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氷点下の青空

*突発的に即興で書いたためか、読み返してみたら、どうしても気に入らない個所があったので、微調整し、一部修正を加えました。やっぱり、即興は、駄目ですね……次回から気をつけます。ご迷惑をおかけしてすみません。

「氷点下の青空」 

                   


++氷点下の青空++


何が空で、何処が地平線で、今足元に広がる砂浜の一体何処からが境界線なのか。

白く霞んだ灰色の雲が、何もかもを かき消している。

冬の海はもの悲しい。

ただ波の音だけが、今の僕には 唯一 確かなもの。


今、ここに立ち尽くす自分さえも、わからない。

僕の目には 全てが霞んでぼやけて 何も映らない。

凍る様な冬の波が、容赦なく僕の両膝を強引にからめ取る。


灰色のうねる波が、僕の心にぽっかりと空いた穴に、

急速になだれ込んでくる。


冷たいはずの海水が やけに 温かく感じられる。

君の温もりに似て、 温かい。


それは、ここに君が眠っているから?


君の心に、今やっと、触れることができたから?


降り出した白い雪が、何もかもを飲み込むように かき消していく。


真っ白だ。まるで、澄み切った氷点下の青空を見上げる様に、

白くて、まぶしくて、目がくらんで 何も見えない。


灰色のうねる波が、僕の体の境界線も奪ってく。


そこは、空も地平線も砂浜も、境界線のない世界。

白くて、まぶしくて、目がくらんで 何も見えない

氷点下の青い世界





++堕落した大人++


「お前、まだそんな青臭いこと言ってんのかよ!もう少し、現実をみろよ。夢だけじゃ、飯はくっていけねぇんだよ。世の中そんなに甘くねぇっつーの」


「お前、変わったな、進藤」


「24にもなって変わらない奴がいるかぁ?そう言うのは、“変わった”って言うんじゃなくて、“成長した”って世間一般では言うんだよ。高階、お前な、ちっとは、オトナになれ」


「昔の進藤はそんなこと口にする人間じゃなかったよね。昔よく、寝ないで朝まで話したじゃないか。俺らは、恥ずかしい大人になんか絶対になんねぇって。

忘れたのかよ?そんな生き方してたら、偽善者同然じゃないかよ。自分に嘘つき続けて、このままずっと生きていくつもりなのかよ?」


「恥ずかしい大人ってなんだよ。そんな恥ずかしい大人になる勇気も、お前にはないくせに。夢を見ていいのは、学生時代だけだって、わかんないのかよ。夢は、叶わないから夢っていうんだよ。叶っちまったら、夢は夢じゃなくなっちぃまうだろ?大人になれば、夢をいつかは現実に変えていかなきゃなんねぇ。でかい夢は非現実的だけど、身近な手っ取り早い簡単な夢は、確実に現実に変えていける。例えそういう、小さい、夢とは到底呼べないようなカケラみたいなものの寄せ集めだって、生きてくためには、現実に変えていかなきゃなんないんだよ。いい加減、目を覚ませよ、高階」


「目を覚まさなきゃなんねぇのはお前のほうだよ、進藤」


「お前みてると、ホント、イライラすんだよ。そろそろお前の将来、ちゃんとまともに考えろよ。綺麗事なんて、通用しねぇって、お前もわかってるだろ、高階? いつまでも俺達、子供のままなんかじゃいられないんだよ。いつか、大人になんなきゃなんねぇんだ。いつか、見切りをつけなきゃなんねぇんだよっ。それが、大人になるってことじゃねぇのかよ!それが、現実を生きるってことじゃねぇのかよっ!」


「それじゃ、生きてる意味がない。生まれてきた意味がない」


「じゃ、お前は、生まれてこなければ よかったんだ。

現実を受け入れられないって、何時まで子供やってんだよ。

弱音吐きやがって。負け犬も同然じゃねえか。

今のお前じゃ、全然 話になんねぇよ。

お前みたいな奴、本当は、生まれてこなきゃよかったんだ」


その時、君は、とても哀しい目を僕に向けた。


酷い言葉を並べる僕。

それでも、まるで僕の中に眠る何かを強く信じて疑いもしないかのように君は言った。


「それでも、僕は、君を誇りにしてる」


それが、高階の姿を見た最期だった。

高階は、冬の海に身を投げた。

彼は、氷点下の青空のような、澄み切った空気に凛と広がる雲ひとつない完璧な青空のように 理想を掲げて、そのために生き、その為に死んだ。

砂浜に、上質な皮の靴がきちんと並べられてあった。だが、遺書らしきものは見つからなかったという。

誰もが高階の突然の死の意味がわからないと言っていた。


だが僕にはわかっていた。

高階がなぜ、死を選んだのか。


あの時 君は、僕に言った。


“それでも僕は、君を誇りにしてる……”と。


そして、それに続く言葉に、僕は何となく気がついていた。

気づいていて、わざと気づかない振りをした。


君の口から語られるはずの、僕に抱き続けてきた 君の想い。


君がもしその言葉を口にしたなら、僕たちの全てが変わってしまう。


だから……。


僕は敢えて君の言葉に耳をふさぎ、君の元から逃げるように立ち去った。


別れの言葉すら交わすことなく……



高階は、絶望したのだ。 

僕に 自分の誇りだけでなく、愛さえも、はぐらかされたと知って……。





++優しい復讐++


あれから何年 時が経ったのだろう。

僕は、あの頃僕らが軽蔑してた 空っぽの大人になっていた。


僕は一体、何を見ていたのだろう?


君の……


何を 見ていたのだろう。


今なら わかる。


君が 何を見ていたのか。


あの時、君を突き放してまで、僕は君の代わりに、一体何を得たのだろう?

一体、何を得た気になっていたのだろう?


君の代わりに 僕が得たもの。

それが、今の堕落した大人である 自分。

ここまで堕ちて、初めて気づくなんて。 冗談にもならない……

だから、せめて笑い飛ばして。

僕がどんなに弱虫な人間だったか。

あの時の君の言葉通り、目を覚まさなければならなかったのは、僕の方だったのに。


この胸がどうしようもなく騒ぐ。

悲しい懐かしさで 君を想うたび …… 


もう二度と取り戻すことのできない 後悔の波が 寄せては引いて繰り返し 僕を捉えて離そうとはしてくれない。


“僕のことを誇りにしている”って つぶやいた君の声に 今、突き動かされて



全てをこの手に取り戻す。



愛おしい懐かしさで 

この胸がどうしようもなく騒ぐ。



――そして今、君に 会いに行く



―完―






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