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第16話 妬ましい

サクサクサク……


私はただお菓子を貪り食うだけの人形、私はただお菓子を貪り食うだけの人形……


サクサクサク…


「おや、そのお菓子が気に入ったのかい?」


「サクサクですね」


私はカラカラに乾いた笑みを浮かべていると思う。

この慈愛に満ちた、おじさまの視線が怖い。いや、私に向けられているというより、赤城さんに向けられているっていうか……


アレだ、普段はいい子だけど無愛想で我が儘をいわない子供が実は隠れて猫を飼っていて、それを微笑ましくみる祖父。


そして「お願い!飼わせて!!」と初めて我が儘をいった孫をニコニコ笑顔で承諾するお祖父さんって感じだ。


因みに、飼われる猫の意思は度外視される。


「フフ、隼人がこんな子猫を飼ってたとはね……」


おじさまは、私の人権をどう考えてるのだろうか……


「あの……猫とは私のことですか?」


おずおずという感じに、されど嫌ですという雰囲気は分かる様にいったら、カラカラとおじさまは笑った。


「いや、ものの例えだよ。優人くんが、隼人が野良猫を拾ってきたってよくいうもんだからさ」


「優人?」


誰だろうか、それは。

名前だけみれば優しそうな人に思えるけど…


「水城 優人くんだよ。知らないかい?」


頭の中で、偽物笑顔の優男を思い出した。スマホ渡してきたやつだ。貰ったスマホを4回捨てたら5回渡してきたやつだ。


というか、あの人は私を野良猫って言ってたのか……嫌だな~。


最近、金持ちに捕まえられて自由を失った野良猫になった夢を見るのは何故だろうか?


「じいさん、眼鏡もってきたよ」


赤城さんは、片手に眼鏡をもちながら表れた。

そして、おじさまは赤城さんから眼鏡を受け取って装着した。


うん、格好いいな畜生。


「ふむ、これでよく見える


君は本当に綺麗な女の子だねぇ」


だから、その目を辞めて欲しい。

その慈愛に満ちた目は怖すぎる。慈愛といえば聞こえはいいけど、実際は見下しているのである。


その証拠に、赤城さんに対する目は暖かいけど、私に対する目は冷たくてヒンヤリしている。


「すみませんけど、もう帰ります」


時間も時間だし、門限を破ると母は大泣きして怒るから手がつけられない。


「あぁ、わかったよ。隼人、送ってあげなさい」


「嫌で………あ、いや、お願いします……」


嫌ですと言おうとしたら、おじさまに素敵な笑顔をプレゼントされてしまった。

やっぱりこの爺さん怖い。










「あの、なんで祖父さんに私を紹介したんですか?」


車の中で、私は赤城さんに質問した。

本当はもっと色々と質問したかった。薬を使ったのかとか、どうやってここまで運んできたのかとか……


「じいさんが、茜を連れてこいって煩くてな。本当は嫌だったんだが、拒否したら自力で茜を探してその家を潰すと……」


今、ものすごく身の危険を感じて、警察に駆け込みたい気持ちになったのは仕方がないだろう。


「まぁ、茜のこと結構気に入ってたと思うぜ?


『可愛げは無いが綺麗な子だね、頭も悪くはないし、小学生にしては、まずまずだろう』って誉めてたし」


「それ、褒めてるの?」


可愛げがないって言っちゃってるし、私の顔面って「綺麗な子ね」っ褒められた後、「後で崩れる」「小学生らしくない」って言われんだよな……


「褒めてるよ、あの人は子供だろうと女だろうと平等に厳しい評価を与えるから」


まぁ、平等に厳しい人というのは溢れてしまう威厳や厳格さで何となく分かるが、愛情に関しては不平等な人だと思う。

あの人は理不尽なまでに赤城さんを愛している。


あの人だけじゃない、赤城さんを慕ってる人や愛している人は何人もいる。あんなに綺麗な女性にも好かれている。


それって凄く……


「ここで止めてください」


結論をだす前に私は家からちょっとだけ距離のある場所に止めてくれといった。


車は止まり、私はドアを開けて外にでる。


「本当にここでいいのか?」


「うん」


私は、赤城さんの祖父と会って、若干自覚したことがある。


いや、前々から何となく分かってはいたんだ。赤城さんは色々な人から好かれている。友人やら仲間やら恋人やら……家族にも。


多分、一番心にグサッと来たのは家族の部分だろう。多分、あのじいさんは気がついたのかもしれない。


「赤城さん」


私は後ろを振り返って、赤城さんの方をみる。

赤城さんはニッコリと笑って、優しい雰囲気を出している。


「どうしたんだ?」


うん、やっぱり気づいたわ。私ってさ、赤城さんのことを……












「隼人さん、私は貴方が嫌いです」


酷く羨ましくて妬ましいんだと気がついた。


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