第14話 日本にくるまえ。
ちょっとした過去話です。
「隼人さんが……」
弟のレオンが、喋りにくそうにいった。
「婚約を……破棄するって……」
その言葉が聞こえた時、私は案外冷静だった。
常に日光がサンサンと光り、日本でいうところの夏が一年中あるのが私の国だけど、このときは至極冷静に疑問をかえした。
「何故?」
完璧に発狂すると思っていたらしい、レオンは冷静な私に少しだけ驚きながらも返した。
「日本で……好きな女が、出来たってさ」
好きな女。
そのワードが私の頭の中でグルグルと周るが、やはり私はなんとも思わない。
「意外と冷静だね?」
「当たり前でしょ?そこまで子供でもないのよ」
そうそう、私は本当は隼人なんてどうでもいいし、私の美しさならばどんな男でも寄ってくるから隼人一人ぐらい別にいい。
「でも、ちょっとだけ鬱憤ばらししようかな?」
私は専用の携帯を取り出して耳につけていう。
ッピ
「全兵士に告げるわ!!ムカつくJapanを焼き払いなさ「お前はバカか!?」」
パチコーン!!
言い終わる前に、弟にしばかれた。
痛いわね!!私の美しき髪が傷ついたらどうしてくれんのよ!?
「お前、何しようとしてたんだ?」
弟のレオンは怒り心頭といった様子でサラスタシアをにらむ。まだ12,3の子供に怒られて正座をするのは彼女ぐらいだろう。
「ちょっとだけ日本に上空から爆弾を落として焼こうとしただけよ」
怒られた子供が拗ねている様な感じで彼女はそっぽを向いていう。
「姉さん、日本と戦争でも起こす気?」
「はあ?何でそんな面倒くさいことしなきゃなんないのよ」
何をバカなことを言っているんだ、この愚弟といった目をしている彼女をレオンはまたしばいた。
パチーン
「痛いわね!バカになったらどうするのよ!?」
「お前は既にバカだ!!日本にそんなことをしたら、戦争だぞ!?わかってんのか!?」
そういって、激昂する彼に彼女は半泣きになりながらも反論した。
「当たり前じゃない!この国の民に被害が及ぶようなことなんかしないわよ!!
ちゃんと落とす前にはコメリカか注国かが兵器実験をしているという噂を流して、これはその失敗がどちらかにあっての被害ってことにするわよ。
それか、隕石が落ちてきて、その原因でなったとかにするわよ。
ちゃんとコレでも考えてるのよ?他にも235パターンの計画は作ったんだから」
まるで、小学生の子供が夏の計画を親に話すような、そんな日常的な感じでサラッとヤバイことをいった。
一見頭が悪そうな作戦だけど、姉様の中では完全なる計画が何パターンも出来てるのが経験上わかる。
「姉様がバカなのか頭がいいのか分からない……」
昔っからコレなのだ。
産まれてないから分からないが、この国に産まれた姉様は昔っから頭はよくて、回転も早い人らしい。
ただ……いい事ではあるんだけど、民の人たちに善人が多すぎたのも原因だ。
善人過ぎて、騙そうとした詐欺師がその暖かみに触れたせいで、罪悪感で胸の痛みがヤバイことになって刑務所に自らいって、自分の罪を重くしろと訴えるのが後をたたない。
自動浄化装置のようなものだ。
話を戻そう。
そんな人たちと、溺愛する両親に育てられた姉は、純粋に育ち過ぎたというか、我が儘になったというか……頭が弱いというか……
「うん、バカなんだ」
「?……何か言ったかしら?」
「ううん」
いや、悪い人ではないんだ。
この国を発展させるために、努力を惜しまなかったり、大量にいる民の名前を全部言えたり、顔も覚えてる。
だから、人望もあついし支持率も凄いし、姉様に助けられている人が多いのも分かるし、本来ならば頭もいいのも理解してるけど……
「もしもし、じいや?私のシューズを出しなさい!!え?何って、走って日本に行くのよ!!……仕方ないじゃない!ジェット機壊しちゃったんだから!!」
何故だろうか?
素直に誇りに思えないし、ぶっちゃけ姉だと思いたくない?この感情はなんだろ。
電話の向こうで、じいやが頭を抱えているなのがわかる。
「……ハァー…僕の自家用ジェット借りていいよ」
「本当に!!ありがとう!」
僕の言葉に花が咲いたような満面の笑みでそう言った姉さんは、初代プリキュアの黒い方のポーズをとってウィンクした。
「日本に行って、隼人が惚れたっていう女の子をみつけてやるわ!!」
「騙されないようにね、あと、露出の高い服は逮捕されるぞ」
「へーき、へーき!!騙されないし、簡単に逮捕されないわよ!」
僕のいうことを耳に傾けないまま、姉様はジェット機で日本にいった。
僕は、隼人さんが惚れた女の子が小学生ということや、その小学生に姉が騙されたこと、そして……
露出魔の不審者として通報されたことをまだ知らない。




