和風花伝
「ごめんねえ。狭い部屋で。」
百合奈が泊まることになったのは彼岸の部屋だった。
女の子らしい整理された部屋は百合奈と魅薔薇の部屋とは大違いだ。
清潔感溢れる白いカーテン。木製の勉強机、床には布団が二つ並べられており、普段そこにあるのだろう小さいこたつ机が壁に立て掛けられている。
「いえ。綺麗な部屋ですね。」
百合奈の部屋は魅薔薇と共有なのでいくら百合奈が片付けても魅薔薇がすぐ散らかすので常に汚ない。
「そうかしら。素っ気ない部屋でしょ?」
「汚ないよりましですよ。」
百合奈はため息をついた。
きっと百合奈がいない間に魅薔薇はさらに部屋を散らかしているのだろう。
あの人は散らかすだけ散らかして片付けないのだ。
「百合奈ちゃんも苦労してるのね。」
百合奈の心情を察して彼岸もため息をついた。
彼岸も彼岸で魅薔薇について色々苦労しているらしい。
あの人はかなり自己中でめちゃくちゃな人だから、周りの人間は物凄く苦労しるのだ。
当事者が言ってるんだから間違いない。
「まぁ。寝ましょうか。」
気を取り直した彼岸が言った。
「ええ。」
百合奈と彼岸は布団につく。
散らかっていない部屋はなんとも寝心地かいい。
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
言ったと同時に明かりが消えた。
微かな話声はまだ止んでいない。