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第3話 止める声

音は、規則的だった。


一定の間隔で、低く、重く。

心臓の鼓動とは違う。もっと無機質で、もっと正確。


――機械音。


周期が、正確すぎる。

そう思った瞬間、背筋が凍った。


ここは、森の中だ。

だけど、この音は生き物のものじゃない。


足を動かそうとして、気づく。


床が、固まっている。


沈み込んだはずの床が、今は逆に、

ブーツをがっちりと固定していた。


引き抜けない。


「……くそ」


力を入れた瞬間、

奥の闇が、わずかに光った。


線だ。


壁の内側に、細い光が走る。

さっき森で見たものと、同じ色。


――来る。


そう思った、次の瞬間だった。


「動かないで!」


声がした。


若い、はっきりした声。

すぐ後ろから。


「そのまま! 一歩も前に出ないで!」


反射で振り向く。


壁の外。

閉じたはずの隙間の向こうに、人影があった。


フードを被った、小柄な人物。

年は、僕より少し下だろうか。


「床、踏み切ってる。そこ、もう“内側”だよ」


意味が分からない。


だが、その声には、

迷いがなかった。


「今、動いたら――」


彼女が、言い切るより先に。


その言葉を遮るように、

奥の闇で光の線が一斉に走った。


床のすぐ上。

腰の高さ。

そして、首の位置。


――刃か!?


空気を切る音が、遅れて耳に届く。


もし、今、身体を動かしていたら。


想像する暇もなく、

彼女が叫んだ。


「ほら! だから言った!」


光が消える。


沈黙が戻る。


僕は、ようやく息を吐いた。


「……君は?」


問いかけると、

彼女は一瞬だけ、僕を見て。


少し困ったように、笑った。


「遺跡回収屋。……まあ、見習いだけど」


そして、床を見下ろしながら、こう言った。


「次は、ちゃんと止まって。

ここ、動く前に“止まる”場所だから」

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