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第52話 始まる

一樹先生視点で送ります。

「え!?先生がナレーションするんですか?」


 如月は、支給されたマイクを付けながら、俺にそういった。


「まぁな、本来する奴が風邪で寝込んでな……」


 なんだか問題発生多すぎだろ……大丈夫か、この劇…


「まぁ、先生は声だけはいいですからね。顔は完璧な悪人ですけど」


 ププっと笑った如月を蹴り、俺はさっさと行けと促した。


 開始1分前には、みんなの準備は整う。


 暗い舞台の真ん中で、役者たちは自分の場所でスタンバイした。場所は光るテープのようなもので、表されているので、容易につける。


 俺はスイッチをおして声をだす。


『今から、合同イベントによる改正版の白雪姫を始めます』


 舞台の幕があがり、パチパチパチと拍手が聞こえ出す。観客は沢山おり、保護者や友達は勿論、テレビ関係者や来年受験する子達までいるのでその数は多い。


『昔々、あるところに自分に絶対的な美を求めた女性、エリザベートがいました』


 舞台は明るくなり、城の中のような演出で、真っ黒なドレスを着た女性が定番の言葉をいう。


「ぉお!!鏡よ!!世界で一番美しいのは誰だい?」


 流石は演劇部の3年生で、演技力と化粧によりとても怖くなっている。


 鏡にむかってそう言った女性に鏡の絵は答えた。


「それは……白雪姫です!!」


 バリバリバリ!!と絵を突き破って、加納リカが表れた。


 今までに無い斬新な方法……っていうか、この演出考えたのは誰だよ。聞いてねえぞ。


 しかし、観客には受けたみたいで、加納の可愛らしい容姿も合間って、ニコやかに見ている。


「白雪姫?誰だい?」


 本では白雪姫はエリザベートの子供になるのだが、ここは改正版なので何の関係もない設定でいく。


 因みに、エリザベートの由来はエリザベート・バートリーから取った。気になる子は調べてみるといい。


「雪のように白く美しい女性です~。今は少女ですが、近い将来、貴女を抜いて可愛く美しい世界一の女性になるでしょう~」


 フンワリとしたスカートをヒラヒラさせながら、エリザベートの周りをクルクルと回る。

 しゃべり方のせいか、普段の我が儘子女には見えない。


「おのれ……小癪なぁ」


 そして、演劇部の人もマジ怖いくて凄い。

 目をキッと睨ませて、低いけれども、かん高い声を腹から出した。


「白雪めぇ!!成長する前に殺してるぅ!!そしてその血を私の肌に塗り、永遠の美しさを得よう……フフフ……ハハハハ!!!」


 最早ホラーだ。

 赤いライトに照らされたエリザベートは、見ていて怖すぎる。観客は真顔で見てるし、俺もポカーンとみてしまった。


 しかし、そこで光は一旦消えて、暗くなる。舞台を回転させてることに、気づき俺は慌てていった。


『一方、そんなことを知らない白雪姫は運命の出会いをしました』


 暗かった舞台にスポットが当たる。

 周りはどうやら草むらという場面であるらしく、王子(子供)のかずまが出た。


「あーあ、昨日も今日も習い事で嫌になるぜ」


 やれやれのポーズをしてそういった王子が出て、客は少し笑った。


 日焼けをし、それなりに整った顔のかずまは、いかにも元気いっぱいの子供で、客の受けも上々だ。


 王子は、何かを見つけたように指をさした。


「あれ?あそこにいるのは……君は誰?」


 そこで、もう一つのスポットが当てられた。


「はじめまして、私は白雪姫です」


 前髪を横に編み込み、後ろはリボン風に止めているらしく、白雪姫の定番ドレスを着ている如月の姿は間違いなく美少女と呼べる。


「うわぁ、白雪姫はすごく可愛いね!」


 多分、素で見惚れているらしいかずまは、台本の台詞をいった。その後、如月が「ありがとう」と言えばいいのだが……


「私が可愛い訳ない」


 如月は、台本にない台詞を喋ってしまった。

 如月は無意識で反射的に言ってしまったらしく、すぐに青ざめていた。


 如月は何かを言おうとしているが、どうしたらいいか分からないみたいで冷や汗をかいて目を泳がせている。


 そんな如月の様子を知ってか知らずか、かずまは如月の手をガシッと握り、大きな声でいった。


「白雪姫はスゴく可愛いよ!!」


 かずまのその純粋な目は、スゴく綺麗で茜にむけて言ってるようだ。


 ポカーンとしている茜を無視して更にいう。


「白雪姫はスゴく可愛い!今まで出会った中で俺は茜ちゃ…しゃなかった、白雪姫が一番可愛いと思う!!器用なのに不器用なとことか、本当は優しいとことか、凄い好き!!仮にみんなが白雪姫を可愛くないと言っても、俺は可愛いと言うよ絶対!俺、白雪姫は世界一可愛いと思うよ!


 えーと、えっと……だから結婚してください!」


 彼女が可愛い理由を説明し、最後の王子のいきなりの告白に、茜は赤くなった。


完璧にアドリブだとバレバレだが、観客も微笑ましくみている。


 まぁ、教師としても微笑ましい場面だと思う。


 茜は自分が可愛くないとコンプレックスを持っているみたいだから、かずまの言葉は純粋に嬉しいと思うし、かずまも茜を純粋に可愛いと思ってるから、あんな言葉が出た。


 最後の結婚してという台詞は台本にあったものだから、脱線しかけた話を修正するために使ったんだろう。本心かもしれないが…


 本当に微笑ましい場面だ。


「(まぁ、茜には微笑ましくない男が付るんだが……本当にこの場にいなくてよかった)」


 とあるロリコンを思い出し、俺は心から安堵した。


「ごめんなさい、私には好きな人がいます」


 如月はまた、台本にない台詞をいったが、今度はちゃんと考えているみたいで、ニッコリと笑っている。


 かずまはそれに乗った。


「それは誰ですか?」


「将来成長した、あなたです。私はその人と結婚したい」


 如月がそういうと、かずまはニカッと笑った。


「うん!」


 観客たちは微笑ましそうに眺めた。俺もとあるロリコンのことを忘れて微笑ましく思った。


 もうコイツら本当に結婚しちゃえよ、微笑ましいカップルだよ、もう付き合っちゃえよ。ロリコンと別れちゃえよ。


 そんな微笑ましい場面で、舞台は暗転した。


『微笑ましい二人は、将来の約束をしたのでした』


 本当にここに赤城がいなくてよかった。

「将来成長した貴方と結婚する」は、ちょっとした伏線です。この言葉、覚えていて下さい。後で意味がわかります。


一樹先生、赤城をロリコン呼ばわりしてますが、彼も年下の嫁がいる。

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