第13話 赤城さん登場
「アラ?どうしたの?怯えちゃったかしら?」
うつ向いた私に、肉姉さんは勝ち誇ったように笑っている。因みに私は、机とうつ向かせた頭でスマホを隠しながらメールした。
ポチポチ……
『赤城さん、あなたの許嫁と言ってるひとが私の目の前にいます。どうしたらいいのか分からないので、来てください。これないなら、別にいいです』
と、送信した5秒後にピロリーンときた。
『1分でつく』
早いな。
取り合えずヒヨコの激辛クッキー食べとこう。
「ねぇねぇ、どうしたのよ~?本当に怯えちゃってるの?」
勝ち誇ったように笑う肉姉さん。
「まぁ、それも仕方ないけど、別に怯えなくていいのよ?」
若干優しい声色になる肉姉さん。
「ねぇ、ちょっと聞いてる!?話し返してもいいのよ?あ、好きなものも頼んでいいわよ。あ、可愛いわねそのクッキー」
笑みが薄れ、焦りだした肉姉さん。
「話しかけなさいよ!許可してあげるから!!!そうだ、お小遣いを恵んであげるわ!!」
顔を真っ赤にして、バン!!とテーブルを叩いて命令口調でいう肉姉さんは、財布から何枚か諭吉さんを取り出してヒラヒラしだした。
ドン引きして声が出ねーよ。
「もう!!なんなのよ!無視しないでよ!何か話しなさいよ!この美しい私が喋ってあげてるのに!!
そのクッキー寄越しなさい!!!……キャァァア!!辛い!!!」
私のクッキーをぶんどって、口に含み、キレだし泣き出す肉姉さん。
たった1分かそこらでここまでキレだす人間も珍しな~。というかこの人の体内時計はどうなってるのだろうか?早すぎだろ。どんだけせっかちなんだよ。
涙目になり、下唇をかんでいる彼女は流石に哀れに見えてきた。いや、あのね、別に無視をしてる訳じゃなくてですね……
「茜!大丈夫か!?」
私が心の中で弁明してる途中で、メールが返ってきてからジャスト1分で赤城さんが登場した。
赤城さんは私を持ち上げて、まるで赤ん坊のように抱っこした後、思いっきり肉姉さんを睨み付ける。
「な!?……ななな何で隼人がここに来てるの!?さては貴女!!隼人に通報したのね!?卑怯よ!!卑怯!!」
赤城さんの登場にアタフタしだし、私に向かって指をさしながら、卑怯卑怯と叫んでいた。
「お前は一体なにをやってんだ?その格好で子供といたら通報されるぞ」
もう通報されてました。
というか、赤城さんが来る前に店員さんが肉姉さんからは見えない位置で『警察よぼうか?』という紙を私にみせていた。
その店員さんの私に対する目は本当に優しくて……
肉姉さんに対する目が本気で不審者を見る目だった。
「隼人が婚約破棄とか言い出すからじゃないのよ!」
大粒の涙をながしながら、エグエグと泣き声を殺す声が痛々しい。
「しかも!最近はこの子と一緒にいるみたいじゃない!なんでこんな根暗で無愛想な女と一緒にいるのよ!?目付きも悪いし最悪じゃない!」
オッパイもぎ取って焼き肉にするぞ肉姉さん。
別に私は無愛想じゃないぞ。ちゃんと空気を読んでわらうことだってあるし、根倉じゃくて無口なだけだ。
「茜はこういう根暗で無愛想なとこが可愛いんじゃねーか!!まるで生ゴミが3年間も放置され腐敗しきった目だって可愛いだろ?」
ブルータスお前もか!
めっちゃブルーな気持ちだよ。目が腐ってるって……しかも生ゴミて……もう嫌だよ、離してよ赤城さん、抱っこしないでよ畜生。
「この女のどこがいいのよ!?」
「運命だからだ!!人目みて愛すると決めたんだ。だから俺は愛し抜く!」
物凄く寒気がしたので、逃げようと思ってジタバタしたけど赤城さんがガッシリと抱き締めて離さない。
だからなんなんだよこの執着。こわいよ。ホラーだよ。
「私と結婚すれば、更なる発展が望めるわよ!」
「そんなもん、自分でやる」
あらやだ格好いい。男らしい。
うん、だから離そうか。なんでキツくないのにこんなに動かないんだよ。
なんで私が中心の口論をしてるのに、蚊帳の外になってるんだうか?
まったくもって状況が掴めないままに、私はどうしようかと頭とお腹を痛ませた。




