表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

馬車道2

「ここもわしの社みたいなもんじゃ。そら」




サバオが指さした先には、大人が身をかかがめてようやくくぐれる大きさの穴があった。




「あの穴は、わしの神社に繋がっておる。四半刻ほど登ればつく」


「神社とここが地下トンネルで繋がってるってことか!?誰が作ったんだこんなもん」


「わしじゃ」




当然のようにサバオが言った。先がけずれて、ほとんど柄だけになったスプーンをこちらに投げてよこす。




まさか、こいつ。


スプーンで地下を掘ったのか?




「神というのはけっこうヒマでな。お供えされた大量の匙を使って、神社の床を何百年もコツコツ掘ってみた。もちろんすべて手作業でな」




脱獄犯じゃあるまいし。よく見ると、穴のそばにある木箱には、同じように柄だけになったスプーンが積まれている。




「でもなんで馬車道駅なんだ?」


「あてもなく掘っていたら、ある日、土の向こうから轟音がした。なにかと思ったら、逆側で大きな車が地下をせっせと掘っておった。


ちょうどよく壁に扉までつけておったので、これはオモシロイと思い、ばれぬようにこっそりわしの通路と繋げてみたんじゃ」




要するに、適当に掘っていたら駅の工事現場にぶちあたり、おもしろがって繋げてみたということか。


工事の作業員に見られなくてよかった。横浜の地下をスプーンで掘り進める男という、世にもいらない都市伝説が生まれてしまうところだった。




「それで、なんでここに俺を連れてきたんだ?まさか自分が作った洞窟を見せたいからってわけじゃないよな」




サバオが少し傷ついた顔をする。見せたかったのかよ。




「わしは菓子の神じゃからの。菓子型から木杓子まで、菓子道具も供えられる。ときどき、それを使って菓子をこしらえておるのじゃ」


「えっ!?お前、お菓子作れるのか!?」




俄然、興味が湧いた。何万年も生きる神が作るお菓子なんて、絶対おもしろいじゃないか!パティシエの血がさわぐ。




たとえこの舌がサバの味しか感じられないとしても、なにをどう作るのかは見たい。そもそも、この洞窟にあるそれぞれの道具の使い方も気になっていた。




「俺になんか作ってくれよ!和菓子でも洋菓子でもいいからさ!」


「ここ百年は洋菓子の方がよく作る。そう焦るな。いま作ってやろう」




木箱からサバオが材料を取り出す間、俺はわくわくしてそれを待った。




サバオは道具を一切手に取らず、棒チョコレートの袋をあけた。スーパーで見かける、中にサクサクとしたコーン棒が入った子ども向けの安いものだ。




これをどう料理する気だろう。かたずを飲んで見守る俺の目の前で、サバオは丁重に3本の棒チョコを取り出し、二本を立て、その上に横棒を一本わたした。




......終わり?




「えっ!?終わり?」


「そうじゃ。神が作ったチョコレート鳥居。横棒は一本足らんがの」




サバオが鼻を鳴らしてどや顔をする。本当にこれで終わりらしい。




「お前、何万年と生きてきて、チョコレートの棒を横に載せることしかできないのか!?」


「ひどい言い様じゃの。せっかく作ってやったのに」




サバオが口をとがらせる。こいつの作るの定義はなんなんだ。




無性に腹が立ってきた。お前、舌が狂ってるわけでもないだろ!チョコでもなんでもおいしく食べられるんだろ!




だったらお菓子、もっといいの作れるだろ!?




「もういい、貸せ。俺がやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ