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失せ物探しの力で人助け! ― 閉ざされた病棟と姉妹の真実④

翌日、進と静と美月は「占いで花の居場所がわかった」と角間香に連絡を入れ、遠瀬病院の閉鎖病棟前で待ち合わせた。

冬の空気は冷たく澄み、病棟の壁は灰色に沈んでいた。

やがて香が姿を現す。白いコートに身を包み、頬は紅潮し、瞳は期待に輝いていた。

「静、素晴らしいお友達ね。花ちゃんを見つけてくれるなんて」

その隣に角間一真もいた。背筋を伸ばしてはいるが、顔には疲れが滲み、瞳は沈んでいる。

香は一真を睨みつけ、声を荒げた。

「これまでよくも騙してくれたわね。ちゃんと案内して、すぐに花ちゃんを出してあげるのよ。そうじゃないと一生許さない」

一真は低く答えた。

「ああ……こっちだ」

一行は閉鎖病棟の最上階へと進んだ。廊下側の壁は上半分がガラス張りになっており、カーテンが閉じられている。

香がガラスに向かって呼びかける。

「花ちゃん……? 花ちゃん、ここにいるの? お母さんよ?」

カーテンが開き、静とよく似た少女がガラスの向こうから笑顔を見せた。

「お母さん……! 会いたかったよ!」

「花ちゃん……私の花ちゃん! お母さんも会いたかったわ!」

香は涙を流しながら必死に語りかける。

「こんなところに閉じ込められて、苦しかったでしょう。大丈夫? 欲しいものはない? 家から何か持ってくる?」

花は首を振り、無邪気に笑った。

「大丈夫! お父さんが私の物は全部持ってきてくれて、好きに暮らしてるよ! 家に置いてあるのは、他の子が自慢してるのをとったやつだけだから、いらないよ!」

部屋の中は病室というより居室のようで、花の私物が一通り揃っていた。

香は強い声を放ち、一真を見る。

「ううん、あなたのような素敵な子は、すぐに外に出るべきよ。さあ、あなた、すぐに花ちゃんを出してあげて」

一真は首を振った。

「それは……できない。花は、危険だ。あの頃から何も変わっていない」

香は怒りを露わにした。

「こんなに可愛い花ちゃんの何が危ないのよ!」

花も首を傾げ、無邪気に同調する。

「そうだよ、お父さん。何が悪いの?」

一真は苦しげに答えた。

「花は、人を何とも思っていない。先日もうっかり招き入れられた看護師が大怪我をした。外に出したら、また人を殺してしまう」

香は微笑み、花も笑顔で言った。

「それの何が悪いの?」

「花ちゃんは、母親の私を思いやって、嫌な態度をとる親戚やその子供を消してくれたのよ」

「うん。お母さんに意地悪する人たちはちゃんと殺したよ。お父さんがもっとお金持ちになるように、お金を持っていた親戚の人たちも子供も殺したよ。お母さんの言うことを聞かない、ダメなお姉ちゃんも殺したよ」

花はそこでようやく静に気づき、目を丸くした。

「あれ! お姉ちゃん生きてたの? ごめん、お母さん……失敗しちゃった」

香は優しく微笑んだ。

「いいのよ、花ちゃん。今では静にも生きている意味があるからね」

静の顔は真っ青になり、涙が頬を伝った。

「お母様……お母様が花に、私を殺すように言ったの?」

香は冷ややかに答える。

「私は、出来の悪い、母親の言うことも聞かない、ダメな子で恥ずかしい。家の恥だと言っただけよ」

静は震える声で問い詰めた。

「お母様が、私の噂を広げているの? 妹を……花を殺したって」

「ええ。花ちゃんが戻ってきた時に備えて、あなたには役割があったからね。人を雇ってあなたを監視させて、おかしなことをしたり言ったりしたら、すぐに噂を流して、親しい友達や恋人ができないようにしてるの。誰からも少し距離のある、高嶺の花でいてもらうために」

静は涙を流しながら問い返す。

「どうしてそんなことをするの……? 役割って何なの?」

「花ちゃんのために道を整える役割よ。後は、花ちゃんに少し似るように整形をして、しばらく学校生活を送ったら、どこか外国にでも行ってちょうだい」

「どういうこと……?」

「外に出た花ちゃんが、あなたの代わりにみんなの憧れの角間静になるのよ。誰も気づかないわ。それで花ちゃんはたくさんお友達を作って、素敵な恋をして、素晴らしい人生を送るの。花ちゃんが戻ってきたらいつでも楽しく暮らせるように、ずっと静に頑張ってもらってたんだから。本当は花ちゃんが戻ったら死んでもらうつもりだったけれど、頑張りに免じて誰の目にも触れない場所で生きることを許してあげる」

静の瞳から涙が溢れ出て、真っ白な廊下にぽつぽつと落ちた。

進は拳を振り上げたが、美月が押さえつけた。

「こんな人たちと同じ土俵で戦っちゃいけない」

「でも……!」

「静のお母さん、私と進氏は静が静でなくなったら、すぐに気付く。地の果てまで探しに行く。静は大切な友達だから。あなたの思い通りにはさせない」

「花ちゃんの方が、ずっといいお友達になるのよ。あなたの嫌いな人は消してくれるし、欲しいものは気付いたら手に入るようになるわ。静じゃなくて花ちゃんが表に出た方が、みんな幸せになるのよ」

「私は花やあなたのような子供じゃない。嫌いな人には自分で対処するし、欲しいものは自分で手に入れる。それに、私の欲しいものの一つは、いい匂いがして美人で優しい、静という友達。花はただの狂人だから私には必要ない」

「誤解してるわ。静は花ちゃんがいたからこそ、そうやってあなたが憧れる人間になれたのよ。花ちゃんがいなければ、ただの愚図な娘なの」

進は一真に向き直り、声を荒げた。

「角間一真さん、あなた……何も言わないんですか? 静さんがここまで言われて、何とも思わないんですか!?」

一真は俯き、低く答えた。

「私は妻に一目惚れして、頭を下げて結婚してもらった身だから、何も言えんのだ。家を守るためとはいえ、花をここに閉じ込めていたと知られてしまい、何でも言うことを聞かないと離婚するとまで言われてしまった」

進は叫んだ。

「この人のどこがそんなに好きなんですか!? 母親としても人間としても、最低じゃないですか!!」

一真は苦しげに答える。

「他人がどう言っても、妻は私の理想の妻だ。可愛くて、少し冷たくて、情熱的で……誰よりも愛しているし、大切に思っているんだよ」

「だから静さんを犠牲にするんですか!? 奥様の望みなら何でもするんですか!? 間違っているなら止めてあげるのが、理想のお嫁さんへの愛でしょう!!」

「私は、妻の笑顔を見るのが大好きなんだよ。だから、できることなら何でもしてあげたい。それだけだよ」

「なるほど。奥様を大切に思っていることはよくわかりました。奥様は花ちゃんが外に出ることを望んでいますが、どうするつもりですか? 花ちゃんは奥様の生活を壊して、下手をすれば母子とも刑務所に入ることになるのでは?」

一真は沈痛な面持ちで頷いた。

「それは……その通りだ。花はまだ外には出せない」

「奥様の平穏な暮らしが一番大切で、その次は奥様の願いを可能な限り叶えてあげたい……それがお父さんの考えなんですね?」

一真は頷く。

「花ちゃんがどんな状態になれば、外に出せますか?」

「主治医の許可がないと外には出せん。人に危害を加えなくなった時……そう信二は言っている」

「なるほど、弟さんが主治医なんですね。確かに、行方不明扱いの人物を、他人には見せられないですよね」

進は香に向き直った。

「お母さん、聞いた通りです。花ちゃんはずっと出られないわけじゃない。お母さんがこの部屋で花ちゃんと一緒に暮らして、人の命の大切さを教えてあげるのはどうでしょう。時折信頼できるお知り合いを面会で招き入れて、一年間花ちゃんが誰にも危害を加えなければ、ここから出してもらうという条件で」

香は眉をひそめ、すぐに反論した。

「そんな……これから一年間も出られないなんて、花ちゃんが可哀想じゃない」

進は落ち着いた声で続ける。

「一年なんてあっという間です。数年ぶりの再会なんですから、母子水入らずの生活を楽しんでください。一年経って外に出る許可が出て、それからしばらくすれば大学入試も終わりますし、静さんが合格するであろう名門大学で、花ちゃんに新しい生活を華々しく始めてもらうのがいいと思います。外に出てすぐに過酷な受験をすることになると、花ちゃんの可愛さが損なわれてしまうかもしれません」

香は一瞬考え込み、やがて打って変わって笑顔になった。

「一理あるわね……わかったわ。あなた、これから一年間ここで花ちゃんと一緒に暮らして、私が母親として命の大切さを教えるわ。静、花ちゃんのために、必ず名門大学に合格しなさい」

母親の言葉に、静はただ泣いていた。

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