第5話 茜の平凡な日常
「これ、どうしようかな~」
私は、学校の窓辺でスマホを見ながらポツリといった。
昨日、集団で来た怖いお兄さんたちにスマホを渡されてから、すぐにメールが来た。
あんな行動に出る人間だから、どんな迷惑メールかと思ったら、意外とマシで、普通のメールが来た。ただし、めっちゃ数が多い。寂しがりやか、お前は。
3通に一回のペースで返信してたけど、夜の2時になったので『もう寝ます(-.-)Zzz・・・・』とだけ送って現在に至る。
そして、朝から『おはよう』だの『今なにしてる?』だの沢山メールしてくるし、普通朝の5時からメール送るか?
何かもう本当に怖い....
「どうし「何してんだよ茜ー!!」...ッグェ」
後ろから衝撃が走り、振り向くと男子に背中を思いっきり叩かれたらしい。
「いたい、かずま君」
褐色の肌色と青みのかかった黒髪が特徴の、いかにもな悪ガキ対象のかずま君はヘヘーンと笑っていた。
笑顔がすごく眩しいよ。
「相変わらず前髪長いなー!!顔がみえねーぞ!!」
「ほっとけ」
私はかずま君のことが嫌いじゃないけど、やたら私に構ってくるというか、悪い言い方をすればちょっかいを出しまくる男子なので少しだけ苦手意識がある。
「おい、それってスマホじゃねーか!?なんだよ、解約したとか言ってたくせに!!」
私の手にもってるものを指差し、そういって怒り出した。
「ほら、貸せよ!俺の電話番号とメアド教えてやっから!」
強引に取ろうとするスマホを私は死守する。
「嫌だよ、前に貸したら皆に渡してたじゃん。それにコレは私のじゃないんだよ」
だから、まぁ別にいいんだけどさ。一応は赤城さんが払ってるみたいだから、通話料とか余りかけたくない。
「落とし物?」
「押し付けもの」
そう言った私に、かずま君の顔が「?」になっていた。
「なんだそりゃ?」
「私が聞きたいよ畜生....」
誰かあの状況を説明してくれる人はいないのだろうか。
「とにかくこれは、私のものじゃないから」
そう言って、私はポケットにいれた。
その様子をみて、すでに興味を失ったのか、かずま君は別の話題を切り出した。
「あ、そうだ!これやるよ!」
何かを思い出したように、ポケットをまさぐった後、かずま君は何かを握って私の前にだした。
「この間みたいに毛虫だったらぶん殴るぞ」
「ちげーよ!!ピンだよヘアピン!!」
そう言われて見てみれば、ヒヨコのヘアピンが手にあった。
「これ、どうしたの?盗んだの?一緒に謝りにいこう」
「ちげーよ!!....その、えっと....茜って、ヒヨコが好きだろ?」
「うん」
食べる意味でヒヨコの肉は大好きだよ。
「この間、たまたま見つけて....ほら、お前って前髪長すぎだから....これで止めればいいんじゃね?」
少し赤い顔でそう言いながら、私の手にヘアピンを無理矢理渡してくる。
何か、私にヘアピン渡す人って多いな~。
この間も上級生の男子に渡されたし、女子からも何回か渡されたことがある。
余り、付けようとは思わなかったけど。
「ありがとう」
「おう!」
取り合えず、礼を言ったらかずま君は嬉しそうに笑った。顔は茶色なのに、真っ白か歯が眩しい。
「じゃあ、また後でな!!」
ガッツポーズをした後、かずま君は自分の教室に戻って行った。
ブルル
携帯がなったので、見るとメールが送られてた。
『学校が終わったら、何処か食べに行かないか?』
という文面を確認してから、今日はお母さんがいなくて留守にしてるし....
少し考えてたら、さっき貰ったヒヨコのピンが目に入り、そういえば、最近ヒヨコ食べてないな~と思ったので。
『肉料理ならいいですよ( ^∀^)』
と、返信した。
そのわずか3秒後、一体この人の指はどうなってるんだよと疑問をもってしまう程に、『場所指定と時間指定』が主の内容を画面に文字制限ギリギリまでビッシリと打たれていた。
何故か、この間見た『呪いのメール』という映画が頭をよぎった。
年の差書いてたら、急に同級生のやつも書きたくなってしまったんです。