その後
さてと、この話の語り部は基本的には私なので、唐突に思ったとは思うが、実は初期の段階で私は赤城さんを妬ましいと思ってました。
自覚した気持ちを表してみましょう。
「ハァ…私はバカだ!なんでこんな事を自覚しちゃうんだよ!?やだやだやだ!!格好悪い!!うぅ…あぁ、自分の勝手で酷いことをいってしまった……」
こんな感じです。
私はベットの上でゴロゴロしながら今日のことを思い出してしまい、頭の中がシェイクしてくる。グチャグチャです。
途中から脳味噌をパーンとさせたくて、壁に頭をぶつけたら、壁が赤くなって、ベットリベトベト状態になってしまった。
今、私は最低です。卑劣です。ダメなアホの子です。
赤城さんに嫌いと言ってしまいました。人に向かって嫌いという言葉を使ってしまうなんて、とんだ礼儀知らずです。ごめんない。
誰がいるわけでもないのに、何故か敬語を使ってしまうほどには混乱してた。
私は赤城さんが嫌いな訳ではない。
いや、好きか嫌いかの2択を迫られたらぶっちゃけ嫌いだが、逆から言えば迫られなければ嫌いとは答えない程度には嫌いじゃないんだ。
何を言ってるが分からないと思うけど、私にも分からない。
トントン……
私が意味不明な脳みそがシェイク状態になってたら、ドアをノックする音が聞こえた。
なのに、ドアを開ける気配も何かを喋るわけでもなく、ちょっとだけ時間がたったので、なんだと思ったら、ボソボソと声が聞こえた。
「は、入った方がいいのかな?でも、こういう場合は反抗期の一種の表れだって、本に書いてたし、干渉は余りよくないって……でも、親子のコミュニケーションは必要で……」
その悩みは、ノックする前にやろう。一瞬、お化けかと思ってビビってしまったじゃん。
けれど、心配させてしまったのはごめんなさい。
「入っていいよ母さん」
ガチャっと、ドアを開けて母は表れた。
「さっき、凄い音…が…し……キャァァアアア!!!?」
私の顔を見るなり、母は大きく悲鳴をあげた。
何だと思っていたら、ポタリと流れた赤い液体が見えて……
壁に頭をガンガン叩いていたことを思い出した。
「うっ……グスっ……ほ、本当にビックリしたんだから!!」
私の頭に包帯を巻きながら母は半泣きで、怒ってる。うるうるの大きい目で睨んでいるのでそこまで怖くはないけど、罪悪感はある。
「ごめんさい。ちょっと色々と悩んちゃって……」
「もしかしてイジメ!?」
今度こそ涙腺が崩壊してしまっている母に私は慌ててアタフタと否定する。これ以上、母にストレスを与えてはならない。
「違うよ!そういうとは、もう無縁だから。
単に、人にちょっと悪口をいってしまったの……」
嫌い。
この言葉は悪口に入るだろう。
母は安心したように、けれど心配したようにいった。
「喧嘩?」
「……そんな感じかな?」
いい逃げだから、喧嘩じゃないかもしれない。
なんだか、もう頭痛い。それほどまでに頭の中が混乱してたら…
「大丈夫よ」
フワッと、花の香りがする暖かいものに包み込まれた。
優しい加減で、けれどしっかりと抱き締めてくる何かは母だと気がついた。
「大丈夫。茜ちゃんはちゃんと反省してるもの、自覚をしてるから、大丈夫よ」
ありきたりで、よくある母の言葉だが、凄く嬉しかった。色々と救われた気がした。
「ありがとう」
こうやって、私はちゃんと親に愛されている、心配もしてくれている。励ましてもくれる。
そこそこに裕福な家庭だし、母は優しくて可愛い人で、父も無愛想でひねくれてるけど、家族を愛している。
限り無く理想的で、多分幸せな筈で……
だから、何処か空虚に思えてしまう私がダメなんだろう。




