第2話 北区の噂
ギルドを出ると、午後の光が石畳を照らしていた。
セリナは横を歩く男を見る。
ガルド。
相変わらず無口だ。
「まずは情報ね」
ガルドは短く答える。
「……ああ」
それだけだった。
二人は市場へ向かう。
露店が並び、香辛料と果物の匂いが混ざっている。
セリナは何人かに声をかける。
「最近、若い女性が消えてるって聞いた?」
商人は肩をすくめた。
「噂は聞くな」
別の男が言う。
「北区だ」
「倉庫街のあたり」
セリナはさらに聞く。
老人が小声で言った。
「夜になると妙な連中が出入りしてる」
「黒いローブの奴らだ」
「見ない顔だ」
「近づかない方がいい」
セリナは振り返る。
ガルドは短く言う。
「……倉庫街」
セリナは頷く。
二人は北区へ歩き出した。
その途中。
通りの端で怒鳴り声が上がる。
「盗んだだろ!」
若い男が、小さな獣人の少女の腕を掴んでいた。
少女は必死に首を振る。
通りの人々は見ているだけだ。
その時。
ガルドが一歩前に出た。
男が睨む。
「なんだお前」
ガルドは短く言う。
「……違う」
それだけだった。
男は一瞬戸惑う。
ガルドは少女の袋を見る。
中身はパン。
少女の服は古く、痩せている。
それだけで十分だった。
男は舌打ちする。
「……ちっ」
去っていく。
少女は小さく頭を下げた。
ガルドは何も言わず歩き出す。
セリナは小さく息を吐いた。
「もっと説明すれば早いのに」
ガルドは答える。
「……必要ない」
前方に酒場の看板が見えた。
黒鷹亭。
セリナは言う。
「酒場」
ガルド
「……ああ」
情報は、酒場に集まる。




