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第6話 境界の外側

低い振動は、しばらく続いたあと――止まった。


唐突に、というより、

「役目を終えた」という感じで。


僕は、足元に意識を集中させる。


床は、まだ固い。

だが、さっきまで感じていた“噛み込むような圧”が、わずかに弱まっている。


「……緩んでる」


独り言が漏れた。


「うん」


リラが頷く。


「今、解除待ちの時間」


「解除……?」


「止まったでしょ。ちゃんと」


言われて、ようやく気づく。


確かに、僕は一歩も動いていない。

罠が起動してから、ずっと。


床の感触が、少しずつ変わる。


硬さが、抜けていく。

固定されていたブーツが、“置かれている”状態に戻っていく。


「……抜ける」


慎重に、足を引く。


抵抗は、ない。


完全に自由になったわけじゃない。

でも、動いても殺されない――その程度には。


「今なら、戻れる」


リラが言う。


「“内側”に入らなかったことに、できる」


彼女は一歩も動かない。


境界に近づきもしない。


ただ、何もない空間に手を伸ばす。


次の瞬間。


空気が、歪んだ。


森の風景の中に、

薄い帯状の歪みが浮かび上がる。


線じゃない。

幅を持った、境目。


「ここ」


リラが言う。


「境界。さっき、あなたが踏み切った“帯”」


僕は、喉を鳴らした。


「……これを越えれば?」


「外側」


即答だった。


「遺跡の“外側”ね」


リラは淡々と言う。


「安全って意味じゃない。ただ、ここよりは生き残る」


僕は頷き、ゆっくりと後退した。


一歩。


床は沈まない。


もう一歩。


何も起きない。


境界帯を越えた瞬間、

背後で――重い音がした。


振り返ると、

さっきまでの空間が、完全に閉じている。


壁でも、床でもない。

“入れなくなった”という感覚だけが残った。


「……助かった」


思わず、息を吐く。


「だから言ったでしょ」


リラは、ようやく肩の力を抜いた。


「止まれば、殺されない場所だって」


その言葉を聞いて、

僕はふと、あることに気づいた。


さっきから。


当たり前のように、

彼女と会話をしている。


「……なあ、リラ」


「なに?」


「君、俺の言葉……分かってるよな?」


リラは、一瞬だけ目を瞬かせた。


「……え?」


その反応で、確信する。


――やっぱり、おかしい。


この遺跡には、

まだ説明できていない“前提”がある。

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