第19話 干渉
少女の魔力が、臨界に達する。
空間が軋む。
床が浮き上がる。
ロックは歯を食いしばりながら踏みとどまる。
「くっ……近づけねぇ……!」
完全な暴走。
制御の欠片もない。
ただ、壊すためだけの力。
セリナも動けない。
避けることしかできない。
助けるどころか、視線すら安定しない。
(こんなの……どうすれば……)
絶望が、胸に広がる。
その中で。
ガルドだけが、進んでいた。
一歩。
また一歩。
黒剣を前に。
ただ、防ぐ。
ただ、受ける。
その姿に、わずかな変化が起きる。
少女の魔力が、ほんの僅かに“揺らいだ”。
「……?」
セリナが気づく。
叫びが、変わる。
苦しみだけではない。
何かに“引かれている”。
視線が、ガルドへ向く。
暴走の中心が、移る。
「……ダンナに向いた!?」
ロックが叫ぶ。
その瞬間。
魔力の圧が、集中する。
一点へ。
ガルドへ。
だが――
崩れない。
受け止める。
押し返さない。
ただ、そこに立つ。
その在り方が。
異常だった。
少女の叫びが、次第に変わる。
激しさが、揺らぐ。
苦しみの中に、わずかな“迷い”が混じる。
「……やめて……!」
セリナの声が、ようやく届く。
震えている。
だが、届いた。
少女の動きが、止まる。
ほんの一瞬。
その隙を――
ガルドは逃さない。
手を伸ばす。
届く距離。
その瞬間。
光が、弾けた。
空間の奥から、魔法陣が起動する。
拘束。
強制制御。
無数の光の束が、少女へ伸びる。
「――っ!」
セリナが叫ぶ。
ガルドの手が、あと僅かで触れる。
だが。
その前に。
光が、少女を貫く。
拘束。
固定。
そして――
消失。
空間から、引き剥がされるように。
「……っ」
ガルドの手は、空を掴んだ。
ほんの、指先分。
届かなかった。
静寂が戻る。
何もなかったかのように。
だが。
残された三人の中で。
確実に、何かが変わっていた。




