第34話 説明
「一樹先生、どういうことですか?」
茜は、目の前で心底面倒臭そうにしている教師に説明を求めると、一樹は赤城財閥を知らないのだと思って説明する。
「あー…赤城財閥ってのはな、世界的に有名で大きい会社で…」
「いや、そこじゃなくて、何で私が実行委員なんですか?」
こういうのは、本来は中学生に近い上級生がするものである。中途半端すぎる学年になんでやらされるのだと、茜は思った。
「赤城財閥のご子息が如月を指名してるのと……まぁ、ぶっちゃけた話、これで委員が出来るのはお前くらいなもんだ」
一樹は茜を評価している。
仮に上級生が実行委員になったとして、委員会に行くとき、あの聖火学園相手では萎縮するだろうし、うまいこといかないだろう。
茜は頭もいいし、口も立つ。好意と悪意に無条件で晒されている茜はちゃんと上手く出来るだろうし、最悪は小学生という立場を利用して上手いこと逃げるだろう。
「ある程度以上の実力がなければ、聖火学園の玩具にされる危険性もある」
「おもちゃ?」
「自己中なあいら等が平凡な小学校のことを考える訳ないだろ」
「一樹先生、何か嫌な思い出とかあります?」
まるで経験談のようにいう一樹だが、一応はそれもあっている。聖火学園は実力至上主義でもあり、金持ちや権力者も多数いる。
当然、自我が強い者もいるし、自信家が多くいるのも仕方ない。勿論、ちゃんとした真面目な生徒も多数いるが、面倒なことに実力があるのは自己中で自我が強い者ばかりだ。
「あっちに好き勝手されェても、こっちの上は聖火学園と関わりを持ちたいから見てみぬフリをするだろう。極端な話、死人が出ても何も言わないと思う」
「うちの学校って、そこまで最低でしたっけ?」
「あと、俺も面倒だから基本的に助けたりしねーからな」
「アンタ最低やな」
「冗談だ」
しかし、あながち冗談でも済まされないのかもしれない。それほどまでに聖火学園という所は権力がありすぎるのだ。
「つーかさ、俺的には如月が何をしたかを聞きたいんだ……赤城財閥のご子息に何した?」
語尾を伸ばす癖を直して茜に質問する。
まさか、迷惑や暴言を吐いて、その嫌がらせなのかと一樹は思った。それだったら、どんだけスケールのデカイ嫌がらせなんだという話になるが、あながち間違いでもない。
「あ、恋人ですよ」
それを言った瞬間、一樹はポカーンとした顔で口を開いた。
……なに言ってんだ?この幼女。
集約するならば、この一言だろう。
「おい待て!!お前は確かに見た目は幼女だが、中身は根暗のひねくれだぞ?いや、つーか幼女趣味持ってんのかァ?ロリコン?」
「殺すぞチンピラ」
大変失礼なことをいっている一樹だが、それも仕方ないだろう。
確かに、最近の小学生は早熟なので、中には中学生や高校生に見える子もいるだろう。
しかし、茜は確かに顔は整っているが、食事の接種が余りにも極端な為に体格は小柄だ。そんな子供を恋人にするということは、ロリコンを意味する。
「赤城さんとは夜の抗争中に巻き込まれてハッピーセット取られてスマホを押し付けられて手がガリガリ君のせいでベトベトになってそこから色々あったんでさ」
ロリコンということは否定しない。
「意味分からない。どういうこと?」
「そんなんウチが聞きたいです」
茜自身、未だによく分かってないのだ。
「つまりは、いきなり合同とか言ってきたのは、お前の恋人のせいなんだな?」
「つまりはそうなります」
なんだよそりゃ……一樹は頭を痛くした。どこの世界に恋人と一緒にいたくて、学校巻き込むバカがいるんだよと……
「まぁ、いいや仕方ないから……実行委員になるんだろ?明日委員会があるから出ろよ」
「いえ、なりませんよ。面倒くさい」
本当に面倒な顔でそういった。受験などどうでもいいし、隼人に会うのが何か嫌だし、嫌な予感しかしないのでやめたい。
一樹は茜にやって貰わなければ、給料は半減すると水城とかいう優男に脅されてるし、下手に他の子供を差し出せば最悪自殺する可能性もあるので、茜にやってほしい。
「……」鶏肉を出す
「……(パクっ」かぶりつく
無言で鶏肉を出す教師と、それに向かって無言でガブりついている幼女の奇妙な光景がそこにあった。
「……(モグモグモグ」
「……やってくれるな?」
「バキっ……ングッ……はい」
骨まで噛み砕いて、茜は了承した。
肉に対しての執着は茜の欠点だろう。




