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馬車道

深夜〇時の少し前。俺は横浜の「馬車道」という駅のコンコースに来ていた。目の前には、巨大なレンガ壁がある。




馬車道は、古いレンガの建物と高層ビルが入りまじる街で、そんな街の雰囲気に合わせ、この駅もレンガの壁とモダンなドームが同居している。




いままで気に留めたことがなかったが、一面のレンガの壁はこの駅のランドマークでもあるらしく、壁には様々なオブジェが展示されていた。




なかでも目立つのが、銀行の金庫らしきドアだ。


数センチはあろうかという分厚い鉄の扉には、車のハンドルのような取手がついている。これを回すとドアが開くらしい。




明らかに駅には場違いな代物なのに、通り過ぎる人の誰もこの扉を気にしないのが不思議だった。終電間際というのもあるだろうが、扉も、扉の前でぼんやりと立つ俺のことも、気にかける人はひとりもいない。




サバオはここに呼んで、どうするつもりなのだろうか。


明日は仕事で朝早いのにとぼんやり考えていたとき、不意に背後から大きな音がした。 




ギギギギィ。




金属がこすれる甲高い音だ。しかもばかでかい。


あまりにも不快な音にふりかえると、銀行の扉が、こちら側へ少しずつ開いている。




あぜんとするうちに、ちょうど人ひとりが通れるほどの隙間が開き、そこからサバオがひょいと顔を出した。




「......サバオ!?」


「おお、来ておったか。まあ中へ入れ」


「入れっていうか......その扉って開くのか!?」


「見ての通りじゃ。わしが許可せねば開けられんがの」




てっきり飾りだと思っていた扉が開いた衝撃と、サバオの思いもよらぬ登場に戻ってきた腰が抜けそうだった。




大丈夫なのか、これ。心臓がこれでもかとばかり脈打っている。




俺、ここに入るのか?




必死で平静を装い、取っ手をつかんで扉をくぐる。扉から、濃い鉄のにおいがする。




中は、ひんやりとした洞窟だった。一人暮らしの俺の部屋よりは少し広く、天井は高いドームになっている。


床にはビンや木箱が山と積まれ、壁には木型やざるが吊られている。よく見れば、すべてお菓子を作る道具らしい。




窓もないのに換気はよくて、湿気も低い。正直なところ、空調の効いた駅より快適ですらあった。




「......なんだここ?」




出した声が、壁でわずかにはね返る。




「神宝庫じゃ。供えられた宝をしまう場じゃ」


「なんでここに?神社があるだろ?」

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