馬車道3
サバオを押しやり、木箱の中をあさり始めた。
こいつは、本当にすべてのお供えものをここに溜め込んでいるらしい。
箱の中には棒チョコのような駄菓子から、神社らしい大きな餅まで、あらゆるものが無造作につっこまれている。
白い紙に包まれた、串刺しの見事なタイを取り出しながら、ふと嫌な予感がした。
「お前これ、賞味期限は大丈夫なのか?」
「賞味期限とはなんじゃ?」
「絶対だめなやつだな」
「食べごろという意味か?それなら心配いらん。この部屋にあるお供えものはすべて食べごろを維持できる」
「どういう理屈だ。神の力かなんかか?」
「御食津神みけつかみがやってくれた。蛇ノ神のいやがらせから助けてやった礼らしい」
そんなありがたい神様もいるのか。
俺が出会ったのは、なんでこいつだったのだろう。
奥まであさると、いまでは考えられないほど小ぶりの野菜、天保や寛永と書かれた日本酒、名前のわからない海藻の日干しなどがわんさか出てきた。
それに引きかえ、肝心のお菓子は安い駄菓子がわずかに見つかっただけだ。
こいつ。すぐにわかった。
さてはお菓子だけ選んで食べてやがるな!?
「おい、チョコレートはないのか?」
「チョコレートは、あればすぐに食べるからの。ただ、たまに妙に苦いものを供えられることがあって、それは全部そのへんにある」
指さした木箱をあさると、カカオ多めの苦いチョコレートが大量に出てきた。
「わしはそれがきらいなんじゃ。苦いだけのチョコレートなど菓子ではないわ」
ダークチョコレートは溶けにくく、他の素材を合わせやすいのでパティシエとしては扱いやすい。
でも、そのままだとこいつの口には合わないらしい。甘さが足りないのだろう。
さっき、こいつに食べさせるのにちょうどいいものを見つけていた。作るもののイメージはある。
ただ、ここには火も水もない。道具も昔のものばかり。
サバオほどではないが、これでは簡単なものしか作れない。でも、そういう状況だからこそ燃えるものがあった。




