表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/36

嘘を見抜く力で人助け! ― 遠瀬先輩と家族の秘密①

その日の放課後も、波風進は、コンビニの袋を手に、石段を登っていた。隣には角間静、そして少し後ろに白鳥美月がいる。

「……団子と缶コーヒー、また持ってきたの?」

美月が呆れたように言うと、進は笑って袋を掲げた。

「前回の記憶念写はすごい力だったし、ちょっとは効果あったと思ってさ。神様も、機嫌が良ければいい能力くれるかもって」

「神様に賄賂って、どうなのよ……と思ったけど、お供え物やお賽銭って、つまりそういうことよね。でも、賄賂の効果があるなら、意外と今風のお菓子の方がいいんじゃないかしら」

「どうして? 福の神様は和服だし、贅沢品といったら和菓子じゃないのか?」

「ちょっと気になるのよね。あの福の神様、スマホのこと知ってたし、『五分』って時間の単位も普通に使ってた。もしかして、最近亡くなった人が神様になったんじゃないかしら」

「え、そんなことあるの?」

「神道では、亡くなった人が神格化されることもあるのよ。特に、地域の人に強く思われていたり、何か未練があったりすると」

進は社殿を見上げた。夕陽に照らされた屋根が、金色に輝いている。

「……じゃあ、あの神様も、誰かの記憶に残ってる『誰か』なのかもな」

「そう考えると、ちょっと切ないわね」

進は手を合わせた。静と美月も隣でそっと目を閉じる。

「苦労せずに金を稼いで、理想のお嫁さんといちゃいちゃしたいです。あと、できれば……テストでいい点が取れるように、嘘を見抜く力をください」

美月が首を傾げる。

「嘘を見抜く力? それって、試験に使える?」

進は肩をすくめた。

「うん。選択問題って、書いてあることが嘘か本当かの問題だろ? 少しでもいい点をとって、理想のお嫁さんに好きになってもらえるようにするんだ」

「進君、焦る気持ちはわかるけど、試験でズルをする男は、聡明な女の子にもてないわよ」

「大丈夫、進氏の本音は別にある……気がする」

美月が進を見つめる。進は一瞬だけ黙ったが、すぐに笑って答えた。

「俺の願い事の実現を静さんに手伝ってもらうようになってから、静さんを変な事件に巻き込んでしまっているし、危険な人間が近づいてきた時に、すぐに気付けるといいなと思って」

先日の千絵の件で、静に悪意を向ける人物が、静の身近には存在するようだとわかった。

日頃協力してもらっている静には感謝していたし、何より、静のような人間が裏切られて辛い思いをする姿を見たくないと、進は思っていた。

「うん、理想のお嫁さんを手に入れるために、進氏は静を守る義務がある」

「ありがとう、進君、美月」

静は嬉しそうに笑った。

そのとき、社殿の奥から浴衣姿の少女――福の神が現れた。

「よくぞ参ったな、進。そして静、美月も。今週も能力を授けてやろう」

「今回はどんな能力なんだ?」

「今週授けるのは、嘘を判別する能力じゃ」

進は目を輝かせた。

「やった! 賄賂を用意してよかった!」

福の神が進の掌に指先を触れると、冷たい感覚が脳の奥に流れ込んできた。鋭く冴えわたるような感覚だった。

「言葉を聞けば、それが真か偽か、直感でわかるようになる。ただし、万能ではない。曖昧な言い回しや沈黙には反応せぬ。あくまで言葉に宿る嘘を見抜く力じゃ」

「言葉を聞けば、ということは……紙に書いてある試験問題だと……?」

「効果を発揮せぬ」

「え、そんな、待ってくれ! もう少しサービスを……」

福の神がくるりと背を向け、社殿の奥へと消えていく。

進は手を握りしめ、静と美月と顔を見合わせた。

「嘘を見抜く力、もらえたけど……試験には使えないようだ」

「ま、いいじゃない。さっきも言ったけれど、私のリサーチだと、ズルをする男は聡明な女の子にもてないわよ」

「うん。静に近づく変質者に気付ければ十分」

静と美月は微笑みながら、進の肩を叩いた。

神社を後にしながら、静はふと尋ねた。

「そういえば、今って試験期間よね。進君と美月は勉強は大丈夫? この力を手に入れるためには、試験勉強の時間を捨てて誰かを救わなきゃいけないわけだけれど」

「私は、予知夢で試験問題を見るのが、悪いことをしているようで嫌だったから……胸を張って試験を受けられるように、入院している間に高校の勉強は一通り終わらせた」

「俺は、あまり余裕はないけど……静さんは?」

「私は、試験期間は友達や親戚と勉強会をしていて、今日はその日なのよね。家で親戚のお兄さんに、難しいところを教えてもらう予定なの」

「へえ……じゃあ、俺も混ぜてもらっていい?」

「あなたが? 勉強会に?」

「いや、ほら、今回の能力って、言葉の嘘を見抜けるわけだろ? だったら、うっかり間違ったことを教えてたらすぐにわかるし、効率よく勉強できると思ってさ。それが人を救うこととして福の神に認められたら、一石二鳥だし。もし静さんの身近に変な人がいたら、気付くことができるしさ」

美月が自らの胸をどんと叩いた。

「じゃあ、私も占い師として同行する。進氏が静の家で、ご家族や親戚に向かって突然『お前は嘘をついている』なんて言い出したら、静がやばい男を連れてきた可哀そうなお嬢様になっちゃう。その点私は、同じ学校の生徒やそのご家庭には、予言めいたことをいう変な人として知られてる。進氏が合図をして、私が一流占い師として嘘を指摘する形にしよう」

どこからか小さな水晶玉を取り出して、念じる仕草をする美月に、静はお腹を抱えて笑った。

「どっちにしろ怪しいわよ。でも、ぜひ家に来てちょうだい。試験勉強頑張りましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ