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第67話 相談

「なんで別れたんや!?普通別れらんやろ!?」


 伊集院さんは私の肩をもってガクガクと揺すってくる。頭がグラングランする酔う


 私はなんとか振り払って疑問をなげかける。


「ちょっと待ってください、あなたは別れろって言ってたじゃないですか」


 なのに、別れたといった瞬間、むしろ伊集院さんはそれを怒ってる様子だ。


「んなもん、演技に決まっとるやろ!?悪役演じてみたい年頃やねん!」


 20代後半の男性が頬っぺたを膨らませても、気持ち悪いと思うのに、何故かファミレスにいる他のテーブルに座ってこっちを見てるお姉様がたはキャーキャー言ってるので、美形はなんでもアリなんだなと、理解した。


「つーか、何で別れることになったん?」


「貴方にいう必要あります?」


「警戒心たかいなぁ」


 カラカラと伊集院さんは笑ったが、そりゃ警戒心も高くなる。伊集院さんは何処か嘘臭い……というか、本音を冗談にして、冗談を本音にする感じの人だ。


 アレだ、お父さんが言葉巧みに依頼人を騙す一歩手前の状態にして、大金ふっかてた感じに近い。


 さっきの『別れろ』発言もそれなりに本気だったと思う。しかしながら、『演技だった』も本気らしいので、目の前の男には自然と警戒が高まってしまう。


 というか、そもそも赤城さんの親戚というのが嘘かもしれない。ってか、この人は何でこんなに嘘臭いんだろ?


 私はスマホの無音カメラのアプリを開いてコッソリと写真を撮って、肉姉さんにメールを送った。


『この人は赤城さんの親戚の人ですか?とても嘘臭いですけど…』


 肉姉さんは赤城さんの元婚約者だった。つまりはそれなりに親戚とかと関わったことがあるだろう。もし無かったら、ダッシュで逃げようと考える。


 ヴヴ……五秒で返事が来た。


『えぇ!!そうよ!この人は隼人の親戚の叔父さんみたいな人よ!確かに嘘臭いけれど、信頼は出来る人よ!


 後ね、今度どこかに遊ばない?別に遊びたいって訳じゃないのだけれど、たまたまチケットを持ってるし、弟も友達も予定があるみたいだから、どうしてもというなら……』


 私は最後まで見ずにメールを閉じた。それ以上何か打ってあった気もするが今は重要なことじゃないと思うので見ない。


「取り合えず、信用はしませんが信頼はします」


「よかったわ…信頼されたみたいで。どういう心境の変化や?」


「知り合いに確認をとったのと、貴方が本気で心配してるからです」


 ピクリと、伊集院さんの口元がひきつったと思う。一体なにに対してひきつったのかは判らないが、赤城さんを心配してるのはわかる。


「ふーん、そんなあやふやな勘で決めたんや…ホンマ子供やなぁ」


 悪態ついているが、嘘がバレた子供のように拗ねてるようで悪意は感じない。


「まぁ……それだけではなくて…」


「うん?」


「……私も……どうしていいのか分からなくて。少し、話を聞いてください」




 私はこれまでの経緯を話した。話したといっても、龍馬さんのところとか、個人的に恥ずかしいことはボヤかして、抽象的にいったつもりだったが、伊集院さんは理解したみたいだ。


「話を要約すると、隼人の嫉妬心やら独占欲やらに君がキレて友達のとこにいき、それを隼人が浮気と勘違いして、ついでに隼人にとっての敵やから危害を加え、それで君は耐えられなくなったと…」


 本当にこの人はなんなんだろ。まるで見てきたかのように簡潔に、しかも具体的に要約してるし。


「そうなんです……それと、そう言わなきゃ大変なことが起こりそうな……なんか、こう…成り下がる?いや、そうじゃなくて……何かヤバそうなのが…アレです、不発弾を抱き締める感じなんですよ」


 上手くまとめられなくて、あやふやな事しか言えない私の言葉を聞いて、伊集院さんは何か納得がいくような、少し困ったような顔をしていった。


「まぁ……隼人は子供の王様やからな……もしくは、前と後ろしか人がいない人間」


 伊集院さんの言葉は理解は出来なかったが、何故か納得した。


「隼人は優秀で、しかもあのカリスマ性やろ?だから基本的に皆を引っ張って、先頭に立つ、前にたつ人間やねん。勿論、隼人より凄い人間はおるで?例えば父親とかその典型やし、俺も将来はともかく今は隼人より前の人間やから……でも、横におる人間がおらんねん。


 みんな、隼人が大好きやけど、心酔して、恐怖して、憧れて……感情の偏りが酷い。勿論、俺も少し怖いと思う時がある。」


「まぁ、理解はできますけど……」


「いいや、出来てへん。する必要もないけど」


 伊集院さんは目を細めて私をみた。そしてゆっくりと、私の首をツツー…と指で上へとなでた。まるで、猫を可愛がるかのように、憎い相手の首をつき殺すような、そんな矛盾さが表れてた。


 寒気がするが、何故か動けない。悲しそうな、愛しそうな、憎そうな……色々な感情がごっちゃになった、彼から目を背ける方が危ない気がした。


 そして、指で私の顔を上へとあげて彼はいった。


「だって君は……残酷なまでに恋人で……無惨なほどに他人やねんもん」

伊集院 和人

赤城隼人の親戚で、嘘臭い関西弁の男。

隼人のことは大切な親戚の子と思ってる。独身の20代後半男性で、キツネ顔の美形。嘘臭くて冷徹な部分があるが、情にはもろく何だかんだで面倒見がいい。

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