第51話 劇の準備
ゆかりちゃんが居なくなり、佐南さんに説得にいってもらってる間に鏡役の代役をだすことになったんだけど……
「私、鏡役やるから茜ちゃんは白雪姫ね!」
リカちゃんの言葉により、私は白雪姫の衣装を押し付けられた。何か反論をいうまえに、リカちゃんは鏡の衣装に着替えに行ってしまった。
ポツーンと、白雪姫の衣装を渡されたまま取り残された私は横にいる癖に注意してくれなかった一樹先生に聞く。
「どうしましょうか?」
「いっそやれよ。台本は覚えてるんだろ?
如月は性格は面倒臭いし、目は腐ってるし、可愛げが全然ないけど、顔だけはそこそいいんだからいけるだろ」
「しばくぞ」
しかし、周りもそれでいいやという感じになってるし、ここでウダウダ言う時間もない。
それに、実行委員として台本の閲覧はしてたから、知っている。白雪姫で主人公のセリフを何度も見てしまうのは女子小学生の性だろう。
ならば、腹は括るしかない。
「じゃあ、着替えにいきますね」
「おう」
幸い、白雪姫を見回った後は自由時間でいいといってたので、大丈夫だろう。赤城さんと回る時間だったけど。
スマホで『諸事情により一緒に回れません』というメールを送ってから、私は着替え室に入った。
白雪姫の衣装は定番の、下が黄色のロングスカートで、上が青と紫、肩の丸っとしている部分が赤だった。
子供用なので、ファスナーを開けて簡単に着替えられた。
着替え室のカーテンを開けると、同じく、着替えたらしいリカちゃんが、満足気にたっていた。
「どう?可愛い?」
鏡の妖精というコプセントで作られているらしい衣装は、白と黄色を基調とした、魔法の杖とコテで巻いたらしい髪がフワフワとしてとても可愛いかった。
「可愛いよ」
「ふふん♪でしょ?」
鏡役なのに、スゴく満足気なリカちゃんをみて、私は気になってたことを質問する。
「あのさ、ゆかりちゃんが戻ってきたら、衣装を返すの?」
「返す訳ないじゃん」
なんともバッサリとした返答だ。
「何も謝らないでくるなら、返さない。
謝るなら……一発ひっぱたいて返してあげる」
さも当たり前のようにそう言ったリカちゃんは、まるで女王様で、一見したら自己中だが、本当は違う。
「あの子だってさ……うちら学童の一員なのに、それを放って置いたんじゃん?心配させたんだから、それ位はさせてもらう」
ちゃんとリカちゃんは、ゆかりちゃんの存在を認めて…心配している。友達と思ってないし、冷たいことや酷いことはいうけど、見放さない子なのだ。
「もし帰ってこなかったら?」
「そんときはもう知らない」
アッサリ見放したけど、これは友達じゃないからってだけです。
友達なら何がなんでも見放さない優しい子なんです。はい。
「それより、髪の毛やってあげるから、後ろむいて、リボンにしてあげる」
リカちゃんは、機嫌よさそうにそう言って、私の髪の毛を弄りだした。
後ろ髪を今流行りのリボン風にしているみたいで、手慣れたように一瞬で作った。すごい、
鏡で見させもらうと、上手いこと髪の毛をリボン風にしている。
リカちゃん……というか、大抵の女子はなんで髪の毛を弄るのが得意なのか不思議だ。後、髪の毛が多い子をやたら三編みにするのは何故だろう。
「後はその長ったらしい前髪ね……」
リカちゃんは、私の前髪を横に編み込んでいく。
「ってかさ~なんで何時も前髪で顔隠してんの?茜って綺麗な顔してるのにさ~つーか、ヒヨコの髪どめ時々つけてるよね?」
「かずま君に貰ったんだ」
「ふ~ん…そうなんだぁ」
ニヤニヤと、笑いながらそういって笑う。色々な含みがあったと思う。
「つーか、それならなんで何時も付けないの?」
指で器用に、前髪を横に流して編み込みながらリカちゃんはそういった。
「ちょっとしたコンプレックスかな?」
「え?どこに?」
どこに?と聞かれても困る。
主に全体的にだとしか言いようがない。綺麗な子だとはよく言われし、告白もされたことはあるから、それなりに整ってるとは思う。思いたい。
けど、後で絶対に崩れると言われ、親戚には可愛くない、可愛げがないと言われ、気味が悪いと言われ、母に似てないと嫌味を言われ続け、終いには蝋人形と言われたら、そりゃ嫌になる。
まぁ、そこまで気にする訳ではないし、ヒヨコは好きだから時々つけてるけど。
「リカちゃんみたいな可愛い子には分からないことだよ」
「なにそれ~ブフッ
はい、終わったよ」
リカちゃんは髪から手をはなして、満足気の笑った。
「後、3分で始まるので出番の人は準備して!」
そう言った声が聞こえ、私とリカちゃんは舞台の方へと向かう。
「舞台の幕開けだ…」
書きたいことがいっぱいあるけど、話が進まないので色々割合する。悲しい。




