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第78話 食事

 右手を隼人に引かれ、左手を沙羅にひかれる茜。二人の高身長もあいまってまるで宇宙人のようなスタイルだ。


 そして、隼人の横で自分を睨みつけるミカの視線を感じながら、茜はさっさと食事を終わらせてダッシュで部屋に戻るか、もう食料は諦めてこのまま逃げるか、という選択肢を頭に浮かべながら、宇宙人スタイルでズルズルとひかれた。


「あ、おそかったですね」


 食事をする場所の扉の前に幸彦はまっていた。隼人と沙羅に引きずられ、ミカに睨みつけられている茜から『食事さっさと終わらせてやる』という気持ちがすごく伝わってくるのだが……


「すみません……」


 と、幸彦は少し謝ってから扉をあけた。

 品のいいアンティーク風のガラスで出来たテーブル、木で精巧に作られ、座り心地がよさそうな椅子。派手ではなく、決して表だった高級感はなくとも、食事をするばしょとして最高な、5つ星レストランのような風景に……


 5人程度の、威厳のある老人と30代こう半くらいの男性たちがいた。


「…………赤城さんのお父さんたちと肉姉さんのお父さんたち、ミカさんのお父さんたちですね」


 明らかに面倒臭い感じが凄いするのを感じて茜がボケた。


「私の父は日本人じゃないわよ」


「パパは関西人よ」


「俺の父はもっと綺麗で面倒臭い…………って、おい。何で会社の奴等がいるんだ?聞いてねーぞ」


 どうやら隼人も知らされてなかったらしく、幸彦につめよった。幸彦はバツが悪そうにいった。


「茜さんを見てみたいと……その……不快な思いをするとは思いますが、一応必要なことで……」


 あぁ、と茜は合点がいった。

 つまりは晒しに近いやつだろう。仮にも時期社長の恋人なのだから、一目みて起きたいだろうし、相手が小学生ならば威圧で怯えてくれるかもしれない。純粋に父への恨みもあるかもしれない。


一定時間逃げれない食事の時間は、保守派からしたら、かっこうの場所だろう。


 仮に革新派や隼人擁護派がいたとしても、それはそれとして見てはおきたいだろう。


 少し視線を向ければ、何を無駄話しているんだというイラつきが見える。


「大丈夫です。座りましょう」


 空気を読んだ茜は、三人にそう促した。





 厳粛な雰囲気の中、食事がはじまった。もう厳粛でもいいから食事をさっさと終わらせたいと茜は願っていたが、一人の男が口を開いた。


 30代前半くらいの、まだ年若そうなさわやかな感じの男性がニコやかに話しかけてきた。


「君は……令二さんの娘だよね?」


「そうですが何か?」


「家で令二さんってどんな人かな?」


 ニコやかに、この緊張した空気を変える為にだした話題の意味と、純粋に気になるという好奇心がありありと出ている。


 まだ憎悪や信仰心という表情が見れなく、うっすら尊敬が色があることから、彼は自分の父に対して依頼をしたり、大金ふっかけられたりといった当事者ではなく、噂をきく程度、もしくは知り合いの知り合い程度だろうと茜は予測する。


「……余り話したことがないので分かりません」


「っふん!やはりアイツに教育は無理か。ろくな教育をしていないからこんなことになるんだ」


 いきなり老人が話に割り込んできた。さっきの言葉を言質にとり、令二と茜の両方を批判した。


「あの男の娘だ。きっとろくでもないに決まっているとは思っていたが、やはり全然教育がいき届いていないな。自分の立場を弁えずに行動をおこすとこなど、そっくりだ」


「気持ち悪いほど生気のない顔もそっくりですもんね……立場を弁えたらどうですか?隼人はうちの大切な人物なんですよ」


 老人の嫌味に、その取り巻きであろう男がクスクスと笑った。


 この二人は完璧に父に恨みをもってるな。


 正当性を持てば、人は人を糾弾出来る。この人たちは自分の父に恨みをもっている、それだけでも恨みを持たれるのは簡単だ。


 自分の父、アレは『言葉』が擬人化して硫酸と麻薬をふりまいて、人から採取する化け物だ。すこしでも関わったら絶対に勝てないと思うだろうが、娘ならばと思うのだろう。


 そして、自分は赤城隼人の恋人である。後、数年していたら上手く纏まる筈だった縁談を壊すきっかけとなった人物。


 糾弾するのは、仕方がないだろう。


「小学生だから、何も分かっていないと思いますけど……流石に分かりますよね?あぁ、子供だから何もわからないんですね」


「君は父親とよくにているな」


 少女を糾弾する言葉は止まらない。3人は糾弾の言葉をかけ、残りは傍観に徹している。


「(この手のことは黙るのが一番)」


 ミカはニヤニヤと笑っており、沙羅は顔を真っ赤にして震えているが、茜に口パクで『余計なことをするな』と言われているので動けない。


 そして、隼人も同じくそれを言われて少しの間は黙っていたのだが……


 ペキュリ


 不自然な音が響いた。


 そして、あの地獄の底のような冷たくて重低音の声が響いた。


「ワリィ…………思わず曲げちまった」


 握りしめている右手が開くと、丸まったフォークがポトンと落ちた。

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