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第81話 パーティー

 金持ちというのは、大抵パーティーを好むものだと茜は思う。その理由としては、個人の趣味もあるかもしれないが、社交場での顔合わせや駆け引き、主催者に顔を覚えてもらおうというのもあるのだろう。


 自分の母の実家もそれなりに裕福層なのでパーティー的なものは何度かあったが、ぶっちゃけ思い出したくもない出来事だ。


 けど、これはそれ以上に嫌な思い出になりそうだなと思った。




「ハァ……この空気に入りたくない」


 パーティー会場の入り口の影でそう漏らした。

 会場内には、政治家やテレビや雑誌でみたことのある著名人たちがおり、どう考えても子供が入れる場所ではない。


 赤城隼人は主催者の息子というのもあって、一足先に会場内に入っており、すぐに著名人たちに囲まれ、横にはミカが当然のようにひっついている。


「二人とも、すごくお似合いで……」


「えぇ?そうですかぁ?」


 フリルのついた可愛らしいドレスを着ており、隼人とよくお似合いであった。


 正直な話、もう入りたくないと思うのだが……


「仕方がないか……」


 茜は意を決して、完全アウェーの会場に足を運んだ。


「アレが……隼人さまの……」


「まだ子供じゃないのか……」


「聞いたところによると、あの冷酷な弁護士の一人娘だとか……」


 ヒソヒソと、決していい意味ではない声が聞こえる。


 それは、事前に聞かされた隼人の恋人ということや、『こっち』の世界でも有名な弁護士の娘だということや、純粋に茜の外見にも興味があるようであった。


「茜……」


 隼人は自然に人の壁やミカの手をふりほどき、茜のところへと行った。茜の目の傷は目立っておらず、少しホッとしながら横についた。


 折角だからと、滅多には見られないであろう茜のドレス姿を目に焼き付けようとする。


 シンプルな白のワンピース風のドレスであり、少し大人っぽい感じで、茜の可愛げのなさを上手く長所にしている。艶やかで長い黒髪は、前髪を編み込み、花で止めてあった。


 正直、隼人の好みストレートである。


 額にキスくらいはいいんじゃないかと思いかけた時……


「なんですか?」


 余りにも見すぎて、茜がジト目でこっちを警戒のまなつきでこっちを見てきたので、隼人は正気に戻り、ごまかすようにいった。


「何か、食べるか?」


 バイキング式となっている、様々な料理を見回しながら、茜の好きそうな料理に目星をつけておく。


「この空気の中でですか?」


「……あぁ、すまない」


 確かに、気楽に食事というムードではない。会場の人物は茜と隼人を中心に遠巻きに見ており、ミカは睨み付けながらこっちを見ている。


 あからさまに見るものはいないものの、盗み見るようにして見られているのも苦しいものである。


「これはこれは二人とも仲睦まじいですね」


 遠巻きに見るうちの一人である、少し太っている中年の男性が話しかけてきた。テレビでも時おり見ることがある政治家だ。媚を売ろうというのが丸見えだった。


「まるで兄妹のようです」


「恋人だ」


 ピシャリと隼人はいい放った。

 取り繕うとする政治家にそれ以上、いうことはないとばかりに隼人は茜の方へ向き直った。


「茜、悪かっ……」


 いつのまにやら鶏肉であろう料理をモギュモギュ食っていた。


「……この空気じゃ食えないんじゃなかったのか?」


「食えないといってないし、折角だからです」


 小声でそんな会話をしながら、意外と神経の太かった茜は周囲の視線も気にせずに食事を続けていた。


「バロットも食うか?」


 バロットとは、外国の料理で卵と鳥の中間みたいなものだ。孵化しかけのヒヨコを食べるという少し酷いものだが、ヒヨコ好きの茜は目を輝かせて頷いた。


「食べる!」


「(こういうとこは素直だな……)」


 隼人は微笑みながら、茜の頭を撫でた。





「見てなさいよ……!」


 ギリィっと、二人をみながらミカは歯ぎしりをたてた。

しばらく更新してなくてすみません!

スランプとテストのせいです(^o^;)

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