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第75話 大嫌い宣言。

「あ……な……によ……!」


 口をパクパクさせながら、女性は必死で言葉をつむごうとする。目の前にいる自分より小さい少女は只でさえ釣っている目を睨み目にしている。


「あ゛ぁ゛!?」


「っヒィ!」


 とても小学生とは思えない低音声を思わず出してしまい、女性は驚いて悲鳴に近い声を発してしまった。


「言いたいことあんならさっさと言ってください」


 腕を組み、仁王立ちをしている茜は小柄ながらも、子供離れした顔と低音声によって、完璧な威圧感がある。


 それに気圧された女性は頭を真っ白にしながらも、何か喋らなければならないと考え、とにかく発声気管を使おうと必死になる。


「あ、あの……」


「なんですか?」


「だ、だから私は……」


「ぁ゛あ゛あ゛!?」


「ッヒィイ!」


 最早、会話にすらなっていない。茜は苛立ちを全力でぶつけ、女性は完璧に怯えている。その姿を流石に哀れに思った茜は大きく深呼吸をして、冷静さを取り戻す。


「すみません、大丈夫ですか?」


「あぅ……あぅ……」


 ソファの影に隠れてしまった女性を流石に可哀想だなと思う。自分より年上だが、どこか儚いイメージがもたれる感じの子だ。


「アハハハ!!」


 いきなり後ろで男性が爆笑していた。腹を抱え、バンバン!と机を叩いている。


 なんだコイツ?とこめかみを引くつかせていれば、彼は爆笑を無理矢理抑えながらいった。


「だから言ったじゃないか、彼女に喧嘩を売るのは辞めたまえって、この子ポーっとしてるけど、中身は幼女版の玲二さんなんだからさ」


 とんでもないことを言い出す男の言葉を少し思考し、自分の父親の幼女版を考え吐きそうになった。おぞましい。


「つーか、だって、だって!この子小学生なんだもん……」


「アハハ、だって玲二くんの娘だよ?まともな訳ないじゃん」


 言いたい放題だなこの男。


「あの……」


「キャァ!……あ……な……によ!別にビビってなんていないんだからね!ちょっと驚いただけなんだから!」


「取り合えず名前と、簡単な自己紹介をしてください。大丈夫です、怒ってませんよ」


 茜は極力優しい声を発して、女性を諭すようにいった。幼女に諭される、高校生というのはなんともシュールな光景だ。


 女性は最初驚きながらも、すぐに気を取り直していった。


「私の名前は朝生(あそう) 実花子(みかこ)よ。ミカって呼んでもいいわよ。隼人さまの婚約者なの」


「朝生さんですね、分かりました。そちらの男性は?」


 ミカの提案をアッサリとスルーして、ニコニコ笑っている男性に今度は話をふる。


「ん?僕は 春風(はるかぜ) 幸彦(ゆきひこ)。簡単にいえば隼人くんのお父さんの秘書で、因みに君のお父さんに徹底的に心を潰されて泣かされた経験があるよ」


 父さん、アンタなにやってんだ。


 茜がまた頭を抱えそうになったとき、突然ドアが開かれた。


「おい、大丈夫か!?」


 ドアから出てきたのは、赤城 隼人だった。血相をかえて表れた。


「隼人さ……」


 ミカは愛する人の登場に胸を高鳴らせ、彼に向かって手を伸ばしたのだが……


「茜!なにもされてないか!?」


 伸ばされた手に目もくれず、隼人は茜の方へと向かって抱き上げた。優しく、まるで割れ物にふれるように抱き締め、サラサラの髪に顔をうずくまらせる。


「あぁ、よかった!何もされてないか!?ったく少し目を離したら拉致りやがって!」


「あの……赤城さん……」


 茜は、さっきのシーンをみてしまい、流石にミカに対して気まづい思いがあるので制止を求めるが、隼人はそれを無視して、茜の安否を確かめている。


「う……うぅ……なによ……!」


 ふと、ミカの方をみればうつ向いてプルプルと震えている。それは泣き出す一歩手前の子供のようだった。そして、ミカは顔をあげて茜に指をさして宣言した。


「アンタなんて大嫌い!!!!」


 茜は物凄い面倒くさい事に巻き込まれたなと、改めて泣きそうになった。

朝生(あそう) 実花子(みかこ)

朝生財閥の娘。隼人の婚約者で少し子供っぽい。


春風(はるかぜ) 幸彦(ゆきひこ)

常にニコニコしている。隼人の父の秘書であり、茜の父親、玲二に徹底的に心を潰されて可笑しくなった人。


後書きにて、もう少し詳細に書いてます。

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