第1話 黒剣の男とエルフ
初作品です。
王道モノです。
拙い作品ですが、よろしくお願いします。
コメントしていただけると嬉しくて踊ります。
カクヨムとほぼ同時連載です。
城塞都市グラン=ヴァルクは、昼でも影の多い街だった。
石造りの建物が密集し、狭い路地は太陽の光を遮る。
遠くの塔から鐘が鳴るたび、街の空気が微かに震える。
その石畳の通りを、一人のエルフが歩いていた。
銀色の長い髪。
人間よりわずかに長い耳。
静かな緑の瞳。
名はセリナ。
人間の街を歩くこと自体は珍しくない。
だが、好きでもなかった。
人間は騒がしい。
そして軽い。
口では正義を語りながら、弱い者が困っていても見て見ぬふりをする者が多い。
だからセリナは、人間をあまり信用していない。
その時だった。
前方の路地で、小さな子どもが転んだ。
荷物を抱えたまま石畳につまずき、泣きそうな顔をしている。
通りを歩く人間たちはちらりと見るが、誰も足を止めない。
その中で、ただ一人だけ立ち止まった男がいた。
大柄な男だった。
背中には、異様なほど大きな黒い剣。
黒髪。
無表情。
男は何も言わずに子どもの前にしゃがみ、手を差し出す。
子どもを起こす。
それだけだった。
礼を言われる前に、男はもう歩き出している。
(……)
セリナは目を細めた。
さらに少し先。
今度は小さな獣人の子が、荷紐に足を絡ませて困っていた。
男はまた足を止める。
黙ってしゃがみ、手際よく紐をほどく。
それだけ。
やはり何も言わない。
獣人の子が礼を言う前に、男は歩き出していた。
(変な人)
セリナは思う。
その時、風が吹いた。
男の背中の黒剣が揺れる。
その瞬間、セリナはわずかに眉をひそめた。
(……重い)
空気が、重い。
ただの鉄ではない。
まるで剣そのものが、何かの気配を放っているようだった。
だが男は気にしていない。
そのまま大きな建物へ入っていく。
冒険者ギルド。
セリナも少し遅れて扉を押した。
中は騒がしかった。
酒の匂い。
笑い声。
依頼書の前で言い争う冒険者たち。
セリナは掲示板を見る。
最近増えている依頼。
「若い女性の行方不明事件」
北区で何人も消えているらしい。
その依頼書を手に取った時だった。
隣に、さっきの男が立つ。
同じ依頼書を見ていた。
受付嬢が聞く。
「依頼受領ですね。名前をお願いします」
男は短く答えた。
「……ガルド」
それが男の名前だった。
セリナはその名前を覚えた。
同じ依頼。
そしてさっきの行動。
偶然にしては、十分だった。
セリナは一歩近づく。
「私もその依頼、受けるつもり」
ガルドが振り向く。
数秒、沈黙。
やがて小さく頷いた。
それだけで、二人の同行は決まった。




