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失せ物探しの力で人助け! ― 閉ざされた病棟と姉妹の真実②

二階の廊下は薄暗く、冷たい空気が漂っていた。

足を踏み入れるたびに床板がきしみ、古い屋敷の重苦しさが全身にまとわりつく。

静が扉を開けると、花の部屋はほとんど空っぽだった。

家具は片付けられ、壁には釘の跡だけが残り、生活の痕跡は消されている。

残されているのは机の引き出しに押し込まれた文房具と、小さなキッズイヤリングの片割れだけだった。

静はそのイヤリングを掌に載せ、進に差し出した。

「……これしか残っていないの。叔父様と父が、花の持ち物をほとんど処分してしまったから」

進は深く息を吸い、イヤリングに指先を触れた。瞬間、掌が熱を帯び、視界が揺らぐ。


日差しの入る部屋の中。

両手が後ろ手に縛られ、動くことができない。

「やめて……!」

少女の声が耳に響き、次の瞬間、ざらついた粘着の感触が口と鼻に押し当てられる。

ガムテープが強く貼り付けられ、呼吸の道が塞がれた。

空気が途切れ、胸が焼けるように苦しい。

必死にもがくが、どうにもならない。

喉から漏れる声は、口を塞ぐテープに吸い込まれて消えていく。

視界が暗転し、世界が遠ざかっていく。

「……っ!」

進の喉から掠れた声が漏れ、呼吸が止まった。

膝をつき、必死に胸を押さえる。


「進君!」

静が慌てて肩を支える。

美月も駆け寄り、銀茶の髪が揺れた。

「大丈夫? 顔色が真っ青よ!」

進は苦しげに息を吐き、かすれた声で言った。

「……この部屋で……イヤリングの持ち主は……花ちゃんは、殺された。身動きをできないようにされて、テープで口と鼻を塞がれて、息ができないまま」

静の瞳が大きく見開かれる。

「そんな……家の中で……」

彼女の声は震えていた。長い黒髪が肩に落ち、横顔は蒼白に見える。

美月はイヤリングをじっと見つめ、眉を寄せた。

「他の持ち物は可愛らしいものばかりなのに、これは妙に大人びている。小学生の女の子には不釣り合い。花ちゃんはこういうの使っていた?」

静は戸惑いながら答える。

「花は確かに可愛らしいものが好きだったけど……私も花の持ち物を全部見ていたわけじゃないから」

進はまだ息を整えながら、イヤリングを見つめた。

「花ちゃんの部屋にあったということは、花ちゃんを殺して死体をどこかに運んだ犯人が持ち込んだ……? それが何かの拍子に床に落ちて、亡くなる直前の花ちゃんの思念が宿ったのか?」

美月が静に視線を向ける。

「イヤリングは必ず対になるもう片方があるはずだから、進氏の失せ物探しの力で探してみよう。花ちゃんを殺した犯人が見つかるかもしれない。見つかることが、良い結果になるかはわからないけれど」

家に出入りできる人物は限られている。

犯人が明らかになって、皆がより不幸になることもあるかもしれない。

静は唇を噛み、強く頷いた。

「……わかった。花を殺した犯人が見つかるかもしれないなら」

進が再び掌を広げると、淡い煙が立ち上り、窓の外へと流れていく。

三人はその煙を追い、部屋を後にした。


夕暮れの街道は赤紫の光に染まり、冷たい風が頬を刺していた。

進、美月、静の三人は、煙の導きに従って歩を進める。

細い路地を抜けた先に現れたのは、古びた木造の家だった。瓦屋根は少し欠け、玄関の灯りは弱々しく揺れている。

「……ここは、花の同級生の家だわ。小さい頃、うちに何度か遊びに来ていた……」

静が呟く。

美月は眉を寄せ、銀茶の髪を風に揺らした。

「花ちゃんを殺した犯人の家かもしれない。軽々しく入るべきじゃない」

三人は互いに視線を交わし、緊張に満ちた沈黙が流れる。

「二人はいつでも通報できるように備えていてくれ。俺がこの家の人にイヤリングを見せて、反応を確かめる」

玄関の戸を叩くと、しばらくして戸が開き、現れたのは中年の男性だった。

「何か、御用ですか?」

「突然すみません。このイヤリングに見覚えはありますか? 親戚の家で荷物を整理していたら出てきたもので、ひょっとしたらこちらの家のものかもしれないとお聞きしたもので……」

男性は目を見開き、震える手でイヤリングを受け取った。

「これは……亡くなった娘のものだ。片方を失くしたと思っていたが……」

進、美月、静は息を呑んだ。緊張がさらに高まる。

「娘さんが亡くなったのは……角間花ちゃんと一緒にいた時ですか?」

男性は深く頷き、涙を滲ませながら語った。

「娘が死んだのは、花ちゃんと遊んでいる最中の事故だったと聞いているよ。二人は仲良しでね。花ちゃんのご両親も十分に謝罪してくれたんだ。あれから色々あったけど、お陰様でこうして食べるのには困らずに暮らしていけてる。何年か前に花ちゃんが行方不明になったと聞いたけれど……ご両親は元気かねえ……」

その言葉に、三人は凍りついたように立ち尽くした。

進がサイコメトリーで見た光景は、事故ではなかった。

自由を奪ったうえで、呼吸ができないようにガムテープを貼り付けていた。

男性がお礼を言って戸を閉めた後、静が呆然と呟いた。

「お父様と、お母様が……花の部屋であった殺人を、隠蔽していたということ……?」

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