第47話 無くしてない
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「そもそも書類を無くしてませんから」
私はランドセルの別のポケットから本物の書類を出した。それは正真正銘、予算案と許可証である。
辺りはポカーンとしている。実行委員や生徒会委員、茜に書類を渡した女性や確かに書類を盗んだ筈の佐南もポカーンとしていた。
実は私は予算案と許可証をコピーし、ダミーの方をランドセルに入れてたのである。もちろん、そのことをしらない人は……
「ぇえ!?だって、さっき佐南さんが……」
案の定、委員の一人が、疑問を示す。
事実、このパニックは私が書類を紛失したと思われたのが原因だが、周りに分かるようにいったのは、佐南さんだ。
佐南さんはビクッと体を震わせて、手を痛いほどに握っている。けれど、罰は受け入れるといった覚悟の目をしていた。
しかし、私はシレっと嘘をいう。
「どうやら、佐南さんは早とちりをしてしまったようです」
佐南さんは驚いて私の方に視線を向け、驚きすぎたのか口をぱくぱくして、何かを言おうとしたが、その前にお姉さんが喋った。
「じゃあ、なんでもっと早くに言わなかったの?」
「すみません、いうタイミングが分からなかったんです」
私はシレっとそう答えたが、勿論嘘だ。
私が何も言わなかったのは、佐南さんがどういう行動をするかを見るためだ。もし仮に知らんぷりをするならば、私は佐南さんへの追及をしていたと思う。
追及と言えば、聞こえはいいが、ようは復讐だ。
けれど、やはり佐南さんはマジ佐南さんだった。知らんぷりも出来ないし、正当化も出来ない。少し要領が悪いけど、優しくて純粋で真面目な佐南さんだった。
だから、私は何も言わない。
「もっと早急に言うべきでした。ごめんなさい」
「いいのよ、勘違いした私たちも悪いんだしね……ごめんなさい。
さて、仕事を再開させましょう」
生徒会役員の人がそういい、みんなは安堵の表情を浮かべていた。
一番、安堵していた筈の佐南さんは今にも泣きそうで、けれどそれを堪えていた。
「っん……っくぅ~!」
私はパソコンの書類をなんとか終わらせて、背筋を伸ばしてコキコキいわせてると、横から紅茶が出てきた。
「……っ…えと、どうぞ……」
佐南さんが入れたらしく、しかも周りをみると他の人は交渉や説明などに行っているらしく、残ったのは小学生の私とレプラの佐南さんだけだった。
「あの……紅茶には結構こだわってて……水とか葉にも気を付けてるから……」
「はい、ありがとうございます」
私は紅茶を飲み干した。確かに凄く美味しいお茶だ……
「今日は……ごめんなさい。わたしのせいで……ごめんなさい」
ここは、とぼけた方がいいのだろうか?何のことですか?といったら言いのだろうか……ダメだ、分からない。
「佐南さん……もうしない方がいいですよ。」
「ごめんなさい……そんなつもりじゃ無かったの…」
うつむいてそう言った佐南さんの気持ちは分かる。そんなつもりじゃ無かった、もっと軽い状況だと思ってと……そういうのだろう。
ならば仕方ない。仕方ないのだ。そもそも小学生が小生意気にしていたら誰かは嫌だと思うし、更に好きな人の恋人だと知れば勢いあまって行動するだろう。
「……佐南さん…正当化出来ないなら、やめてください。自分は悪くないと言いきれないなら、最初っからしないでください……」
「茜ちゃん……本当にごめんなさい!!」
必死で謝る佐南さんをこれ以上せめることなんて出来ないだろう。ちゃんと反省し、もうしないだろう佐南さんにこれ以上なにもいえない。
「大丈夫です。被害なんてないですし、佐南さんも謝ってます。佐南さんの性格的にもうしないと思いますから」
そう、実害なんて無かったんだし、佐南さんは反省している。これで許さなみ訳にはいかないし、これ以上せめる権利もない。
「(もうすぐ、誰かは帰ってくるだろう)」
私が何も言わなければ、全ては大丈夫だ。言ったところで誰も幸せにならない。怒らなければいい……
慣れている、馴れている、生れている
「佐南……さん」
「なに?」
泣きそうに、死にそうに、青ざめて涙を少し流していた。その姿はとても可愛くて、可愛げがあった。
バシィィンン!!
気がつけば、私は佐南さんの可愛い頬を思いっきり叩いていた。その勢いで、紅茶も倒れてしまった。
「……被害者ぶってる、その顔、大嫌い」
私はそれだけを言って、紅茶のカップを拾い、なに食わぬ顔をして、元の机に戻った。
ピッタリ5秒後、何人かが戻ってきた時も私は何もなかった顔をした。
家庭とか学校とか色んなストレスが、少し爆発したって感じです。




