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第20話 時間稼ぎ

茜は沙羅に死人が出るから早く話し合いしなさいと言われたので、隼人に連絡をつけた。

場所は、少しお洒落な雰囲気のカフェである。


取り合えず、そこまで目立たないであろう奥の方に座り、ヒヨコアイスを頼んだのはいいが…


「(帰りたい)」


茜は店内に入って、すぐにそう思った。

隼人が原因なのではない、何故ならば隼人はまだ来ていないからだ。


何故か、目の前に隼人じゃない生命体がいる。


「久しぶりだよね~茜ちゃん。俺、カズラっていうんだけど覚えてる?」


チャラい感じのいかにもなヤンキー男である彼は戸籍がまだ若菜だった頃に従兄妹だった男、 若菜(わかな) カズラだ。


茜はこのヘラヘラとした笑みが大嫌いで、何回かイラつきが限界に達して顔面を殴った思いでが蘇る。


「叔母さんもさ~茜ちゃんに会いたがってたよ?あ、今度会わせてあげようか?」


「(死ね)」


茜は無視してヒヨコを型取ったアイスにタバスコをぶっかけて口にいれる。


「あ、大丈夫だよ。確かに茜ちゃんは若菜家を出ていったけど、叔母さんは許すと思うし…あ、そのヒヨコかわいい…


ちょ、なんでタバスコめっちゃ入れてるの?」


「(消えろ)」


辛いものが好きというわけではないが、なんか食べたくなるんだから仕方ないだろ。


「そういえば、本家でもストレス貯めるとよく辛いもの食べてたね」


こういう無神経なところが大嫌いなのである。

若菜家でお世話になっていた時も、コイツのせいで親戚やら使用人やらの人当たりがキツくなったのだ。


色々な事情を知ってる癖に、そんなことを言うなんて、本当は私を陥れたいんじゃないか?


とさえ、茜は考えだした。


しかし、カズラも自覚が無かった訳ではない。


「(ヤベーよ、茜ちゃん無言で殺気放ってるよ、完璧に怒らせちゃったよ。もう本当に俺ってダメだ。ヒヨコ可愛い。死にたい。茜ちゃんなら殺されてもいいかも。やっぱ嫌だ、殺されるならヒヨコ食べてる幼女じゃなくてナイスバディな姉さんがいい。つーか水城さんも無茶難題おしつけないでくれよ……)」


カズラもカズラで、色々と極限状態なのである。


茜の連絡を受け取った隼人はすぐにでも行こうとしたが、流石に行けなかった。


何故ならば肌に付いた血が乾いてカラカラになり、髪は返り血でベトベト、白の制服は真っ赤なグロテスクサタクロースになってる格好だからだ。


その結果、シャワーを浴びて服を着替えることにした。


で、あまり待たせると茜が帰ってしまうからカズラ、お前が時間稼げと水城に命令されたのだ。


茜を帰らせたら、あの地獄絵図は自分になる。


隼人ならやる、アニキならやる。あのロリコンは絶対にぶちギレてやっちゃう。


「俺ね、頭皮をベリベリにされて脳味噌スースー状態になるのはイヤなんだよ……」


死体以上人間以下の物体となった敵対グループの惨状を思い出してしまい、変なことを口走ってしまうカズラ。


テンパったり、緊張すると無神経になったり言語能力が失われるのは彼の欠点だろう。


「何いってんの?」


何の事情も知らない茜は、遂に頭がイカれたのかと思った。


「ハハハ……いや、なんでもないよ……」


というか、時間稼げといわれても、少し無理があるだろう。

従兄妹とはいえ、余り仲はよくないし、というか最早嫌われている。


ぶっちゃけ、茜には何もしないで一人にさせた方がまだマシだったと思ってきた。


しかし、あの時断っていたら水城さんから社会的抹殺を喰らうし、今茜を帰らせてしまったらアニキからは物理的抹殺を喰らってしまうのだから救いようがない。


「あのさ、何でアニキに嫌いとかいったの?」


「アンタに言う必要ある?というか……


なんで知ってるんですか?まさかストーカーしてた訳じゃないですよね?」


「まさか~……(してました。ごめんなさい。)」


実際には、水城と一部の人たちがやっていた。


茜は眉間にシワを寄せたまま、立ち上がった。


「赤城さんが来ないなら、帰ります」


茜はこれ以上、カズラと一緒にいるのは嫌なのと、流石に死人がでるというのは、沙羅のオーバーな表現だろうと結論づけ、帰ることにした。


実際は、死人が出てないものの、それに限りなく近い物体は出来上がってる。


そして、茜を帰らせてしまうと『物体』になってしまうカズラは、必死で茜にしがみついた。


「茜ちゃん!!ちょっとstop!!お願いだから此処にいて!!パフェ奢ってあげるから!!」


「アンタの存在が嫌や。消えろ離せ。というか何でそんなに必死なん?死ぬ訳じゃないでしょ」


「じゃあ俺黙る!!黙るから!!っていうか死ぬんだよ!あのロリコンのモンスターに殺されるんだよ!!頭皮をベリベリに剥がされて脳味噌ぶちまけるかもやし!!鼓膜に煙草を押しつけられるかもだし!!両手両足を変な方向に曲げて愉快な格好にされちゃうんだせ!?あの人頭可笑しいんだよ!!人間やあらへん!!怪物だよ!!快楽殺人鬼ロリコンなんやで!?もしくは真っ赤な真っ赤なグロテスクサンタだぜ!?」


だったら何でお前は隼人のグループに入ってるんだ。


「せやから、もうちょっと待ってや!茜ちゃん!!」


「そんなん言われて待つ訳ないやろ!!」


「やんなー…」


必死で帰ろうとする茜、それを何としてでも食い止めようとするカズラ。

二人とも、必死すぎて所々、関西弁が漏れている。


ギャーギャーと、二人が争っていたときに……


「悪ぃ、待たせたな」


背後から、聞き覚えのある声がでた。

やっと、来てくれたのだと思い、頭皮ベリベリ状態さ避けることが出来たと安心したカズラだが


「……」


茜が白目を向いていた。


それを不思議に思い、カズラは振り替えると……


「……(なんで血まみれやねん!?)」


何故か血まみれのままの隼人がいた。


変わった所といえば。服装と、カラカラの乾いた血から、新鮮で新しい血に変わった位だ。


逃げようとする体制のまま、白目を向いた幼女。

幼女に半泣きで必死でしがみつき、固まったチャラい男。

血濡れのロリコン。


何故、こんな訳の分からない状況になったのか、誰も説明出来なかった。

更新してなかったので、いつもより少し長目に書きました。

本当はこの役は沙羅にやらせるつもりだったんだけどなー。

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