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6②

 「好きだ」

 と言われて、キスが終わっていたことに気がついた。いつの間にか持っていたシャワーヘッドが手から消えていた。でもお湯が流れる音は続いている。どこかに転がっているらしい。

 「僕も」

 「僕もじゃ分かんねえよ。最後まで言えよ!」

 萌さんがいつから僕のことを好きになったか分からないけど、結局僕に対する言葉遣いに変化はないようだ。

 「僕も君が好きです」

 彼女はホッとしたように胸をなで下ろした。

 「両想いでよかった」

 「でもそれを確かめる方法はほかになかったの?」

 「すぐそばでシン君が裸でシャワー浴びてると思ったら襲いたくなっちゃってさ。あたしは我慢することに慣れてないし、自分の気持ちを押し殺すことも子どもの頃から苦手なんだ」

 確かに我慢が得意なら、それはヤンキーではない気がする。彼女のシャワー中じっと我慢していた僕が馬鹿みたいだ。

 シャワーをほとんど浴びる間もなくこうなった。僕の体は冷え切ったままのはずなのに、今は逆にどうしようもなく火照っているように感じた。

 「ベッドにいこうぜ。ちょうど二人とも裸だし、このまま最後までしたいんだけど」

 「ごめん。そろそろ仕事に行かないとまずいから」

 「真面目だな。元カレはしょっちゅう――」

 萌さんはしまったという顔をして押し黙った。

 文脈から判断すれば、しょっちゅうのあとは、

 「学校をサボってあたしとセックスしてたよ」

 とでもなるのだろう。

 「落ち込まなくていいよ。さっき香陵台で元カレの話を僕に聞かせたのはどうせ脈がないなら僕に嫌ってもらおうと思ったんだよね。話はショックだったけど、君を嫌いにはなれなかった。僕と出会う前のことだし、それは今の話も同じかな」

 正確にはショックだっただけではなく、元カレに嫉妬もしたけど、それは悔しいから口には出さなかった。

 「あたしのせいで時間が遅くなったから学校まで車で送るよ」

 と言うから、それはお言葉に甘えさせてもらった。車から降りるとき二度目のキスをした。

 「ところで暴言の件は許してくれたということでいいんだよな?」

 と聞かれたけど、それを今聞くのはちょっと卑怯な気がするんだけどな――


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