第33話 柚木小祭り
スマホを取り出し、メアドと番号を交換する。
「ねぇ、これでアナタと連絡出来るのよね?ね?」
「まぁ、そうなりますね」
そう言った瞬間に、ムフフン♪とご機嫌そうに笑う肉姉さんをみてると、この人は友達がいなかったのかと不安になった。
キーン コーン カーン コーン
「あ、チャイムがなったので教室に戻りますね」
「えぇ、頑張ってね」
肉姉さんと連絡先を交換した後、予鈴がなったので、私は自分の教室に戻ることにした。
「茜ちゃん!さっき露出狂の不審者が図書室に表れてたらしいぜ!!大丈夫だった?」
廊下でかずま君にいきなり両肩を掴まれてガクガクと揺さぶられながら、そういってきた。
多分、肉姉さんだろうね……
「大丈夫だよ、何もなかったから」
「そっか~……よかったぁ」
本当に心底心配してたらしく、ホッと安心していた。その後に大変素晴らしくてすごく爽やかな笑みをだしていった。
「本当に心配したんだかな!無事でよかった!」
あ、私はかずま君のこういう純粋さが苦手で、好きだったんだ。と、無意味な発見をした。
「あのさ、かずま君…」
私、恋人が出来たんだよと、何故か言わなきゃならないような気がして言葉をだそうとしたが……
キーン コーン カーン
本鈴がなってしまった。
「じゃあ俺いくな!!」
そういって、かずま君は凄いスピードで何処かへといってしまった。
「……」
私は無言で教室に入って、机に座ったが後ろを誰かにつつかれたので振り返った。
「あのさ、茜ちゃんはかずま君の事が好きなの?…えっと、
男の子として」
ソバカスとおさげの女の子、名前は確かゆかちゃんだったと思う。その子が小声で話しかけてきた。
「…好きじゃないよ」
「じゃあ何でよく話すの?ずっと一緒にいるの?好きじゃないんでしょ?」
その理論でいくと、社会というシステムそのものが破壊するぞと思った。
ゆかちゃんの目には苛立ちがあり、嫉妬があって、結構見覚えがあったりする。最近のガキはませてるな~と思ったが、私も小学生だと思い直す。
「ゆかちゃん、ウザい」
「っな…!?」
この手の人間にはハッキリとした態度を取るのが一番だと私は判断して向き直る。
別に余り関わらないからいいし、仲良くしたい訳でもなかったので、これでいい。別に嫌われても悪いこととないし、せいぜい悪口を流されるくらいだ。
悪口くらいなら、前から流れてる
「おーい、チャイムがなったぞー」
周りの子達はまだガヤガヤとしていたが、先生が入ってくると、静かになった。たしか、五時間目は総合だったと思う。
何をするんだと思って私は黙って聞いていたのだが……
『如月茜さん、如月茜さん、至急職員室まで来てください』
そんな校内放送が流れた。周りは、なんだ、なんだと少しだけ騒ぐが先生が静止される。
「先生、私なにか問題をお越しましたか?」
「いや、大丈夫だ。如月が悪いことをしたわけではない」
先生が目を背けながらいうので、少し疑問に思ったが、とりあえずは行くことにした。
周りからは、「大丈夫?」「茜ちゃん行くの?」とガヤガヤしているが、仕方ないだろう。
廊下を歩き、職員室に入ると先生が表れた。
「(まさか、肉姉さんのことじゃないよな……)」
一瞬、最悪の想像を考えてしまったが、先生がいったのはそうじゃなかった。
「今から、もうすぐ始まるうちの柚木小祭りについて話す」
あ、もうそんな季節なのかと、私は思った。
うちの柚木小学校は、普通の公立なので出来ること言ったら、小さな劇や歌をうたうぐらいである。
しかし、ここ10年ちょっとくらいのことだが、近くの中学校や高校と合同でやるので、それなりのことは出来るらしく、ちょっとした祭りのようなものだ。
「今年は、あちらの要望もあり、聖火学園高等部と合同することになった」
「え?」
聖火学園、それは長い長い伝統をもち、一般的には金持ちが集うイメージの強い学校だ。
こんな平凡な公立の小学校でも、結構有名な学園で、まだ学費が一般ですむ中等部の受験を目指す子達も多くいる。
もっとも、余りにも難易度が高くて倍率もヤバい。
うちの学校とは、縁もゆかりもないマンモス高校だ。なんでいきなりうちの学校と?というか、なんで高等部?
「如月は、確か聖火学園の中等部への受験を目指していたよな?」
「一応は選択肢に入れてます…」
確か、そんな事をいった気がするとも思う。別に中学なんて何処でもいいけど、学費免除があるなら行きたいとは思ってたので、多分言ったと思う。
しかし、聖火学園の学費免除は推薦じゃないと無理らしい。こんな小学校に出来る筈もないので、憧れ的なものでしかなかった。
「推薦してやるから如月、実行委員をしてくれないか?って、赤城財閥のご子息がお前を指名しているんだ」
「は?」
見覚えのある人の名前が聞こえてポカーンとなった。
小学校と高校だと、絡ませる為にはこれしかないと思いました……




