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第94話 消えた日常。

トボトボと…私は帰り道を歩いていた。


「これで…いいのかな…」


夕暮れの暗い道で、私は心にポッカリと穴が開いたような気がする。


今の、自分の行動がいいとは、私は思わない。

私がやっている事は、ようは問題の先送りであり、逃げているだけである。


本当は、赤城さんに留学して欲しくは無い。


けれど、止めたいと思わない。


違う、どう止めればいいのか、自分の行動が正しいのか…あー…さっぱり分からなくなった。



とまぁ、こんな風に余計な事を考えてたからなのかもしれない。


ずっと、後ろをつけている男達に気づけなかったのは。



「あいつが、如月 茜か…」


ボソッと、後ろからそんな声が聞こえたと同時に、風を切る音がなった。


「…っ…!?」


私は経験則と父が言っていた『まず地面に逃げろ』という言葉を思い出して下へと逃げた。


ガキィイン!!


響く金属音とともに、さっきまで私がいた場所に金属バットが叩きつけられている。


「なんですか…貴方達」


直ぐに体制を立て直して、彼らの方へと目線をあげる。

人数は2、3人位。


齢は10代後半、もしくは20代前半のように見える。


「お前が如月 茜だな?悪いがちょっとついてきてくれねーか?」


「知らない人には付いていくなと、言われ……ますんで!!」


私はポケットに持っている催涙スプレーを彼等に浴びせた。


相手は大人の男性複数、小学生女子が敵う相手ではない。ここは一旦逃げるべき。


「…っくそ!目が…」


「何しやがった…げほ…っごほ!」


響く悲惨な声を耳にしながらも、私はすぐに走る。


交番は近くにないし、ここら辺は空き地だらけだから、近所の人にも助けを呼べない。


「…っはぁ…はあ…!」


子供の体力でどこまで逃げ切れるかは分からないが走りまくった。


「…あ…はぁ…いえ…」


ずっと走っていたことが、功を奏したのか、なんとか住宅地が見えてきた。


早く助けを呼ぼうと、足を動かそうとしたが…


「駄目ですよ、逃げては」


優しい言葉と声が耳元でささやかれ……


それとは程遠い、強い衝撃が私のわき腹に響いた。


バキィイ…


「…っ…ッカハ…!」


骨の軋む音と共に私は横へ吹っ飛んでしまう。


川に石を投げて何回も跳ねさせる、水切り遊びのようにアスファルトに何回も体を打ち付けられながら、転がっていってしまった。


「…あ…うあ…」


体中の酸素を口から吐き出し、うめき声しか出てこない。


骨がギシギシいうし、打撲から立ち上がることも出来ない。喉はヒューヒューいう。


「ごめんね、優しく運ぼうとも思ったんだけど、無理だったみたい」


声が上から響く。

しかし、首が動かないから、姿も確認できないし、更に言えば目の前が真っ赤だから何も見えない。


「…誰…か…」


思わず私は『誰か』に向かって手を伸ばす。


『誰か』なんて『誰か』分からない。けれど『誰か』に助けて欲しい。怖い…怖い。


「誰かなんて…来ないよ」


バカな子供に教える優しい先生のような声色で、ゆっくりと伸ばした私の手の上に足を踏みつけた。


ベキリ……


嫌な音が体から広がって鳴っている。


ヤバイな、指も折れてるかも…というか、私死ぬかも?


「…は…ゃ…」


掠れる音だけを残して…視界が暗転した。



私の日常は壊れたのである。

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