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第69話 酔っ払った経緯

「だって君は……残酷なまでに恋人で……無惨なほどに他人やねんもん」


伊集院和人は、茜のことをそう評した理由は、茜の他人視からだった。隼人という男は、いわば台風のような人間であり、中心ではあるが故の孤独があった。


けれど、茜は台風のような男の側にまるで石のように、側にいたにも関わらず、何処か他人のような視線をもっている。


よくも悪くも茜は隼人が今まで出会わなかったタイプなのだ。


「君は……隼人のことをなんとも思ってないんとちゃうん?」


和人がそう聞くと、茜はキョトンとした後、少し考えた様子だった。


「うーん……」


隼人のことをどう思っているのかと改めて聞かれれば、少し分からない。最初は危ない兄さんだったし、途中からは頭の可笑しい大人というイメージだ。


しかしながら、喋ってみれば優しい人だし、頼りになる大人だと思う。尊敬出来る部分はあるし、単純にすごいとも思う。


と、同時になんとも思ってないかと言われれば、そうかもしれない。仮に隼人が世界を滅ぼす魔王であっても、世界征服を企む独裁者であろうとも『別にいい』と、自分はいつも通り横にいると思うからだ。


「(いや?止めるとは思うけど、最低限の保証をしてくれるなら、私は横でポー…っと見ていると思う)」


龍馬に危害を加えられて自分が怒ったのは、それが自分の友人であるからだ。もし他人ならば焼き鳥でも食べながら自分は止めもしないし、協力もせずに眺めていただろう。


「でも……側にはいてほしかったです」


クビクビとジュースを飲みながら、茜は回答した。


「でも、もう別れたんやろ?ってことはもう他人やん。側におれれーへんやん。あいつは……たぶん、他の女の子と結婚すると思うで」


「ですねぇ……」


タバスコを入れた冷たいジュースをゴクゴク飲みながら、茜は返答した。


確かにそうだと思う。隼人の家はよく分からないが、多分金持ちだと思うし、魅力的な人間なのでひくて数多だろう……


きっと、私なんかのことなんか忘れて、肉姉さんみたいにナイスバディな人とか、佐南さんみたいに可愛いくて優しい人と結婚するんだろう。


あぁ……自分みたいな子供が恋人だったなんて、本当に奇跡だったんだ……


「っ!?…っちょ、何で泣いてんねん!?」


「え?」


茜は指摘されて、自分の頬を撫でると、指に水が当たっていた。その水筋を辿ればそれは確かに目から生まれている。


「って、これカクテルやん!?いつのまに!?っつーかなんか辛い刺激臭すんねんけど!?」


和人は茜が飲んでいたジュースを取って匂えば、タバスコの刺激臭とアルコールの臭いがしてくる。


「す、すみませんお客様!!間違えて渡してしまい…!」


ウェイトレスさんが、こちらへ来てあやまっている。どうやら、注文間違いらしく、未成年へ酒を渡したことへの謝罪をしていた。


「ふぇっ……」


不意に、しゃっくりのような声が聞こえた。小さく、柔らかく、少し高い声を見やれば、茜だった。


その顔はまるで、泣き出す一歩手前の子供のようで……


「ふぇ~ん!……ウワァ~ン!!……ヒック……エッグ…」


茜は、泣いた。大粒の真珠のような水玉をポロポロと落とし、必死でそれを拭おうとするが、目から溢れる水はそれを上回り、顔を真っ赤に視ながら泣いている。


「ちょっ……大丈夫かいな…」


「もう帰りゅ~!!ふぇ~ん……ヒック…」


茜はそういって、店を出る。顔と熱がたまり、頭はアルコールのせいで上手く回らない。


和人は帰ろうとする茜を止めようとしたが、茜は凄いスピードで店の外へと出ていった。

お酒は二十歳からです。

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