第60話 浮気か?
頭蓋骨の描写がありますが、あくまでもフィクションです。
二人で気持ちの悪いことを言った後、二人は適当に食事をすることにした。
メニュー表には、主にヒヨコを模した可愛らしいケーキやクッキーから、鶏肉料理も充実している。
「ヒヨコの丸焼きとかいいな」
「あ、気に入ったヒヨコを指名して食べれるらしいですよ。でも、時間がかかるので焼き鳥にします」
可愛らしいヒヨコと戯れた後に、鶏肉を食べるのはなんとも食欲が失せそうだが、食べるまでがワンセットで愛している二人は普通に頼む。
「ついでにケーキも頼もう」
店員に頼んだあと、二人は適当に雑談をする。
「龍馬さんは不良なんですか?」
ズバッと、率直に茜は聞いた。
「俺が怖くないのか?」
「余り怖くはないですね」
「珍しいな」
子供には大体怖がられるものなので、茜の反応は珍しく、意外と度胸があるなと龍馬は感心した。
茜も一般的に怖いものは怖いが、順応して慣れるのが早い。最終的には自分に危害さえ無ければ、他は基本的にどうでもいいのだ。
逆に言えば、自分に危害がこない為ならば何でもする。
「もしかして、チョイ悪なお兄さんなだけですか?」
「いや、一応は不良グループのリーダーをしている。まぁ、このあいだはアイツに壊滅しかけられたがな」
忌々しそうに龍馬はそういった。
「壊滅ですか……」
茜は相づちを打ちながら出された焼き鳥を食べる。柔らかい鳥と甘辛なタレが口に広がる。
「舎弟たちが俺のいない間にアイツに挑んだらしくってさ……で、帰って来たと思ったら頭ベリベリだった」
「ベリベリ?」
茜が焼き鳥を食べながら聞き返すと、龍馬はまるで世間話でもするかのように、 普通にいった。
「頭皮が剥がれて頭蓋骨が見えてたんだ。まるでミカンのようだった」
龍馬はあの日のことを思い出す。腕が折れた者、足が逆方向に曲がった者など、悲惨な奴等はたくさんいたが、アレは一番やばかった。
「病院にすぐに運ばれてなきゃ今ごろ死んでたぞ。骨って白かと思ってたが、案外黄色くてブニブニした粘膜がついてた」
「へー……」
茜は何でもないように相づちをうちながら、頭の中でミカンを剥くように頭皮が剥がれて、実のような頭蓋骨が出ているのを想像した。
「残酷なことをする人もいたもんですね」
「まったくだ。普通頭皮剥がすか?」
「きっと、頭が可笑しいんでしょうね」
「アイツは異常なんだよ」
よく考えれば、雑談にこんな話を持ち込む龍馬も、それを日常会話として普通に受け答えしている茜も異常なのだが、基本的に気にしないで話はすすむ。
「それでな、アイツが最近、恋人が出来たみたいで浮かれてんだよ」
「恋人が出来たんですか?」
「一時期は追い回したりしたらしいぜ?アイツ、冷徹なやつなのに信じられるか?」
怪訝そうに、まるでUMAを発見したような顔でそういった。
茜は『アイツ』は知らないが、聞いていると本当に危ない人のようだ。是非とも関わりたくない。
「そんなに冷徹なんですか?」
「そうなんだよ。まるで目が氷でさ、鬼か何かなんだよな……スゲーぞ、アイツはキレたら鬼と悪魔と破壊神が出るからな」
「ププッ何ですかそれ、そんなのいる筈が……な……」
茜が笑いながら、いる筈がないと言おうとしたが、それは止まった。
『いた』のだ。
龍馬は気付いていないが後ろにある、外が見えるガラスに死神の如くこちらを見ている男がいた。
「おーい?どうしたんだ?」
龍馬は固まった茜を心配して目の前で手をふる。
「鬼と悪魔と破壊神って、本当にいるんですね」
ガッと見開いた目は氷のように冷たくて光がなく、鬼と悪魔と破壊神が合体したような『アイツ』がそこにいた。
というか赤城 隼人だった。
何故ここにいるのか、何時からいたのか、偶然なのか、それとも後をつけて来たのだろうか。茜ら冷や汗をかく。
隼人は空間を歪ませる程禍々しいオーラを纏いながら、茜をジットリとみつめ、口パクでこう言った。
う わ き か ?
口パクなのに、何故か頭に響き、まるで余命宣告のようなそれを茜は感じ、今すぐなんとかしないとこの若さでオサラバしてしまう。
「すみません、ちょっと今から全力の命乞いをしに行ってきます」
「おい、ちょっ……!」
龍馬の声を無視して茜は瞬間移動のようにダッシュで店からでていった。
赤城隼人の登場です。
茜、大ピンチ。大丈夫か!?




