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第58話 祭りの終わり

 この、柚子小と聖火学園の合同祭のフィナーレは、赤城さんが指揮をする、オーケストラで終わる。


 私は、実行委員だったので見張らしがいい2階の左で、まだ幕があがっていない舞台もよくみえる。


 関係者席に座ったら、横の席に水城さんがいた。すこし、驚きながらも、あの上面の優しい笑みを浮かべた。


「来てたんだね」


「水城さん……なんでいるんですか?」


 素朴な疑問は予想通りだったのか、水城さんはクスリと笑っていった。


「僕もここの生徒でね、色々と……主に交渉とかで手伝ったから、特別にってね」


「私はテッキリ、脅して席をとったのかと…」


「無駄に恨みを買おうと思うほど僕はバカじゃないよ」


 そういって、水城さんはパンフレットを開き、赤城さんが写っている部分をみて、心底ニコニコとしていた。


 プワァ~…フワァ~っという間抜けな音が聞こえた。どうやらチューニングをしているらしい。


 私は適当に下をみていると、沢山あるはずの席が埋まっており、立ち見が多いことに気づく。


「列整理とか、したほうがいいですかね?騒がしくなっちゃいますし…」


「大丈夫だよ…」


 水城さんは、パンフレットをおろし、まるで予言のようにいった。


「誰も……喋れなくなるから」


 その言葉どおり、すぐに会場は静寂に包まれた。舞台の方をみれば、幕があがり、色んな種類の楽器とそれをもっている、男性、女性がいる。


 何より、圧巻なのは赤城さんだった。

 黒いスーツに身をつつみ、客席に礼をするだけで周りは赤城さんに呑まれた。


 そして、オーケストラの方に向き直り、赤城さんはまるで剣の如く指揮棒をふった。


 ドン!!


 まるで合図のようにティンパニーが叩かれる。続いて軽快なリズムの音楽があとを追う。重いと思われていたオーケストラは、まるで皆を歓迎するかのように軽い演奏をする。


 しかし、ただ軽快なだけではなく、赤城さんが時には制止、時にはもっと早くと挑発するようにふっている。


「すごい……」


 思わず、私はそうこぼした。


「本当に……隼人はすごいんだ。だからかな?時々悲しくなる」


「なんでですか?」


「僕たちとは違う何かだと感じてしまうから」


 言ってる意味を……私は意外にすんなりと理解出来た。


 私にとっては、初対面がアレなせいで頭の可笑しい集団の頭の可笑しいリーダーとか、独占欲が高いとか、意外に子供っぽいとか、そんな風な人。


 しかし、舞台にたっている赤城さんは、それは何もかもを超越した神様みたいだ。自分なんて恐れ多くて近寄れない鬼神のようなものだと思う。


 皆を率いて、みんなを従える絶対的な神様。


 しかし、私はこういうだろう。


「赤城さんは確かに……凄いです。でも、凄いだけの人間じゃないですよ」


 そう言えば、水城さんはすこし驚いたようにこっちを見た。


「赤城さんは、凄いしカリスマ性もありますけど……それだけじゃ単なる独裁者でしょ?でも、少し子供っぽくて、優しくて……突拍子もないことするけど……


 ちゃんと皆を大切にする魅力的な人だから、みんなは赤城さんが好きで、赤城さんも皆が大好きなんです」


 私は、すこし笑いながら、そういった。

 見ていたら、簡単に分かることだ。みんなは赤城さんが大好きなのも、赤城さんがみんなを好きなことも……


 まぁ、そのせいで私に被害がくることもあるんだけど…


「べ、別にそれぐらい貴女に言われなくても分かってますよ!ツンデレのデレの無駄遣いです。何年隼人の親友やってると思ってるんですか!?隼人が魅力的なのも知ってますし……さっきのは単なる戯れ言です。本気にしないでください。だから子供が嫌いです。


 言われなくても…大切にしてくれてることぐらい知ってます」


 水城さんは、顔を少し赤らめながらもそういった。


「うん、そうだね」


 私は一言そう返しただけだった。

 オーケストラは終盤を迎え、赤城さんの統率のもと、それはそれは凄い演奏をした。


 キラキラと光るライトに、うっとりする音楽、心底楽しそうな赤城さん……


 私はきっと、沢山の色々があった、この日を忘れないだろう。



「隼人が惚れるのも……無理ないですね」

夏休み終わって大変で死にそうで、からだ痛い。

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