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第29話 大嫌い

オカンが私を無言で抱き締めた後、私は外で待たせている赤城さんが気になって、そろそろ帰ることにした。


「オカン……私、そろそろ帰るけど……また来てもいい?」


「いいに決まっているだろう。いつでも来るといい、私はどんな時でも歓迎しよう」


当たり前だとばかりにオカンはそういって胸をはって断言したオカンに私は安心する。


「よし、土産の品だ」


オカンは瞬間移動を使ったらんじゃないかと思うくらいの素早さで部屋を出たかと思ったら、シュパーンとすぐに戻ってきた。


「私の土地の名産の菓子と野菜と果物。茜の好物の豚肉と牛肉のベーコンにソーセージ、後、かんざしと新調した浴衣……後は…」


「オカン、もう持てない」


両手に袋パンパンに野菜やら果物やら浴衣が入っている。肉は何がなんでも持ってかえるけど、他はこれ以上もてない。


「それに、また来るんだから」


私は苦笑して、靴を履いた。

行儀は悪いけど、両手が塞がっているので足でスライド式のドアをガラガラと開ける。


「茜……」


出ようとしたら、オカンに呼び止められた。


「また来るといい、誰が何といおうと、ここはお前の家だ」


「はい、弟にも会いにいきます」


まだ産まれてないし、きっとお腹の目立ち具合からまだ3ヶ月弱って感じだから、後7ヶ月ぐらいだろう。


紅哉(こうや)だ……茜色にちなんで紅哉となずける」


「おおきに」


私は頭をさげて、玄関から出ていった。









表門ではなく、裏門から出て、そのまま少し歩いて赤城さんが止めてある車にたどり着いたのだが……


「青年……俺を殺せ」


「よし、死ね」


何故かお父さんがいて、赤城さんが拳銃をもち、何故か父さんのこめかみに突きつけていた。


何を言っているか分からないと思うが、私にも分からない。


さっきまでオカンと感動的な再開をはたし、感動的な別れをしたのに、それが全てぶっとぶ勢いでカオスだ。


「アホかぁぁあ!?意味分からんけど何してんねぇええんんん!?」


私は思わず関西弁でshoutした。つまりは叫んだ。


「茜!?」


「……あかね……」


二人はこっちを見た。


色々と聞きたいことはある。赤城さん、貴方の持っている銃は本物ですか?模造品ですか?模造品といってください。


お父さん、何故ここにいるんですか?まぁ連れ戻しに来たというのは分かるとして、なんでこめかみに銃を突きつけられているんですか?


いや、アレ?えーと、うぇ!?いや、一体何がどうなっ……


「……お父さん、泣いてる?」


その事実に混乱した頭が一気に冷えた。

父さんはすぐに目を拭き取ったから、分からなかったけど、涙が一筋流れていた。


あの、父さんがだ。

祖父が死のうと祖母が死のうと、葬式で泣くこともなく、寧ろ影でニヤニヤ笑っていた父さんがだ。


あのドロドロしてカラカラに乾いた目から、そんなものが出るなんて、世界が滅びてもあり得ないと思っていた。


「青年に説教されてな……死にたくなった」


「お父さん……


赤城さん、ちょっと拳銃おろしてください。怖いです」


そういうと、静かに下ろしてくれた。

赤城さんの目がヤバイくらいにガッと見開いて瞳孔開いてるから怖い。


「茜……あいつに会ったってことは……知ってるんだな?」


「うん、オカンは妊娠してた」


その一言で全てが通じたらしく、父は手で顔を覆い、天を仰いだ。そして、観念したかのようにいった。


「あいつの不妊に俺はつけこんだ。お前はまだ頑張れば子供は出来るが、こっちには出来ないんだぞと」


「とんでもない理論だね」


私の母も……不妊症だった。

それは末期のもので、治療してももう子供は産めないだろうと言われているものだったらしいと、父が昔いっていた。


「『お前は茜を捨てて自分の子供を選んだんだろ、だったら会う資格なんてない。むしが良すぎるんじゃないか』とも、俺はいった」


「お父さんがグズって言われるの分かった気がする……


赤城さん、お願いだから銃をおろして」


赤城さんは、今度は苛立ったように銃を下ろしてくれた。本当に怖い。無言なのが余計に怖い


確かに、父さんの言葉には流石に私も怒った。

父さんの性格上、もっと酷くてえげつないことをいったのだろう。


あの凛としていたオカンが罪悪感で潰れるほどに、酷いことを沢山いったんだろう。


「俺を恨んでるなら、殴っていいぞ」


「うん」


バッシィイイン!!!!


私は遠慮なく父をビンタした。

10歳の子供でも、本気でやったビンタは結構な力がある。証拠に父の頬は真っ赤になっている。


私は大きく大きく行きを吸っていった。







「お前なんてクズや!!!子供を巻き込むんじゃねぇぇよ!!この最低男!!ふざけんなや!!


お父さんなんて大っ嫌い!!!」


この瞬間、私は子供になれた気がした。



茜も結構、溜め込んでます。

大人でも冷めているんでもなく、単にあきらめていただけ。

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