第82話 隼人の父
クラシック的な音楽が響く中、茜はバロットをちゅるちゅる食べながら、あることに興味が湧いて周りを見渡した。
「どうしたんだ?」
キョロキョロとしている茜が気になり、そう訪ねれば首を傾げてこういった。
「いや、便宜上は赤城さんのお父さんの誕生パーティーなのに、それらしき人はいないものかなと」
これだけの規模のパーティーをひらけるということは、隼人の父親が凄い影響力をもっているのは分かる。が、それらしき人はいないように見えた。
「あぁ、それならもうすぐ……」
と、ここで音楽が止まった。大人たちもだまり、完全な静寂が包み込む。まるで、蛇に睨まれたネズミのような、そんな静寂であった。あの隼人ですら冷や汗をかいている。
「……?」
茜は、一体どうしたのかと不信に思い、周りがみている方に視線を向ければ……
「今日はお越し頂き、感謝するよ」
貫禄という言葉がそのまま具現化したような人物がいた。
少し童顔ながらも、形が整った容姿に鋭い目。微笑みは慈愛すら感じるが、愚かな者を嘲笑しているようにも見える。よこにいる少女のような女性は隼人の母だろう。
「おや?」
男性が、こっちへと歩いてくる。
茜は一瞬隼人の後ろに隠れようとしたが、すでに遅く、もう目の前にいた。
「こんにちは、君は茜くんだね?」
「……どうもです」
ふーん、と何か冷たい目を送り、何かをしゃべろうとしたが、隼人が睨み付けているのでクスリと笑った。
「どうか、楽しんでくれたまえ」
それだけを言い残し、隼人の父は妻をつれて離れていった。すぐに取り巻きらしき人たちが隼人の父を囲み、姿が見えなくなる。
「大丈夫か?」
「喉がカラカラですので、飲み物もらってきます」
「ならば俺も……」
隼人は茜を一人にすることを躊躇った。今、一人にしてしまったら『当たり前』の視線や、嫌な言葉を発する可能性を考えた。そして、茜はそれらを察した上で笑っていった。
「一人でいいです。大丈夫ですから」
そんなものは慣れている、だから心配するなと、そんな意味合いを込めた笑顔をむけて、離れていった。
「っふー……」
茜は、飲み物を配っているところでブドウジュースを貰い、一息ついていた。出来るだけ視線にいかないように壁の方へとよる。
「あの娘が……」
「教育も出来ておらん小娘が……」
「アレなら実花子のほうがお似合いですよ……」
大人たちが次々に噂を立てる。嫌な視線だと、小学校も大人も変わらないものだなと、茜は思ったが別に気にせずにする。
嫌な空気だが、『そういう』空気なのか、話しかけようとする人はいない。
「(小学校も、大人も余り変わらない……)」
学校では人気者と嫌われものの立場にいる茜は何処か皮肉めいた笑みを浮かべた。
ジュースを飲み干して喉の乾きを潤し、隼人の方へと戻ろとしたが……
「ごきげんよう、茜ちゃん」
ミカが、立ちふさがった。
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