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一方、その頃の佐南

 私はゆかりという女の子を連れ戻すために階段を上がり、屋上の扉を押した。


「こんにちわ」


「……っ」


 ゆかりちゃんの反応は、最初期待してた顔だったけど、私を見た瞬間に、それは消えて、純粋に誰?という疑問をだしていた。


「私は、生徒会で、レプラをやってる佐南(さなみ) 佑実(ゆみ)。貴女を迎えにきたの」


 すこし近づいて、手をさしのべるがゆかりちゃんはプイッと顔をそらした。


「いかない。私がいなくて困ればいいもん。


 で、劇はどうなったの?」


 一応、既に劇が始まっているという自覚はあるみたいで、ゆかりちゃんは、そういったが、僅かに笑みを浮かべていたのを私は見逃さなかった。


「鏡役はリカちゃんがやって、白雪姫は茜ちゃんがやってるよ」


 そういった瞬間、ゆかりちゃんは顔を上げた。泣きそうで、悔しくて、怒りをもってる。


「はぁ!?なんでリカちゃんが……っていうか茜ちゃんが白雪姫!?なんでよ!あの子は関係ないのに!!なんで、なんでよ!!なんで……あの子ばっかり……


 私の方が……」


 その言葉で、色々と悟った。


 この子はリカちゃんや茜ちゃんに対してコンプレックスを持ってる。


 リカちゃんという子は、チラッと見たけど、女の子の典型的なリーダーで、自分から積極的にする子で周りをひっぱっていくタイプだ。


 対して茜ちゃんは、大人しくて、多分自分からは何もしないけど周りから推されて、頼られるタイプ。


「(でも、リカちゃんに対してより、茜ちゃんに対しての方がコンプレックスは大きそう)」


 そして、リカちゃんに対してはコンプレックスというより、単にムカついてると言った感じがする。


 これでも生徒会の中管理職をやってた、だからこの手の空気や状況を合わせて、考えられることは……


「もしかして……昔はゆかりちゃんの方が上だったの?」


「……っ…」


 ビンゴね。


 多分、ゆかりちゃんは茜ちゃんより上の立場だったんだと思う。でも、最近は茜ちゃんが上になってしまったという感じだろう。


「そ、そうよ!この学年になるまで、同じグループで私が一番で茜ちゃんは下だったのに……5年生になってからも、私が上だったのに…リカちゃんが茜ちゃんに近寄った来て……そこから可笑しくなって…」


 必死で喋ってるゆかりちゃんは、涙ぐんでいるからなのか、時々とまっている。


 話を要約すると、前の学年までは自分はクラスの中心のグループで、そこには茜ちゃんもいたらしい。しかし、学年が変わってから、リカちゃんがクラスの中心になったみたい。


 そこから、変わったらしい。リカちゃんは茜ちゃんと仲良くなり、茜ちゃんは目立ち始めた。というより、基本的に冷静で頼れる茜ちゃんは皆の人気者になったんだろう。


 そして、それはリカちゃんのグループに入ったからだといってる。


 でも、そんなのは詭弁だ。


「そんなの、きっかけに過ぎないよ」


 逃げようとするゆかちゃんに、私はバッサリと言いはなった。あぁ、これはこの間までの私だ……


「よく考えれば当たり前でしょ?綺麗で頼れる女の子は…そりゃ好かれるし、冷静ってだけで皆から頼られるもんだよ。


 その立場にあぐらかいて、過去を美化する子が勝てる分けない」


 私は茜ちゃんに対して正直恨んでた……だからやり返そうと思ったけど、茜ちゃんの方が上手で……しかも、成功してたとしても迷惑をかけたのは他の子だ。


 つまり、茜ちゃんはまもってくれた。


「あなたの場合は……誰も迷惑だと思わないよ。だって、鏡役とか正直必要ないもん…きっと、戻ったとして誰も怒らないし、影で嫌われるだけだよ…」


 ゆかりちゃんは涙を止めて目がカラカラになっていた。


 多分、茜ちゃんはゆかりちゃんのことを大なり小なり心配してるし、気にかけてると思う。


「……だったら……そのままでいいじゃん……私が出ることもでしょ…」


 意地になっているゆかりちゃんの気持ちはよく分かる。だから、私は具体的なメリットを提供する。


「逆だよ、今からなら修復出来るんだよ?普通に戻って一言謝ってれば、ある程度自分の存在は示せるし、自分がいなくて困ったという錯覚も植え付けれるんだよ」


 いや、本当は一言だけ謝っても普通に嫌われる。責任感がない人は嫌われる。


 けれど、ダメージは半減するし、ゆかりちゃんが欲しいのは、自分という存在感だ。自分がいなくて困ったという感じの空気が欲しい。


 ゆかりちゃんは少し考えるような顔になった。


「でも……私……」


「どうするの?私はどっちでもいいけど、今なら一緒に戻ってあげるよ?ここに居たいなら私は帰る」


 本当は、よくない。何がなんでもゆかりちゃんに戻って欲しい。茜ちゃんに迷惑をかけた分、それを少しでも返したい。


 しかし、ここであえて突き放すことを言うのは大切なんだ。


 今、戻るなら私も同伴するし、ダメージ半減。


 けど、戻らないなら私は帰るし、単に嫌われるだけ。


 メリット、デメリットを出し、ゆかりちゃんは悩むそぶりを見せてから答えをだした。


「わかった……戻る」

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