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サイコメトリーの力で人助け! ― 美月の予言と炎の疑惑③

冬の午後、部室棟の焼け焦げた匂いがまだ残る校舎に、進と静、そして美月の三人は足を踏み入れた。

窓枠は煤で黒く染まり、床には消火の跡がまだ湿っている。進は深呼吸をして、サイコメトリーの力を試すべく焼け焦げた暖房器具に手を伸ばした。

掌が熱を帯び、視界に一瞬の映像が走る。

――業者の男が、生徒指導の教師に金を渡している場面。

業者の作業着には『上山電機』とはっきりと記されていた。

進は息を荒げて手を離した。

「……上山電機の人間と、うちの学校の生徒指導の教師が見えた。教師に金を渡していたよ」

「葵の言っていた、不良品の暖房器具で火事を起こした会社ね」

「そして今回も、その業者の器具が原因で火事が起きた。しかも稲穂さんが巻き込まれて死にかけた……これは偶然じゃない」

「葵のお父様が過去の火事を反省しているなら、話を聞いてくれるわね、きっと」


三人は病院を訪れ、葵の父親に事実を伝えた。

「そういったわけで、また同じ業者が納入した暖房器具で火事が起きたんです。そして、学校の教師がその不良品の納入に関わっていた可能性があります」

葵の父親は顔を強張らせ、深く頭を垂れた。

「……また同じ過ちを繰り返していたのか。しかも娘が巻き込まれるとは……。私が調べよう。業者との契約や納入経路を洗い直す」

数日後、葵の父親は調査結果を持って学校に現れた。

契約書には新品購入と記されていたが、実際には中古品が納入されていたこと、さらに生徒指導の教師が業者と結託して差額を着服していたことが明らかになった。

消火器具の不足や不良品の混入も、彼らの怠慢と不正によるものだった。

学校は正式に調査結果を発表し、火災の原因は「不良品の中古暖房器具」であり、業者と一部教員の不正が原因だったと認めた。

「白鳥美月が火事を仕組んだ」という噂は完全に否定され、停学や退学の話は取り消された。


その日の朝、体育館には全校生徒が集められ、壇上には進と静、そして美月の三人が並んでいた。

火災の混乱の中で人命を守り、真実を突き止めた功績を称えられ、校長から表彰状が手渡される。拍手が鳴り響き、三人の顔には安堵の気持ちが浮かんでいた。

その時、体育館の扉が乱暴に開かれた。

懲戒解雇となった生徒指導の教師が姿を現し、険しい顔で壇上に歩み寄る。

「おい、白鳥美月!」

教師は指を突きつけ、声を張り上げた。

「お前、他の教師と組んで俺を陥れたんだろう! 復学以来満点続きなんてどう考えてもおかしい! 教師と仲良くやって試験問題を教えてもらっていて、それに気付きそうだった俺が邪魔だったんだろう! 何が狙いだ? 指定校推薦か? 他の生徒のチャンスを奪って楽しいか、卑怯者!!」

体育館にざわめきが広がる。

進たちの学校の定期試験問題は大学入試問題を引用することもあり、まあまあの難易度で、全教科満点続きというのは通常ありえないことを生徒たちも理解していた。

進は壇上で一歩前に出て、教師を真っ直ぐに見据えた。

「やめろ、これ以上美月さんを傷つけるな。美月さんは、並々ならぬ努力をしてきただけだ」

教師が鼻で笑う。

「努力? 証拠はあるのか!」

進は声を張り上げた。

「確かに美月さんには不思議なところがある。未来が見えていたり、ひょっとしたら試験問題が見えることもあるのかもしれない。でも、それで試験を受けるのが嫌だから、美月さんは長期入院している間ずっと勉強していたんだ。朝から晩まで、ずっと! あんたにそんな経験があるか!? 人に疑われることを承知のうえで、変わり者と思われるのも覚悟のうえで、でも胸を張って人を助けられるように、美月さんは自分にできることを全部やってるんだ!!」

教師はなおも食い下がる。

「白鳥が勉強を本当にやっていた証拠なんてない!」

進は拳を握りしめ、さらに言葉を重ねた。

「ある! 美月さんに勉強をみっちり教わった俺は、入学以来ずっと平均以下だった成績が、初めて平均より上になった! というか、だいぶ上がった! 美月さんは全教科の理解度が飛びぬけている! あんたに教わっていた教科は三十点以下しかとったことのなかった俺が、一気に七十点を超えたのが何よりの証拠だ!」

体育館に笑いが広がり、次いで拍手が波のように広がった。

教師は言葉を失い、顔を赤くして体育館を後にした。

壇上で美月は瞳を潤ませ、進に駆け寄って抱き着いた。

「……ありがとう。泣けた」

静はその光景を見つめ、複雑な感情を胸に抱きながらも微笑んだ。


その夜、三人は神社を訪れた。月明かりに照らされる境内で祈りを捧げると、浴衣姿の福の神が現れた。

「よくやった。人を救い、真実を示し、仲間を守った。その勇気と誠意を認めよう」

福の神は進を見つめ、静かに告げた。

「サイコメトリーの力を永久に与える。一日に一回、物に触れることで、その過去の断片を読み取れる。サイコメトリーの欠点は世に知られているものと変わらぬ」

「欠点?」

「強い残留思念だと、危ないって聞く。進氏がうっかり殺人事件の遺物を見てしまうと、体や心に大きな傷を負って、どうにかなると思う」

「そういうことじゃ。気を付けて使うがよい」

福の神は去っていく。

「やっぱり、火事の関係者だったのかな」

「ご老人という姿ではないけれど、今回は進君に甘かった気がするし、そうなのかもしれないわね」

そういえばと、石段を下りながら、美月が学校の噂を口にした。

「公衆の面前で抱き着いたせいで、私と進氏が付き合ってるって噂が流れてる」

「それは大変ね。美月、そんな不名誉な噂を放っておいていいの?」

「いい。おかげで、進氏は静に思いを寄せる男子生徒から恨まれなくなった。前の状態だと、いつ校舎裏に呼び出されて袋叩きにされてもおかしくなかった」

「そんなにぎりぎりの状態だったのか、俺……」

「今のは言い過ぎたかもしれないけど……それだけ、二人は親しく見えてた。だから、今回私とも親しくなってくれてよかった。色んな意味で」

儚く、淡々とした美月の顔に、ふいに花が咲いたような笑みが広がった。

その笑顔に引き寄せられるように、静も柔らかく微笑んだ。

「先週二人とも惚れさせる力が効かなかった時点で、ひょっとしたらとは思っていたけれど、そういうことなのかしら……」

「私も正直わからない」

「どうした? 福の神の気まぐれなら、いつものことじゃないのか?」

「こっちの話よ。さて、帰りにお茶をしながら、三人でサイコメトリーでお金を稼ぐ方法を考えましょうか」

冷たい風に、三人は身を寄せ合いながら、喫茶店に向かった。

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