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第32話 肉姉さん

前回の話を編集したので、変更点があります。

付き合ってくれと言われて、私は……


「よろしくお願いします」



と、答えた。








「なんで、あんなことを言ってしまったんだろう……」


茜は学校の図書室で本を読みながら、頭を抱えた。


昨日、隼人から告白された茜は思わず受理してしまったのだ。その後の記憶は少しポヤーっとしている。


狂喜乱舞している隼人やその仲間たちを見て、冷静なって自分が何を言ったのか自覚した茜は恥ずかしさの余り、俊足で走って帰ったのは覚えてる。


「どうしよ……」


「受理したものは、仕方がないんじゃなくて?もう腹をくくるしかないじゃない!!」


「……肉姉さん、いつのまにいたんですか?」


頭を抱えている茜の横の机に、いつの間にか沙羅がいた。


「さっき窓から入ったのよ…フフンすごいでしょ?」


「(ここ、二階…)」


沙羅とは、外国名でサラスタシア・ジョアンナという名前の女性で、とある国の王女だ。豊満な肉体と、犯罪臭がする日本人受けしない超美人で、隼人の元婚約者。


「ちゃんと許可を取ろうとしたのに、事務員さんに


『あの、子供が怯えるので本当にもうこないでください。警察呼びますよ?』


って言われたわ……」


「そりゃそんな露出高い服やったらそうなるわ、そして帰れ。二階まで上がってくるな」


頭脳はいいらしいが、常識が欠如していたり、少し残念さが特徴なのも沙羅である。


「ってか、肉姉さんは確か赤城さんが好きでしたよね?」


隼人が婚約を破棄したとき、元婚約者の沙羅は反発していた。


「好きは好きだけど、ちゃんと乗り越えたわよ」


サラッと沙羅はいった。

元々の性格がカラッとしていて切り替えが早い為が、ちゃんと、自分の気持ちに折り合いを付けている。


「それに……あ、あーちゃんなら別にいいかなって…」


「は?」


茜は何の感情も入れずに、その単語を口にした。顔を赤らめてチラチラと見る沙羅に疑問を抱いたのと、さっき、変な言葉が聞こえたからだ。


「茜だから、あーちゃんよ!この私にアダ名をプレゼントされるなんて光栄なのよ!!誇りに思いなさい」


「その気味の悪くておぞましいのを止めてください。泣きます。吐きます。拒否します。」


「そこまでなの!?……うぅ…」


唸りながら、目に厚い水の膜が作られている沙羅。勢いで押していこうとしたが、茜は冷たい目で拒否した。


「冗談よ!!何本気にしてんのよ!!」


沙羅は逆ギレをおこして、椅子にすわった。


自覚してるのか、無意識なのか、沙羅は茜のことをは気に入っている。罵倒でしかない、茜の『肉姉さん』呼びも実は密かに気に入っており、友達につけられたアダ名という感覚だ。


仲良くはしたいが、相手が小学生の子供ということと、自分が女王気質というのが邪魔して、上手くいかないし、何より茜はドライすぎる。


まぁ、そこも実は沙羅が気に入ってる部分でもある。


「……」


「それで、何しに来たんですか?」


若干拗ねてる沙羅に、茜は会話を切り出した。経験上、普段煩い奴が拗ねて黙る時は泣く寸前だと理解している。


最早、どちらが年上なのか分からない。


「そう!!それを言いたかったの!!」


ビシィ!!っと、沙羅は茜に指をむける。


茜は沙羅の指を優しく手で下させ、『人に指をむけてはダメですよ』と優しく説明した。


「あなた、隼人と恋人になったのよね?」


「まぁ、はい……うん」


ストレートに言われて、さすがに気恥ずかしくなったので目線を反らず茜。


「隼人の婚約者は、私以外にもいるから気をつけなさいよ」


「え?」


茜はポカーンとした。隼人に沙羅以外の婚約者がいたことに驚いたのだ。


「まぁ、全てに置いて美しくて完璧な私が婚約者として一番候補だったんだけどね!


……まぁ、婚約者だけじゃなくて、色々と巻き込まれると思うから、気をつけた方がいいわよ」


「……」


沙羅は真顔で、注意勧告をしたあと、スマホを持ち出していった。


「だ、だからイザという時の為に連絡交換しよ?」


「……いいですよ…」


半泣きで顔を真っ赤にしながら、必死で言葉をつむいだ沙羅を流石に拒否する程、心は冷たくなかったので、茜は了承した。

沙羅にとって茜は、初めて出来たお友だちです。

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