第62話 舎弟
訳ありそうな茜をそのままにすることも出来なかった龍馬は、自分達の溜まり場へと連れて行こうとする。
普段は警戒心の高い茜だが、隼人と喧嘩して自暴自棄になりかけているのと、龍馬とはヒヨコ好きという共通点もあってか、素直に手を引かれて付いていく。
「悪い奴等じゃねーから安心しろ」
「小学生の私がいて大丈夫ですか?」
歩いてる足を止め、その重大なことに気づいた。
「ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!!!」
「……っ!?」
片手で頭をかいて呻き声をあげた龍馬だが、もう片方の手はしっかりと茜と繋いでいる。突然の呻き声に驚いた茜はどうしたのかと聞いた。
「ダメなんだよ!!こんなの俺のキャラじゃねーんだよ!!小さい子拾うとか、俺のキャラじゃないんだ!!」
「何を言ってるのかよくわからないです」
「えっとな、俺は非道キャラで通ってるっつーか、硬派なんだよ。可愛いものとか小さいものとかは嫌ってるんだ!!」
「でも、ヒヨコ大好きですよね?」
茜の脳裏に浮かぶは、慈愛の眼差しで小さいヒヨコと戯れる龍馬の姿。
「いや、普段はそれを隠してるんだよ……小さくて可愛いのが好きだとバレたら、リーダーとして威厳が……お前は可愛くねーけど、小さいしな」
「蹴るぞ」
足を蹴った茜だが、やはり固いのでダメージを与えれなかった。
「よし、戻ろう」
龍馬はそういって結論づけ、茜の手をひっぱり、来た道を戻ろうとしたが……
「あー!ボスじゃないっすか!」
うしろで少年がそう叫んだ。龍馬は、冷や汗をかきながら振り向けば、自分の舎弟だった。
「あ、ボスじゃん」
「どこいって…!?心配してたんだぞ!」
わらわらと、声に導かれるようにして、龍馬のもとへと表れた少年たちに冷や汗をかく。そして、もっとも聞かれたくないことを聞かれた。
「その子……誰っすか?」
「……あー…えっと…」
普段、可愛いものや小さいもの、弱いものは嫌いという硬派な態度をとっている龍馬としては、どういえばいいのか思考を巡らせる。
自分の仲間たちは、悪い奴等ではないが、それは自分に限ったことであり、龍馬に対する盲信さは、時として隼人のチームをも上回る。
いや、というより若干頭が弱い為に、深く考えないで龍馬を理想としているのだろう。
仲間ならともかく、何の関係もない小さい子をつれて来たとなると、絶対に失望される……
とまで、考えた龍馬は一つの結論を見いだした。
「そ、そいつは……新しい舎弟だ!!」
「………」
もっと他に言い方なかったのかよと、茜は龍馬をみつめる。流石に無理だろと、どこの不良が小学生を舎弟にするんだよ。
「なんで小学生の子供が?」
当然の質問をする仲間の一人に、何故か自信満々で答える龍馬。
「チビッ子がどうしても入りたいっていうもんだからな」
言ってねーよ。そんなこと。と、茜は龍馬をにらみづけるが、気づいてもらえていない。
「色々とあってチビッ子と出会って、いい感じに話をしてて、こう…アレな感じで俺にチームに入りたいって……なんか色々とあったんだ」
どんだけお前は説明が下手くそなんだ。なんだそのフワフワとした説明、綿菓子か!?
いくら何でも、無理があるだろ。そこまで頭の悪い人たちじゃ…
「ぉお!小学生まで舎弟にする、そのカリスマ性!!凄いっす!」
そこまで頭の悪い人たちだった。
「よろしくな!新入り!」
「今日から俺たちは仲間だぜ!」
元気に笑顔でそういわれ、一点の曇りない眼に気圧された茜は龍馬の方をみる。
「(この人たちは頭悪いんですか?)」
「(取り合えず、合わせてくれ)」
小声でそういわれ、頭をさげていった。
「よろしくお願いします」
不良というのほ、リーダーを盲信するもんなのか、もしくはリーダーが不良を盲信させるのか……茜は不良の生態について考えた。




