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第17話 街の外

それから、日を改めて。


朝靄が残る時間に、リラは門へ向かった。

僕も、その隣を歩く。


街の外に出る。

それだけのことなのに、足取りが少し重い。


石の壁は、近くで見るとやはり高かった。

人の背丈を大きく超え、厚みもある。

森との境界に、はっきりと線を引いている。


防壁だ。


街は、ここで終わる。


門を抜けた瞬間、空気が変わった。

湿り気と、土の匂い。

背中に、街の気配が残る。


気配、というのは流体の癖だ。

人がいる場所の空気は、混ざり方が違う。

暖かさが、一定じゃない。


「この辺りまでは、まだ街の延長」


リラが言う。


道は踏み固められ、

見回りの足跡も新しい。


そこから、しばらく歩いた。


太陽が高くなりはじめた頃、

道は道であることをやめた。


踏み跡が薄れ、

木々の間隔が不揃いになる。


振り返ると、防壁はまだ見えた。

だが距離がある。

声は届かない。


「……ここからだな」


「うん」


街の外。


誰も管理しなくなった場所。


風の匂いが変わり、

足元の土が柔らかくなる。


またしばらく進んで、

僕は足を止めた。


視界の奥。

木々の向こうに、直線が見える。


石のような何かが、

自然の配置でもなく、

積み上げでもなく。


一枚の塊のように、

そこに立っている。


塔でもない。

門でもない。


ただの、構造物。


「遺跡」


リラが言う。


近づくにつれ、

周囲の音が変わる。


風は吹いているのに、

葉擦れが、少し遅れる。


“遅れる”というのは、怖い。

原因が見えない遅れは、制御不能の遅れだ。


視界の端で、

空気がわずかに歪む。


流れが、壁で剥離している。

見えないはずの渦が、見えてしまう。


「……見える」


「どの辺」


「前だ。

 あの壁の内側」


入口は、開いていた。

扉はない。


中は、暗い。


一歩、足を踏み入れる。


空気が、重くなる。


呼吸が、少しだけ戻ってくる。

息を吐くと、戻りの感じがある。

閉じた空間。

換気がない。


「合図は?」


「今までと同じ」


頷き合い、進む。


内部は、無機質だった。

装飾はない。

意図だけが残っている。


数歩進んだところで、

足元に何かが見えた。


布切れ。


色あせた作業着。

街で見たものと、同じ縫い方。


さらに奥に、靴がある。

片方だけ。

紐は、結ばれたまま。


「……止まった」


僕が言う。


「でも、戻れなかった」


「うん」


リラの声は低い。


その先で、

床の模様が、薄く光っている。


光は弱い。

なのに、目の奥が引っ張られる。


“見えすぎる”。


それが、一番怖い。


遺跡探索編にむけ全編を編集中です。

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