩手前になりながら、礼をいい、再び自分がやったのではないといった。


「わたし!茜の肩を突き飛ばしたりしてないの!本当だよ!」


「知っている、茜から聞い……た……」


そこで違和感を覚えて言葉を区切り、考えこむ隼人。


『……ミカちゃんに腕を引っ張られるなんてさ』



「隼人?」


不思議がってきくミカに隼人は質問をする。


「ミカ、お前は茜に何をしてないっていった?」


「突き飛ばしてないって……」


「どこを?」


「肩を……」


『肩を』『突き飛ばして』ない。


あのとき、春風はなんていっていた?


『腕をひっぱられるなんて……』


どうして彼はそういったのだろうか?あのとき、正面にいたミカが腕を引っ張って茜を後ろのテーブルに飛ばせるはずがない。


微かな矛盾、そして今さらながらに思い出す春風と茜の父との関係……


「なんでこんな事にも気づかなかったんだ!」


隼人は叫びながらたちあがった。


「え?隼人?」


「茜があぶない!」


隼人は茜がいる別室へと急いだ。

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