第48話 酷く甘い甘言
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最早、お馴染みとなった会議室に私は入室した。早目に来た為か人はおらず、私はパソコンと資料を備えていた。
「あ……早いね……茜ちゃん」
佐南さんも入室し、先に来ていた私に驚きながらも、私の方へときて、頭を下げた。
「あの!この間はごめんなさい……本当に許されないことだとは思うけど……でも……」
「実質的な被害なんてないですし、私は他言無用にします。許すか許さないかなんて、関係ないでしょ。それに私は佐南さんをぶったんですから、おあいこです」
「でも……!」
それでも謝ろうとする佐南さんに私はいう。
「じゃあ、もう許したってことでいいんで、もう謝らないでください……
迷惑です」
佐南さんは青ざめ、泣きそうになりながらも、それ以上何もいわずに自分の机にもどった。
あんな顔をさせた……酷い言葉をいってしまった私を……誰か殴ってくれ。
文化祭の準備日程はつつがなく進行し、前日になった今日は勿論忙しくなっているが、赤城さんがカリスマ性とその手腕を使ってるお陰で私はそこまで忙しくない。
佐南さんは、向かないながらも、レプラとして働き指示を伝えている。
「あの、展示の準備の手伝いはこのクラスから……後、許可証は私名義で…」
少し慌てながらも、しっかりと主旨を伝える佐南さんは、成長していると思う。
私が佐南さんをぶったあの日から……
「茜……大丈夫か?」
休憩時間になり、私と赤城さんは人通りの少ない自動販売機で飲み物を買った。ココアにタバスコを入れて飲んでいる私に、赤城さんは突然そういった。
「赤城さん……見てました?」
「あぁ、見張らせていた水城から聞いた」
そういって、赤城さんは私の頭を撫でた。不意に泣きたくなってしまう。
「佐南は……俺の元婚約者なんだ」
赤城さんは、私の頭を優しく撫でながらいった。
「あの時は沙羅が一番有力候補だったから、佐南は自分から降りた」
それはよく分かる。肉姉さんの意味不明なあのパワーに対抗しようとは思わないし、絵面だけなら似合いの恋人だ。
「元婚約者だったが……俺が愛してるのは茜だ」
優しく優しく、私の頭を撫でる赤城さんに安心感を覚える。
「赤城さん……こんなことは影口だと思いますが、いっても大丈夫ですか?」
「あぁ、言っていいぞ」
「佐南さんが嫌い」
いや、嫌いなタイプといった方がいいだろう。
優しい人だと思うし、可愛い人だとも思う。そして、それを理由に許されてきた人だと思う。
あの泣きそうな涙ぐんだ可愛い顔は、さながら被害者であり、佐南さんに自覚があるかどうか分からないが、許さなければならない圧力みたいなものがある。
そういう子は、学校に何人かいた。
私に嫌がらせやいじめと同じ行為をしてきた子の中には、本当に反省し、泣いた子もいた。本当に反省している善良な人がいた。
それらは許さなければならないと、先生にいわれた。
いつの間にか、あっちが被害者みたいな立ち位置で私が加害者みたいになったことは多々ある。
「仲直りの強制でした。謝ってるんだから許しなさいって言われて、それが当たり前だったんです」
許さなくてもいいといってくれたのは、一樹先生くらいだろう。
「でもな……今回は頭に来てしまいました。被害も何もないのに……多分、八つ当たりも入ってたんですかね?」
自虐的に笑った私は、可愛くないだろうと思う。そんな私の腕を赤城さんは、引っ張って腕の中に閉じ込めた。
「大丈夫だ…お前は悪くない」
赤城さんは、痛いくらいに私を抱き締めて、ただそれだけを言ってくれた。
「茜は悪くないぞ……大丈夫だ。茜が許したくないなら許さなくてもいいし、そんな茜も俺は愛す」
それは正論でもなければ、なぐさめでもない。ただただ甘やかし、優しく優しく甘言をはいてくれた。
それにすがり付きたい程には、酷く甘かった。
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