第3話 黒鷹亭
酒場「黒鷹亭」は昼でも賑わっていた。
木の扉を開けると、酒と煙の匂いが流れてくる。
セリナは店内を観察する。
商人。
冒険者。
労働者。
そして——
(いる)
妙に静かな男たち。
酒を飲んでいるが、周囲を警戒している。
二人はカウンター席に座った。
店主がエールを置く。
その時。
奥の男たちがちらりとガルドを見る。
一人が呟く。
「……あいつか?」
隣の男が言う。
「黒い剣」
ガルドは気にしていない。
静かに酒を飲む。
セリナが席を立つ。
「ちょっと水取ってくる」
ほんの数歩だった。
だがその間に状況は動いた。
ガルドの前に二人の男が立つ。
「お前だろ」
男が言う。
「用心棒の」
ガルドは無言。
男たちは顔を見合わせた。
「やっぱりそうだ」
「無口って聞いてた」
その時、少し後ろにいた若い男が前に出た。
茶色の跳ねた髪。
革ベスト。
落ち着きのない動き。
だが目は妙に輝いている。
若い男は、ガルドの背中の剣を見て目を丸くした。
「うわ……すげえ剣」
その様子を見て、後ろの男が呆れた声を出す。
「おいロック、じろじろ見るな」
「初対面だろ」
若い男——ロックは慌てて姿勢を正した。
「あ、悪い!」
それでも目はまだ黒剣に向いている。
(やっぱり強そうだ)
ロックは確信していた。
「こっちだ」
軽く腕を引く。
ガルドは抵抗しない。
静かに立ち上がる。
そのまま三人は酒場を出て行った。
数分後。
セリナが戻る。
席を見て止まる。
「……?」
ガルドがいない。
近くの客が言う。
「さっき誰かに連れてかれたぞ」
セリナの心臓が跳ねた。
「どっち?」
客が路地を指した。
セリナはすぐ走り出す。
銀髪が揺れる。
街の影の中へ。




