第39話 一樹視点。
如月と一緒に聖歌学園にいき、始まった会議では、みんなが色々な意見を言い始めた。
「わ、私は、映画がいいと思います!ほら、みんなでやれば、一致団結って感じがするし、青春って感じもします……予算はあるし、皆で頑張れば出来るとおもいます」
そして、レプラの…まぁ、いわるゆる実行委員長の佐南が綿菓子みたいにフワフワしたことを言い出した。
おいおい、大丈夫か?と、思ったのは俺だけではなかったらしい。
「私から意見と提案があるんですけど」
如月茜がそういって立ち上がると、周りの生徒たちは、瞬時にそっちへと注目した。
まぁ、こんな意見が白熱する場所で子供がログインし出したんだから、それは仕方のないことだろう。
「な、何かな?茜ちゃん」
ピクピクと、ひきつり笑いをしながら、回答を求めたのは、清楚系の可愛さがある、デコが特徴の佐南 佑実だ。
この可愛い子は、元々如月をよく思っていない感じがするし、そうじゃなくても楽しくしていたのを壊されたという気持ちもあるのだろ。
「まず、この期間で映画とかは無理だと思います。機材や舞台はなんとかなるとしても、1ヶ月というのを考えればそれは不可能だと思いますし、合同イベント以外にもやらなきゃいけない事があるのは両校共に一緒だと思います」
如月は淡々と、まるで大人のように……つーか、本当にコイツ可愛げがない。見た目は不気味系、ミステリアス系美少女のカテゴリーに入れるのに、論破や屁理屈は得意なんだよな……
周りの人たちも、如月の言葉に驚いている。
「何でそんな酷いことをいうの?……それは皆で頑張ろうよ!」
佐南が如月の意見に押されながらも、なんとかそういった。しかし、論が足りない。佐南がいっているのは感情論と根性論である。元々、こういう論理的なのは苦手な方なのだろう。
それに対して如月は……
「そうですか、がんばって下さい」
そう一言いって、如月は座り出された紅茶をのみ始めた。
徹底的に争う姿勢をみせ、ムーっと睨んでいた佐南もポカンと毒気が抜けた顔し、周りの人たちも少し驚いている。
え、えぇー?
周りの心情を表すなら、こんな感じだろう。きっと、頭の中で小生意気な小学生への論破を考えていたはずなのに。
草野という眼鏡の男子が思わず質問する。
「如月さん、もういいのですか?」
「言わせてもらえるなら、いいますね」
その言葉は、みんなに聞こえる程度の自然な大きさで、俺にだけ聞こえる小声で「大丈夫ですよ」といい、また立ち上がった。
「私の提案は劇がいいと思います。劇ならば予算もカットでき、やる人数もそこそこに出来ると思うからです。そして、高校生と小学生が出ても多分自然にみえます。
もう一つは、合唱がいいと思います。勿論、高校生と小学生ではレベルが違うと思いますが、それはある意味微笑ましく見えますし、それが無理ならばこちらはカスタネット等の簡単な楽器を担当します。
どちらがいいですか?」
「あ、私は合唱の方がいいと…」
「僕は劇が……」
答えを促されて、慌てて誰かが喋ると釣られて他の人も喋り始め、議論に発展した。
論理的に、簡単に説明をし、更には高校生と小学生との隔たりや壁の解決、もしくは妥協を見せた提案を如月はした。
そして何より小ズルいのは、『これでいいですか?』や『何か質問はありますか?』ではなく、『どちらがいいですか?』といった所だ。
これならば、どちらかは既に決定になったようなものである。事実、周りは何の疑問もなくこの二つのどちらかがいいかで会議をし始めた。
ホワイトボードには『合唱』と『劇』の文字があり、レプラの佐南がいっていた映画はいつの間にか消されていた。
言質を取り、自分の意見に穴がないかのようにいい、相手が冷静や正気になる前に、答えをうながす。
その手腕と言語能力、そして世渡りの上手さや要領のよさに敬意と少しの嫉妬をこめて俺はこういってやる。
「お前は本当に可愛げがない」
それが、如月が多数の味方と一部の敵を産み出す由縁なのだろう。
如月に関心をあげる人たちと、如月を睨んでいる佐南をみて、俺はそう感じた。
茜の本領発揮です。
まぁ、論理的な人って凄いけど嫌われやすいですよね。そこら辺を上手く使い分けてるのが茜です。




