暴走超特急・美佳第7駅幽霊さんに推薦されて冥界支社に就職した結果、ホワイト改革が始まりましたダァシエリイェス!!
※この作品は暴走超特急です。途中下車はできません。あらかじめご了承ください。
【アナウンス】
本日は「深夜シフト最終日駅発・冥界支社経由、求人票駅行き」にご乗車いただき誠にありがとうございます。
途中、現実認識駅、理性検問駅は通過いたします。
ダァシエリイェス!!
コンビニの深夜シフト最終日。
不要レシート箱を空にして帰宅すると、荷造り中の段ボールの底から、一枚の紙がひらりと滑り落ちた。
薄く茶ばんだレシートの裏に、達筆な文字。
――『勤務地:冥界支社/形態:ホワイト』
差出人名はない。けれど、美佳にはなんとなく心当たりがあった。
いつもおにぎりと缶コーヒーを買い、受け取るときだけ小声で「ありがとう」と言っていた、あの常連。
……幽霊だ。
【アナウンス】
次は応募フォーム駅経由・個人情報入力駅です。
確認せず“とりあえず応募”されますと、転職先が冥界となる場合がございます。
ダァシエリイェス!!
「……冥界支社? 形態ホワイト? なんか求人ぽくない?」
首をかしげつつ、美佳はレシートをスマホでスキャンした。
すると画面に“応募はこちら”というボタンが浮かび上がる。
「……とりあえず応募してみるか。ファミレスの次がコンビニで、その次は冥界バイトとか、ネタにはなるでしょ?」
笑いながら“ぽちっ”と押すと、スマホが震えた。
《このたびはご応募ありがとうございます。採用が決定いたしました》
――ピコン。
玄関の向こうでゴォォォォンと鐘のような音が響き、ドアの隙間から黒い箱が滑り込む。
【アナウンス】
ただいまの採用は即時確定運転です。
内定辞退は冥界法により受け付けておりません。
ダァシエリイェス!!
蓋には銀の箔押しでこう記されていた。
冥界支社 制服在中。
中を開けると、黒のワンピース一式。
襟と袖に細い銀糸、タグはなぜか“美佳”名義で、サイズもぴったり。
一枚の紙が添えられている。
《着用の上、出勤してください。通勤口は最寄りの扉より》
「……早っ。Amaz◯nでもこの即納は無理でしょ」
思わず突っ込むと、制服を広げてみる。
「………地味! ……盛るか」
針と糸、黒レース、リボン、パニエ。
可愛くない制服で働くほど、人生は短くない。
「これで完璧☆」
【アナウンス】
次は次元境界線・通勤口駅です。
足元の闇にお気をつけください。
ダァシエリイェス!!
扉の向こう、薄闇が階段のように下へ伸びている。
「じゃ、行ってきます」
闇を抜けると、そこは想像以上に“普通の職場”だった。
黒のゴスロリ制服をひらりと揺らしながら、美佳は廊下を歩く。
ざわ…と視線が走る。
(あれ誰?)(現世枠か…)
そんなヒソヒソ声を、まるで気にしない。
白髪まじりのスーツ姿の男性が、書類を抱えたまま駆け寄ってきた。
「き、君が……今日付で配属された美佳さん、で合ってるかね?」
「はーい、美佳っす!」
男性は制服を見て、言葉を失う。
「その制服は……?」
「支給品、ちょっと手直ししましたー!」
スカートの裾をひらり。
「……原型をとどめていないが、規定は“機能を満たすこと”。
破れていない、透けない、識別パーツは残っている。――よし、ギリギリ合格だ」
「やった。ギリは得意」
「得意分野は別のところで発揮してほしい」
【アナウンス】
ただいまよりオリエンテーションモードに切り替わります。
新人による端末操作は危険ですので、指導者の許可を得てからにしてください。
マニュアルの一枚目には赤字が躍っていた。
——本番申請データと研修データは階層が違います。間違えても慌てない。まず深呼吸。
「なるほど、深呼吸……ふーっ」
【アナウンス】
まもなく操作誤爆駅に到着いたします。
この先、研修サーバーと現世サーバーが交差いたします。
画面の向こうで、見えないキューが並ぶ。転入出魂の稟議、迷子の魂の所在照会、現世出張の派遣票。
ポインタが踊る。ショートカットが決まり、一覧が一枚の地図みたいに見えてくる。
「うん、いける。
これ、押していいやつ?」
端末を好奇心のままにタップした。
「勝手に触っ――」
閃光。
オフィス全体がどよめき、数体の幽霊職員が一斉に浮き上がった。
「ひゃーっ!?」
美佳が叫ぶ間もなく、蛍光灯がバチバチと点滅。
「……ああ、よかった。研修サーバー側ですね……。それ、本番だったら現世ひとつ止まってましたよ」
「ならセーフじゃん♪」
「……それはこっちのセリフだ!!」
午後、リンゴーンと終業の鐘。
職員たちは光に包まれて消えていく。
【アナウンス】
ただいまの鐘は定時成仏ベルです。
ご利用の魂は順次、光の出口からお降りください。
(静寂)
「あれ? みんな消えていっちゃった?」
「ああ、定時になると皆さん成仏なさるのです。なので万年人手不足で」
「そりゃそうだw」
――翌日。
『冥府統括庁 地上連絡管理部 現世出張課』
「げんせい……? 出張って、どこまで行くんです?」
「人間界だ。成仏していない魂の見回り業務だ」
「あ〜、つまりクレーム対応っすね!」
「言い方ァッ!」
【アナウンス】
次は労働基準局前駅、魂労管理線との接続駅です。
“定時成仏の義務化”を訴える方は、こちらで書類をご提出ください。
ダァシエリイェス!!
『冥府労務管理局 臨時監査』
課長代理「労基きたああああああ!」
美佳「ほらぁ、言ったでしょ!」
課長代理「いや、ほんとに来るとは思わないでしょ普通!」
【アナウンス】
ただいま、三途の川線に遅延が発生しております。
原因は“輪廻転生システムの過負荷”によるものです。
お急ぎの魂は、臨時転送ルートをご利用ください。
ダァシエリイェス!! ダァシエリイェス!!
管理官「輪廻転生システムがバグった!?」
教官「地上と冥界の境界線がズレてるぞ!」
管理官「あの子、魂再配属リスト上書きしたぞ!」
美佳「ごめんテンプレ化しただけ!」
システム課「項目を統一したら輪廻が統一されたんだ!」
美佳「だって項目わかりにくいんだもん!」
管理官「現世で言う“Excel暴走”だな……」
――翌日。
美佳の机の上に「契約解除通知」と「退職記念カップ麺」。
書類の下にひっそりと置かれたメモ。
“再雇用は要検討(冥界側では人気あり)”
帰宅後、美佳はため息をつきながら呟いた。
「またバイト探そ……今度は地上限定で」
【アナウンス】
終点、求人票駅です。
本日もご乗車ありがとうございました。
ダァシエリイェス!!
「……求人票、もうちょいちゃんと読もう。」
著者は元・派遣OLでしたが、派遣会社が紹介してくれるのは地上勤務だけでした。
流石に冥界支社の求人は見たことがありません。
……でも、もしあったら応募してみたい気もします。
ダァシエリイェス!!(笑)




