表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/279

ルショスクの悲劇 3

 丸机の周りにメアリーとエメリナとアストールの三人が集まり、真剣な表情のまま話し込む。その横で腕を組んで真剣に話を聞くジュナル。いつになく心配そうな表情を浮かべるレニに、後ろの窓際で腕を組んで目をつぶるコズバーン。

 ルショスクの高級宿の一室に、アストールは従者一同を集めて、謁見の間であった事やルスランと交わした事、何よりも自分達の扱いようなどの事を事細かに話していた。


「本当に信じらんないわ! ここはどうかしてる!」


 アストールが叫ぶ声が、宿の中に響き渡る。


「……ふむ。確かに……。主の言う事が事実となれば、拙僧らも容易な行動はとれませぬな」


 ジュナルが静か納得して答えると、アストールは怒りを露にしていた。


「本当にそうよ! 近衛騎士を門前払いしようとする。それだけじゃない! 捜査にさえ協力させてくれない!」


 怒るアストールにメアリーも同調する。


「アストールの言うとおり! 私たちが女だから、こんな扱いをしたのよ! 全く、女だからってなめないでよね!」


 二人の美少女が怒りを露にする中、今まで黙っていたエメリナまでもが口を開いていた。


「私達でキリケゴールの人攫い事件、解決しよ!」


 意気込む三人を前に、ジュナルは何処となく腑に落ちないところを感じ、眉根をひそめる。


(話を聞く限りでは、どうも、我々をこの街から遠ざけたいように感じるが……。しかし……)


 ジュナルとしてはその理由が、本当の所なんなのかが気になった。


 ただ単にアストールとメアリーの身を気遣っての話であれば、健気なまでの美談だ。だが、それ以外の目的があって、近衛騎士を遠ざけようというのなら、それは裏にはかりごとが隠れているに違いない。


 ジュナルは冷静に現状を分析していく。

 だが、それを判断するには、余りにも情報が少なすぎる。


「ふむ。それも面白そうですな。拙僧も人攫い事件の解決には賛成ですぞ」


 ジュナルが引っ掛かる言い方をしたのを聞いて、アストールは即座に聞き返す。


「人攫い事件“には”、ってどういうこと?」


「今回、この街はかなり危険な状況に陥っております。ヴェヘルモスの件もありますゆえ、ここから退去することも念頭に入れておいた方が得策かと思ったのです」


 妖魔の名を聞いた瞬間に、一同の表情が引きつっていた。

 妖魔の中でも頂点に立つとも言われる化物だ。

 石をも溶かす炎を吐き、知性は人を上回るという。そして、上位のドラゴンにさえ打ち勝ってしまうという力を持つ。と噂される化け物である。

 その名を聞いて、表情を引きつらせないものはいないだろう。

 だが、そんな中、コズバーンだけは不敵な笑みを浮かべていた。


「ふふ、ヴェヘルモスか……。相手にとって不足はないな……」


 と、独り言をつぶやく始末だ。


「あのさ、コズ。私達の任務はキリケゴール族の人攫いを暴くことよ?」


 念を押して自分達の任務内容を伝えると、コズバーンは不服そうに腕を組んで目を瞑っていた。


「……主よ。我もそのくらいは分かっている」


 それ以降コズバーンは沈黙していた。よほどヴェヘルモスと戦いたかったらしく、明らかに不機嫌そうな表情をしていた。

 いくらコズバーンとは言え、ヴェヘルモスの炎を前にしては流石に耐えることはできないだろう。ここでコズバーンを失うと、今後の活動に支障が出かねない。彼は従者の中でも、最も力で頼りにしている男なのだ。


 アストールはコズバーンが最恐の妖魔と戦うことを諦めたことに、安堵していた。


「いくらコズでもヴェヘルモスなんて倒せるわけないし、いざとなれば諦めることも視野にいれないとな……」


 上級妖魔の中でも特に手ごわい相手のヴェヘルモス。その強靭な肉体は体当たりで城壁をも破り、吐く炎は人を瞬時に炭にする。外皮は鉄の鎧の様に硬くどんな剣も弾き返し、何よりも高度な魔法を使い、人間並みの知能をもって行動する。


 これほどまでに恐ろしい妖魔は他にはいないだろう。

 弱気になったアストールに、意味深にジュナルは呟くように言っていた。


「『さわらぬ神に祟りなし』と、言いますからな」


 ジュナルとしては、今回の人攫い事件には、裏に何かがあるような気がして、どうにも腑に落ちない。


 人攫いの事件に重なるようにして発生したヴェヘルモスの事件。

 それに加えて、食人妖魔も出没しているという。明らかに一地方領主だけで解決できる範囲を超えていた。そんな状況を知ってか知らずか、王都の首脳部はアストールに調査と解決を命じていたのだ。


「あくまで私たちが解決しないといけないのは、人攫いの事件だけだし……」


 アストールは苦笑しつつ言うと、窓の外を見る。


 既に日が落ち始め、かつては三万人以上の規模を誇った街の名残の魔法灯が、目抜き通りに一直線に並んで、綺麗に街を照らし出していた。


「それに、来たばっかりだ。時間はまだある。だから、できることから始めよう!」


 アストールの言葉に対して、従者一同はそれぞれの反応を示していた。

 レニは怯えた表情を見せつつも、「ぼ、僕も頑張ってできることをします!」と懸命に恐怖を押し隠して頷いてみせる。


 メアリーは「あいつら、絶対に見返してやろう!」と自信たっぷりに笑顔を浮かべて、アストールに同意する。


 エメリナは早速と「じゃあ、私、情報収集するね!」と一早く手を上げる。


 ジュナルは笑みを浮かべて「力になりましょう。拙僧の選んだ主の判断に間違いはない」と太鼓判を押す。


 コズバーンは沈黙を破って「力が必要な時は呼ぶがいい」と一言だけ付け加えていた。


 一同の気持ちが固まったことを前に、アストールは満面の笑みを浮かべていた。


「私の従者はこの国で最も優れた従者だ! みんなの力があれば、解決できないことはない!」


 従者を信頼したアストールの一言に、全員が改めて頷いて見せていた。


 ガリアールでの活躍によって、全員がそれぞれの分野で経験を伸ばし、着実に実力は上がっている。


 ここで人攫いの事件を解決することは、けして難しい話ではない。

 そう信じてやまないアストールは、この先に待ち受ける大きな壁の存在を、知る由もなかった。





 静まり返った街の朝は遅い。

 日が昇るのが他と比べて時間帯的に遅れるのもある。だが、それ以上に人攫いと妖魔騒ぎによって、ルショスクの街は閑散としていた。


 そんな活気のない街中で最も大きな通りを、四人の男女が歩いていた。

 一見して探検者の様な風体だ。神官戦士の少女……ではなく少年レニと、線は細いがそれなりに肉付いている中年魔術師ジュナル。弓を背にした女性こと狩人のメアリー。そして、近衛騎士の恰好をせずに、アストールは動きやすいレギンスにフリルのついたシャツを身に着けていた。


 心臓を守る胸当てに、腰ベルトには多数のポーチが従いている。

 腰には今や愛剣となったバスタードソードをつけ、高貴な戦士の様な恰好をしている。


「これなら、探検者として疑われることないでしょ?」


 アストールが一向に聞き返すと、メアリーが不服そうに答えていた。


「そうねー。でも、その恰好じゃ、やっぱりラフすぎ。もっと女の子っぽい服がいいと思ったのに……」


 不服そうにするメアリーに、珍しくジュナルが苦言を呈していた。


「メアリーよ。今回に限ってはエスティナの言うとおり、あまり目立ちすぎるとよくない。だから、極力目立たない方がよい。只でさえ女性の探検者は目立つのであるからにして……」


「あーもー、わかってるって……」


 朝から三人の気分は優れなかった。

 それは昨日の出来事だった。

 一行は前日に打ち合わせて決めた通り、探検者としてこのキリケゴール事件の解決への糸口を探ることにしていた。

 エメリナはいち早くその場からいなくなり、街へ情報を収集しに行っていた。いつもならば、エメリナとメアリーが、満面の笑みを浮かべて服屋へ行こうと言うところだったが、今回は時間も限られている。

 それ故に、エメリナは少しでも早く有益な情報を手に入れるために、街へと駆け出していたのだ。

 問題は……。


(この服なんだよな……)


 今の近衛騎士の格好では、街や村で行動するのには幾分不自由な事が出てくるだろう。ましてや、地方騎士隊のルスラン達に目を付けられているのだ。できるだけ、目立った行動は取らないようにしなければならない。

 

(だからこそ、今回は自分で決める!)


 アストールは自分の服は自分で決めると決意していた。

 のだが……。


「アストール? この後、どうせ服買いに行くんでしょ? なら、私もついて行ってあげる!」


 一人こっそりと部屋を出ようとした矢先だった。その気配を敏感に察知したメアリーに、アストールは呼び止められていた。

 がっくしと肩を落としたアストールは、ゆっくりと顔をメアリーへと向ける。彼女は嫌とは言わせない雰囲気を出していて、とてもではないが、アストールも断りきれなかった。


 今やお決まりとなった洋服選び。

 

 アストールは再び着せ替え人形になるのかと、大きく落胆のため息をつこうとした。その時だった。


「今回の洋服選び、探検者に見える服装を見繕うのであるから、拙僧もそれに加わろうではないか」


 メアリーの後ろから後光のさしかかった魔術師が、アストールに助け舟を出していた。


「それなら、ジュナルも一緒に行こう! それでアストールに合う服を選ぼ?!」


 メアリーもその言葉を聞いて、笑みを浮かべて承諾する。


「ふむ。拙僧も近頃の女子おなごの服装を知っておかなければ、主人に助言もできませぬからな。ここはメアリーにきいて参考にさせてもらうとしようではないか」


 その二人のやりとりを見た瞬間に、アストールにはジュナルさえも、後光の差した救世主が、地獄の使者に映り変わってしまった。


 珍しくジュナルが服を選びに行くと言った事に、メアリーは胸躍らせながら足取り軽く、街道を歩いていく。一方のアストールの足取りは、また自分に待ち受ける悲運を思ってか重い。


 かくして、三人はルショスクの商店街にある洋服店の前へときていた。ウキウキ気分のメアリーは、軽やかに服屋に入っていく。アストールはジュナルに連れられて、渋々続いていた。だが、今回は服を選ぶ事情が違っていた。


 ルショスクの守備隊長に怪しまれないようにするためにも、今回は探検者と偽ってキリケゴール族の情報を集めようというのだ。


 これまでは服を選ぶ基準は、常に女性らしさを際立たせるものばかりだ。

 祝賀パーティーでは粗相がないような女性用の正装。ガリアールでは近衛騎士と怪しまれないための私服。エンツォの食事会では男性に失礼のないようなドレス。


 今回もウキウキと着せ替えを楽しもうとするメアリーを尻目に、ジュナルはメアリーとやり取りしたことを前言撤回するかの如く、そそくさと服を物色し始めていた。

 探検者たるもの、女性らしさよりも動きやすさや引っかき傷から肌を守る長袖等、実用性を重視しなければならない。

 その事に気づいたアストールは、すぐにジュナルの横に来ていた。


「ジュ、ジュナル? もしかして、今回は俺の境遇を見かねて助け舟を?」


 小声でジュナルに問いかけると、彼はふっと鼻で笑う。


「いえ、メアリー殿に任せると、また無駄に注目を浴びかねない服を選ぶやもしれませぬからな。ただでさえ、その美貌で目立っているのに、これ以上目立たれては困りますからな」


 そう言ってジュナルは地味目な服を選ぼうとしていた。

 アストールには頼もしく信頼できる従者。だからこそ、彼女かれはジュナルに期待を込めてキラキラとした眼差しで、選び出された服に目を落とす。

 そこでアストールは絶句する。自分でも女の服に関してはセンスがないとは思っているアストールだ。だが、そんな彼女かれでさえ、流石にその服はないだろうというセンスの物ばかりを手にとっていく。


 黄色に近いベージュ色を基調としたサイズの大きなチョッキのようなものや、ダボダボの股の丈が低い赤と黒の縦縞ズボン。どこから取ってきたのか判らないような真っ青なシャツなど、アストールから見ても酷いものを選定する。


 そのセンスの無さには、流石のアストールも焦って彼を引き止める。


「ま、待てジュナル! その服装じゃ、逆に目立つ! まるで道化じゃないか」


 慌てるアストールを尻目に、ジュナルは眉根を潜めて、上下を合わせて確認していく。そして、しばらく黙って考え込む。


(よく見て、考え直してみろ! これでとんがり帽子なんて選んだら……)


 とアストールが思っていた矢先の出来事だ。

 ジュナルは徐に近くにあった先の尖った緑色の帽子を手に取る。そして、机の上に上下を合わせて並べている頭部が来る場所に、帽子を添えていた。

 

 ジュナルは顎に手をやると「ふむ」と一人納得の声をあげる。


「拙僧の見立て、悪くはないと思うが?」


「……ジュナル、やっぱりメアリーも呼んで、三人で選ぼうぜ……」


 あくまでも自分の見立ては悪くないと言い張るが、明らかに服装の上下のバランスがあっていない。そして、何よりも、ジュナルのセンスは人よりも遥か斜め上方向に、飛び抜けていると言うことが分かった。


 アストールは言葉を失いつつも、メアリーを呼んでいた。


「あ、見てみて! これなんか可愛くない? とってもキュートな探検者、的なのもいいじゃない?」


 メアリーを呼びつけた時には、既に彼女の腕には収まりきらない程の服が、どっさりと抱えられていた。その服装も様々で、可愛らしいものが目立っていた。


 メアリーは自分が全くもっておしゃれをしない代わりに、アストールが女性になってからは、常に彼女かれの服をコーディネートしてきていた。格好良い服から可愛らしい服まで、その全てにおいて、彼女の仕立ては完璧なものがあった。


 ジュナルとは天と地の差だ。


 だが、二人とも完全に目的を見失っていた。否、見失っているわけではなく、違う方向性に進んでいた。アストールはメアリーに呆れながらも、諭すように言う。


「あのなぁー。メアリー……。今回は目立っちゃいけないんだぞ?」


「えー、でも地味なのはアストールに似合わないよ?」


「そうじゃねえーっての!」


 即座にツッコミを入れるアストールに、メアリーは明らかに不満そうに顔をしかめる。

 不服そうにするメアリーと自信を持って服を勧めるジュナルに、アストールは大きく落胆の溜息をついていた。


「二人とも、もっとちゃんと考えてくれ! 今の俺は探検者だ。目立っちゃいけないんだ」


 大きな声を上げそうになるのを我慢しつつ、アストールは二人を宥めるように言っていた。


「この際だから言うけど、俺だって自分で服くらい選べる! それに買う金は俺が出すんだぞ?」


 そう言って珍しくアストールは二人に対して強気に出ていた。

 ジュナルは小さく溜息をつくと「これがいいと思ったのだが……。だめであったか」と残念そうに小言を呟いていた。対するメアリーはすぐに抱えた服を、渋々、元あった位置へと戻していく。


 その様子を見たアストールは、安堵の溜息を吐いていた。


「さ~てと、選ぶとしよっか」


 自然とあがる鼻歌に湧き上がる躍動感、勝手に手が服の陳列棚に伸びだしていた。次々と服をめくってはどれが自分に合いそうなのかを見定めていく。それがアストールには、楽しくてたまらなかった。


(やったあ。ようやく、自分で服が選べるんだ~)


 胸の奥につっかえていた何かがなくなり、アストールは意気揚々と服を選んでいた。その時だ。

 彼女かれが一着のシャツを手にとった時、その場で動きを止めていた。アストールはふと、自分の今の姿を冷静になって見返していた。


(ん? ちょっと待て! 俺は男だぞ! いや、まあ、女の体ではあるが……。って、なんで、自分で女物の服を選ぶのがこんなに楽しくなってんだよおお!!)


 今の今まで感じたことのない言い知れぬ安堵感と、なぜか湧き上がる嬉しさ。自分で選べることへの幸福感。それが知らずの内に胸の奥から湧いてきていた。


 それに気づいたアストールは、暫し、手を服に伸ばしたまま膠着していた。


「あ、あれ? アストールどうしたの?」


 後ろから手ぶらになったメアリーが声をかける。そこでアストールは顔を真っ赤にして、メアリーに向き直ると、悔しそうな表情をして言っていた。


「べ、別に自分で服を選ぶことが嬉しいとか、そんなんじゃねえんだからな! これは仕事で仕方なく選んでるだけなんだからな!」


 意味が分からずメアリーはきょとんとしていた。だが、アストールの反応を見て、すぐに彼の気持ちがわかったのか、ぷっと吹き出していた。


「アストールはもう、立派な女の子だねえ!!」


 ケラケラと笑い出すメアリーに、アストールはすぐに彼女に背を向けて、ブツブツと呟きながら服を選び出していた。


「これは仕方ないこと……。俺は嬉しくない。嬉しくない。嬉しくなんかない! 嬉しいわけがないんだ……」


 とアストールは小声で呟きながら、血走った目で服を選んでいた。

 そのやり取りを見ていたジュナルは、左手を額にやって小さく溜息をついていた。


 そうして、選んでいた服が今の、可もなく不可もなく、最も探検者らしい服装だった。


 黒いレギンスには金色の細い刺繍の線が伸び、上はフリルのついたシャツを着ている。革ベルトに軽い胸当てをつけ、その上には革製の茶色いチョッキで着こなしている。その様は、正に“高貴な探検者”と呼ぶに相応しい格好だ。


 この服を選ぼうとした時の事を思い出したアストールは、小声で呟いていた。


「……嬉しくない。嬉しくない。嬉しくない。嬉しくない……」


 ある種狂気じみて譫言を呟きながら、街道を歩いていく。その横で心配そうにレニが彼女かれを気遣って声をかけていた。


「あ。あのエスティナ様? 体調が悪いなら、見て差し上げますけど?」


 レニに声をかけられ、はっとなるアストールはすぐに答えていた。


「あ! ああ! 大丈夫、大丈夫! 気にしないで! ちょっとここが病んでるだけだから!」


 アストールはそう言って軽く胸当てを叩く。


「ええ!? そ、それは一大事じゃないですか! 僕が見ます! すぐに服を脱いで見せてください!」


 慌ててレニがアストールの手をとって、彼女かれを道の端に引っ張ろうとする。それにアストールは慌てて答えていた。


「レニ! 体じゃない! 病んでるのは、私の心だ! 気にしないでくれ! 君と同じ病なんだ!」


 レニが呆気にとられ「ふぇ?」と情けない返事をする。

 見かねたメアリーは溜息をついて、レニを後ろから抱え込んでいた。


「今、エスティナさんは寝起きで本調子じゃないの。わかる? 気にしないであげて?」


 優しく言い聞かせるメアリーに、レニは顔を火照らせて小さく返事をする。


「は、はい……」


 レニはメアリーに後ろから抱きつかれるのに、今だに慣れないらしく、顔を真っ赤にして地面に視線を落としていた。


「これでは、先が思いやられますな……」


 ジュナルはそう呟いて、頭を左右に振っていた。

 かくして一行は、新たな情報を得るために、探検者の集まる集会場へと足を進めるのだった。


 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ