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失せ物探しの力で人助け! ― 閉ざされた病棟と姉妹の真実①

放課後の喫茶店は、窓から差し込む柔らかな光に包まれていた。カップの縁から立ちのぼる湯気が、ゆるやかに空気を揺らしている。

テーブルに肘をつきながら、進はため息を漏らした。

「サイコメトリーで金を稼ぐって言っても、財宝探しなんて都合よくできるわけないよな」

向かいに座る静は、長い黒髪を指先で整えながら紅茶を見つめていた。涼やかな目元と落ち着いた仕草は、周囲の空気を自然に澄ませるような気品を漂わせている。

「人探しならできるかもしれないけれど……その人が死んでいたら、進君が残留思念を読み取って傷ついてしまうわ」

隣でストローを弄んでいた美月は、銀茶の髪を肩に揺らしながら小さく首を振った。どこか儚げな雰囲気をまとい、現実から半歩離れたような静けさを持つ少女だ。

「財宝も人探しも、結局は危ない橋を渡ることになる」

進はしばらく黙っていたが、ふいに顔を上げた。

「……静さんの家に行きたい」

唐突な言葉に、美月が目を丸くする。

「露骨すぎて引く。静がまた変な男を連れてきた可哀そうなお嬢様と思われちゃう」

「違うのよ、美月。進君は、私の妹の花の持ち物を見てくれるつもりなのよ」

静は花に突き落とされた日のことを、美月に伝えた。


『邪魔な人間は、死ななきゃいけないんだよ。私はいい子だから、みんなが喜ぶように、お姉ちゃんを殺すんだ。さようなら、お姉ちゃん』

そう言って、妹の花は静を川に突き落とした。


「花はあれからずっと行方不明で……あの子を見つけて、あの子の言ったことの意味を知りたいの」

美月は頷いた。

「わかった。ありがとう、話してくれて。そういうことなら、静の家に行こう」

「でも、実は両親に、二人を今後家に入れてはいけないと言われているのよね。前に占い師として叔父様と誠一郎さんの件を解決してもらったけれど、両親は二人を、怪しい詐欺師と思っているようなの」

「それは困ったな。静さんのご両親は、最近困っていることとかないか? それを解決すると言えば家に入れてもらえるんじゃないかな」

静は少し考え、思い出したように口を開いた。

「そういえば、最近母が大切にしていたハンカチを失くしたと言っていたわね。高いお金を払って霊媒師にそのハンカチを見せて、花を探すと言っていたから、見つからない方がいいと父は思っているようだけど」

「よし、今度の能力は、失せ物探しをお願いしてみよう」


先日と同じく、某飲食店の有名デザートを手土産に、三人は夕暮れの神社を訪れた。

三人が祈りを捧げると、社殿の奥から浴衣姿の福の神が現れ、相変わらずの尊大な口調で告げる。

「よくぞ参った。今回もいい供え物じゃな。今週授けるのは……失せ物探しの力じゃ!」

進の掌に冷たい感覚が流れ込み、視界が揺らいだ。やがて、どこからともなく白い煙が立ち上る。

「これが……失せ物探しの力……?」

「うむ。失くした物を頭に思い浮かべ、力を行使するのじゃ。そうすると白い煙が立ち上り、ゆっくりとじゃが、失せ物のある方に流れていく。追っていけば、いつかはたどり着くというものよ」

福の神は続けた。

「一日三回まで、この力は使える。自分の物なら効果は大きいが、他人の物だとうまくいかぬこともある。失せ物がどんなものか、イメージをきちんと共有できなければならぬ。力を行使するお主の考えた物しか探せぬからな」

「ありがとう、神様。これで、静さんの家に入れるかもしれない」

静と美月は頷き、三人は角間家へ向かった。


夕刻の街は、冬の冷たい風に包まれていた。石畳の道を抜けると、角間家の門構えが見えてくる。

重厚な鉄の門と広い庭、古い木造の母屋は、どこか人を寄せ付けない威圧感を放っていた。

玄関で迎えた静の母、角間香かくま かおりは、白い肌に薄化粧を施し、きりりとした目元を持つ女性だった。柔らかな声色ながらも、どこか冷ややかな響きを含んでいる。

隣に立つ父、角間一真かくま かずまは背が高く、がっしりとした体格に落ち着いた雰囲気を漂わせていたが、その眼差しは鋭く、来訪者を値踏みするようだった。

美月は占い師に扮し、黒いワンピースに小さな水晶玉を手にしていた。儚げな雰囲気はそのままに、どこか神秘的な空気をまとっている。

進は緊張を隠すように背筋を伸ばし、静の隣に立った。

「お母様が失くしたハンカチを探すために、占い師の同級生の力を借りたいのよ」

静が説明すると、香は眉をひそめた。

「またこんな妙な子たちを連れてきて……本当に見つかるのかしら」

冷たい反応を示されつつも、進たちは応接間へと通された。

美月が水晶玉の上で手を動かし、それらしい呪文を唱える。

一真は黙って腕を組み、香は固唾を呑んで様子を見守っていた。

進は深呼吸をして、香が用意した失せ物の写真に目を凝らした。

薄紫のハンカチを持つ香と、桃色のハンカチを持つ花が並んで笑っている。ハンカチの刺繍は可憐な花柄で、母子のお揃いとして花の誕生日に贈ったものだという。

美月が水晶玉を掲げ、占い師らしく低い声で告げる。

「見える……失せ物の気配が……」

進が水晶玉の置かれた台を両手で支えるような動きをして、掌から立ち上る煙を水晶玉から立ち上ったように見せかけた。

淡い煙は、居間の中央から窓へと流れていく。

静が窓を開けようとすると、一真が制止した。

「そういえば、あちらに車を止めていたな」

彼は居間を出ていき、しばらくして桃色のハンカチを手に戻ってきた。

「座席の下にあったよ」

香は目を輝かせ、ハンカチを抱きしめた。

「見つかったのね……ありがとう」

だが次の瞬間、静へと冷ややかな視線を向ける。

「この調子で花ちゃんも見つけてくれればいいのに、意地悪な子ね。花ちゃんが戻ると、そんなに都合が悪いのかしら」

静は何も言わずに部屋を出た。

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