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またの名を菓子祖

「そうだ!忘れたとはいわせんぞ!」


「あれはここの神様に供えたものだぞ。まさか勝手に食ったのか?」


「勝手もなにも、わしはこの神社の神である」




あっけに取られた。


こいつ、自分を神と言っている?


思った以上にやばいやつに出くわした。




「お前が神なわけないだろ」


「なぜぬしにそんなことがわかる。神を見たことがあるのか?」


「いやないけど」


「わしは新羅王子天日矛しらぎおうじあめのひぼこの孫氏そんしにしてまたの名を菓子祖かしそ。いわゆる田道間守たじまもりである」




なにを言っているのかわからない。




「怖いよ、お前」


「ぬしが作るチョコレートの方が怖いわ。いいか、わしははるか古代より菓子好きの神としてこの世界に君臨してきた。かわいい人の子が供えたものを食し、その甘さを楽しみとして過ごしてきたのだ」


「はあ」


「ここ最近は忘れ去られ、菓子を供える人の子も減る一方。なのに突然、手の込んだチョコレートを毎月供えてくれる人の子が現れたのだ」


「よかったっすね」


「お前のことだ!」


「俺!?」


「お前だ!わしは嬉々としてその菓子を食べた。めげることなく、毎月毎月お前が供えるチョコレートを食べ続けた。


あまいくせに妙にスースーするねっとりしたチョコレートとか」




チョコミントテリーヌのことか?




「味噌を塗りたくったパンにはさまれたチョコレートとか!」




チョコ味噌サンドの話だな。




「わしは耐えた。どれだけ唾棄だきすべき菓子であれども、供えてくれるだけありがたいと。どんな菓子もないよりよいと。わしはその味に苦しみながらも、毎月欠かさず食べ続けた」


「えっ......なんかありがとうございます」


「やかましいわ!それがなんだ、あの体たらくは。お前の菓子はいつもひどい。いつもひどいが、前回のはとりわけひどい!


なにがサバ入りチョコレートじゃ!わしへの、チョコへの、菓子への冒涜である!」




神が仁王立ちになり、腕を組んで怒号をあげた。




「わしはサバがきらいなんじゃ!」




つまりお前の好みじゃねーか!


......と思ったが、あまりの剣幕にさすがに言い返すのはやめた。




「それで気づいた。お前のこれまでの供えものは、すべてわしへのいやがらせだと」


「それは違うけど」


「なにを抜かす!でなければあんな常軌じょうきを逸した菓子など、誰が作ろうと思うものか!?強い恨みでもなければ、甘きチョコレートの衣でサバをくるもうなどと思うはずなし!」


「でも恨む理由なんかないし......」


「おおかた、野見のみに敗して寵愛ちょうあいを損ねた当麻蹴速とうまけんそくの差し金であろう!わしにそのぐらいの検討がつかぬと思ったか!?」


「なんの話だよ。全員誰だよ」


「この期におよんでしらを切るか!そのような態度であるから、わしはお前から味覚を奪ってやったのだ!」

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